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地域;高麗 | 出典;『高麗史』 |
高麗の建国に関する神話。建国者から7代ほどさかのぼり、まだ国の影も形も見えなかった時代から、物語は始まる。
このあたり、日本神話とも構造が似ているが、流れ的にはアイスランドの「家族のサガ」と呼ばれるものの流れと似ている部分もあるように感じる。
世代1) あるとき、虎景(聖骨将軍)という弓の名手が仲間たちと平那山で狩りをして、日が暮れたので洞窟で一夜を明かそうとした。すると、大きな虎が現れて、洞窟の入り口を塞いで出られなくなってしまった。虎は自分たちを食べようとしている。そこで、冠(ぼうし)を投げ、虎のくわえた冠の持ち主が犠牲となって、他の仲間を助けようということになった。
果たして、虎が加えたのは、虎景の冠だった。虎景は虎と戦おうとするが、虎は逃げ出してしまい、洞窟は崩れて、中に残った仲間たちはみな生き埋めになってしまう。ひとり平那郡へ戻った虎景は、このことを報告し、仲間たちを葬ることにした。
山の神を奉ると、雌虎が現れた。この虎は連れ合いをなくした山の主で、虎景を夫としてともに山を治めることを望む、と言って彼を拉致して消えてしまう。(女神様…。)
かくして虎景は山の神として奉られたが、人間であったころの妻が忘れられず、夜な夜な妻の夢の中にあらわれて共寝した。この結果、妻はみごもり、康忠という息子が生まれた。
世代2) この康忠は父親に似て力が強く、成長すると永安村の豪族の娘を娶り、五冠山の魔河岬というところに住んだ。
そこへある日、新羅の監千八元という風水師が、彼のもとを訪れて、こう予言する。「松の木を植え、岩石が隠れるようにして住居を南に移せば、三韓を統一する者が生まれるだろう」。康忠が言うとおりにすると、まもなく、二人の息子が生まれた。兄を伊帝健、弟を宝育と言う。
世代3) 康忠の次男である宝育は、慎み深く心優しい男であった。あるとき、智異山に入って修行していると、夢を見た。それは、松獄に登って南に向かって放尿したところ、それが洪水となり三韓に溢れて、山川が銀色の海になるというものだった。翌日、この話を聞いた康忠の兄は、それは吉兆であろうと言って、自分の娘・徳周を弟に嫁がせた。(近親婚なのに、いいのか?)
宝育は魔河岬に住んでいたが、ここは、天子を迎えるべきところである、と、かつて風水師が予言した地であった。
彼には、のちに二人の美しい娘が生まれた。
世代4) ふたりの娘のうち、妹の辰義は才知にたけ、美人としての評判も高かった。ある日、彼女の姉が、五冠山の山頂でした放尿が大洪水となり、国中に溢れるという夢を見た。驚いて夢から覚めた姉は、辰義にこれを話す。辰義は、これが吉夢であることを知り、自分のスカートと夢を交換することを望んだ。姉はこれを承諾する。
のちに、この地を唐の粛宗という王子が訪れる。二人のうち、本来は姉がこの王子のもとにゆくべきであったのだが、夢とスカートを取り替えたために、偶然が重なって妹が召しだされることとなる。一ヶ月ほどして妹・辰義は子を孕み、王子は、別れ際に「男の子を産んだならこれを与えよ」と、弓矢を残して唐に帰国する。
こうして生まれたのが作建帝。高麗の太祖・王建の祖父である。
世代5) 作建帝は生まれながらに聡明で六芸(礼・楽・射・禦・書・数)に通じ、さらに弓をよく射たので「神弓」と称せられた。16歳になったとき、作建帝は父に会うため船出する。しかし。途中で不思議な霧に包まれてしまい、船を下りざるを得なくなった。
霧が晴れ、船が去ったあとに岩の上に取り残された彼の前に現れたのは、謎の老人。この老人は自ら竜王であると名乗り、「毎日申の時刻(午後四時)になるとやってくる化け狐を退治してはくれまいか」と持ちかける。(竜なのに狐より弱いのか?)
言われたとおり、作建帝は弓を射て狐を退治する。老人はたいそう感謝し、彼に言う、「あなたは東土の王になりたいと望まれるが、そうなるには、必ず子孫から『建』の字のつく者が3人出なければならない。」と。今はまだ時が至らずと知った彼は、竜王の娘を娶り、国に帰ることを決める。このとき、竜王は神通力の源である一頭の豚を土産に与えた。(…豚?!)
さて、娶った竜王の娘は、海をなつかしみ屋敷の近くに井戸を掘らせていた。彼女は夫と約束して、「自分が井戸に入っているときは見ないでください、見てしまったら、あなたのもとへはもう戻りません」と取り決めを交わしていた。しかし、作建帝は興味からこの約束を破り、黄竜となって井戸にもぐる妻の姿を見てしまう。
竜女は怒り、「あなたとはもう暮らせません」と、一方的に離縁して4人の息子を残し竜宮に帰ってしまう。この4人のうち、長男の竜建が、のちに王隆と呼ばれる人物である。
世代6) さて、大志を抱く王隆は、夢の中で一人の美女に会い、この婦人と夫婦になることを約束していた。この後、松獄から永安城へ行く途中、夢の中で会ったのと全く同じ面影の女に会い、これを現実に妻とする。しかし、この女が誰で、どこから来たのか誰も知らなかったため、皆は夢夫人と称した。
王隆と夢夫人のもとで家はますます繁栄し、館は、風水によってもっともよい場所に定められることになった。このとき「家の向きを改めれば、必ず三韓を統一するものが生まれる、家の周りには松を植えよ」との託宣があったので、そのとおりにすると、果たして、翌年には男の子が生まれた。この子が、のちに高麗王朝を建国することになる、太祖・王健である。
…で、7世代の王建で、ようやく王になるわけですが。
ものすごく長いお話です。途中、神様に唐の天子さまに竜王の血までブレンドされて、ものすごい家系になっております^^; 王家は偉大なんですねえ。