アイスランド・サガ −ICELANDIC SAGA

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「フレイル神ゴジ フラヴンケルのサガ」



 「エイリークのサガ」は、新天地を目指して旅立つ冒険者たちと入植の記録だが、こちらは、入植者たちの権力争い…、と、いうより、横暴な首領(ゴジ)の追放と逆襲という、人々の争いの記録のようなものである。そのため、登場人物も少ない。エイリークのサガに比べ、一人一人の性格や表情が見えやすくなっている。
 フレイル神、とは、北欧神話で言うところのフレイ神のことだ。この神を篤くあがめていたことから、フラヴンケルは「フレイル神ゴジ」とあだ名されている。
 サガが記録された時代はすでにキリスト教時代に入っているので、フラヴンケルは異教徒扱いされている。ただし、出てくる情景や人々の振る舞いは、古い神々の時代のように感じる。まだキリスト教はそれほど影響力を持っていなかった時代なのだろう。

 フラヴンケルは、フレイファクシという名馬を持っており、この馬を半分フレイ神に捧げていた。そして、誰もこの馬には乗ってはならぬ、乗った者がいれば必ず殺すという誓いをたてていた。
 この言いつけを、雇われていたソルビョルンの弟、エイナルが破ってしまう。彼は主人フラヴンケルの逃げた羊を捕まえるために使ったのだと、正直にこのことを打ち明けるが、正直者に待っていたのは死の一撃だった。

 フラヴンケルは横暴な首領で、それまでも、人を殺めても何のつぐないもしていなかった。人々は彼に逆らうことを恐れ、追放や財産没収を言い渡せない。しかし、法律に長けたサールムは、ソルケルとソルゲイルの兄弟の力を借りて、これを成功させる。
 時は、何事もなく流れた。
 フラヴンケルは、別の場所で信頼される穏やかな性格の首領になったように見えていたが、実は復讐の機会をうかがっていただけだった。その復讐は、外国から戻ってきたばかりの、サールムの弟、エイヴィンドルに果たされる。
 サールムは再び追放され、老齢になるまで、フラヴンケルに逆らうことは許されなかったという。

 誰が正しいのか、とか、誰が一番悪いことをしたのか、なんてのを抜きにしても、だましだまされあいの権力闘争が見えてあまり明るい話ではない。
 かなり後味が悪いサガ…かもしれない。


<主要登場人物の家系図>

ソルビョルンの長男エイナルが殺害されたことから、フラヴンケルとサールムが民会で争う。追放されたフラヴンケルは復讐を企て、結果として多くの血が流される。ソルケルとソルゲイルの兄弟はサールムに加担する。


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