−スキールニルその2・セバスチャン風「若様」呼称老師系バージョン−
スキールニル | 「若、最近どうなされたのです? 部屋に閉じこもりきりで。義母上スカジ殿が心配されておられる。」 |
フレイ | 「放っておいてくれないか。義母上には、なんでもないと伝えてくれ」 |
スキールニル | 「そういうわけには参りませぬ。何か悩みがおありなのか? 私は、幼き日よりあなたに仕えて来た者です。心配事があるのなら、どうか教えてくだされ。」 |
フレイ | 「……。ギュミルの庭を、美しい娘が歩いているのを見たのだ。その娘の腕は輝き、天もくまなく輝き渡るほどだった。」 |
スキールニル | 「ははあ、なるほど。その娘ごに、思いをかけておいでなのですな?」 |
フレイ | 「私ほど、彼女に焦がれている者はいないだろう。 だが、アース神も、私の統べる妖精たちも、私が巨人と和解することを望まないだろう。 ああ、私はどうすれば!」 |
スキールニル | 「では、私が行ってまいりましょう。その娘に、坊ちゃんの思いを伝えるために。 私に、暗くゆらめく炎を越える馬と、ひとりでに戦う剣をくださいませ。」 |
フレイ | 「すまない、スキールニル。…頼んだぞ」 |
こうしてスキールニルは、フレイのために求愛の死者となって巨人族の国へと馬をすすめた。 フレイの与えた馬と剣は、どちら魔法の力を持つ、特別なものだった。 |
|
ゲルズ | 「何なのかしら、この、地響きの音は。何かが家に向かってやってくる。ギュミルの庭中が、震えているわ」 |
侍女 | 「男がひとり、外に来ています。でも見たことの無い男ですわ。旅人でしょうか…。」 |
ゲルズ | 「客人であることに違いはないのでしょう? それなら、中に入って蜜酒を召し上がってもらいなさい。 ようこそ、旅人よ。あなたは一体、何をしにこんなところまで?」 |
スキールニル | 「お気遣いかたじけない、お美しいゲルズ殿。私の仕える主人より、あなたへの贈り物をお持ちした。 ここにある林檎を差し上げましょう。その代わり、あなたが、主人フレイ様の求愛を受け入れられますよう」 |
ゲルズ | 「フレイですって? いいえ。私は林檎を受け取りはしません。私は、あの方とともに住むことは出来ない」 |
スキールニル | 「お気に召さないと? いやいや、これだけではございませぬ。 オーディンの息子バルドルとともに焼かれたかの腕輪、ドラウプニルもございますぞ」 |
ゲルズ | 「遠慮させていただきますわ。私には、林檎の若さも、ドラウプニルの富も必要ない」 |
スキールニル | 「なぜ、求愛を拒むのです。あのフレイ殿が、あなたにお目をかけていらっしゃるというのに」 |
ゲルズ | 「相手が誰であろうと、私は求愛を受けるつもりは無いわ。」 |
スキールニル | 「ほう、ならば見るがよろしい。私の手にしている剣を。承知なさらぬなら、あなたの首を切り落としても良い。 その剣の前に、あなたのお父上も、命を落とすだろう。 そのあと、魔法の杖であなたを打って、人前に出られぬ姿に変えよう。 頭の三つある巨人を夫とするか、永遠にひとり身で過ごすかだ。 それとも、素直に若の求婚を受けられるか?」 |
ゲルズ | 「そんな…。無体な…。」 |
スキーニル | 「若は、そなたをお望みなのだ。決して悪くはすまい」 |
ゲルズ | 「…分かりました。 よもや、この私が、ヴァン神族のひとりのものになろうとは、思ってもみなかったけれど。 祝福の杯をお受けください。そして、もどって、あなたの主人に伝えて。 ゲルズの娘は、9夜ののちに、バリの森にゆきましょう」 |
スキールニル | 「そのお言葉、お伝えいよう。あなたにも、祝福のあらんことを」 |
こうしてスキーニルニルは使命を追え、フレイのもとに戻った。 フレイは家の前でいまかいまかと待っていて、戻ってきたスキールニルにすぐさま尋ねた。 |
|
フレイ | 「スキールニルよ、守備はどうだった。彼女は、私の求愛を受け入れてくれただろうか」 |
スキールニル | 「首尾よく行きました。ゲルズの娘は若の愛を受け入れ、 9夜ののちにバリの森であなたと会うと申しております。」 |
フレイ | 「そうか…。ありがとう、スキールニル。ああ、その夜が待ち遠しく、なんと遠いことか」 |
End. |
ーーちなみにフレイは、のちのちロキに、このときのことをネタに「妻を買った」と罵られ、
世界の終末の戦いでは、スキールニルに武器をやってしまったせいで素手で戦わなくてはならなくなる。
いろんな意味で代償の高くついた求婚である。
◎このスキールニルの性格ポイント◎
・このスキールニルだと口調がより丁寧で重みが5割増。
・若呼ばわりなので、崇拝の対象でもあり、お目付け役でもあり。
・しかも何やら実力のありそうな老獪ジジィのイメージになる。
・もちろん、「もう戦いたくない」とか言うと「見損ないましたぞ、若…!」などと叱咤激励し立ち上がらせるキーキャラ役v
※「セバスチャン」とは本来、アルプスの少女ハイジに出てくるクララ宅の執事の名前だったが、今や執事の代名詞となっている名前である。執事といえばセバスちゃん。