ニーベルンゲンの歌-Das Nibelungenlied

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「ニーベルンゲンの歌」と関連作品群


このページは、以下の3つの視点から作品群をまとめてみた。
ただし関連する作品はとても多いので、全部を集められたわけではない。(というか、どこまで入れていいのか判断に困るものも…)

■「ニーベルンゲンの歌」と同時代に作られた作品

過去の伝承をもとに、「ニーベルンゲンの歌」をひとまとめのエピソードとして成立させた大本の詩人の名は、知られていない。しかし、その内容の類似や他の作品での言及から、同時代に作られたとされる作品はいくつか知られている。

■後の時代に書かれた異なるバリエーションの「ニーベルンゲン伝説」

16-18世紀に、「印刷」という新しい技術を用いて量産されていた、新しいタイプの物語について。
この時代になってくると、もともとの「ニーベルンゲンの歌」は忘れられ、ジーフリトとクリエムヒルトの単純な「ロマーン」、または竜退治の物語となってしまい、北欧神話が元であった気配も薄れている。

■「ニーベルンゲンの歌」と戯曲の時代

いちど忘れ去られた「ニーベルンゲン」伝説が再発見された19世紀、ドイツ・ロマン主義や愛国心、または政治的な意図などの影響を受けて、さまざまな焼直し作品が生まれた。中でも有名なのはワーグナーの「ニーベルングの指輪」だが、それ以外にも多くの作品がある。


■ 「ニーベルンゲンの歌」と同時代に作られた作品


「エーレク」 「イーヴェイン」 
ハルトマン・フォン・アウエ 創作年代(1180-1185)

アルトゥース・ロマーン。「アーサー王伝説」の一つ。

「パルチヴァール」
ヴォルフラム・フォン・エッシェンバハ 創作年代(1200-1210)

ドイツ版「聖杯探求」物語。アーサー王伝説の一つである。主人公パルチヴァールは英語読みのパーシヴァルに当たる。
「ニーベルンゲンの歌」は、この本の最初の部分を真似しているが、後半に入ると、逆に「パルチヴァール」のほうが「ニーベルンゲンの歌」に言及している。このことから、「ニーベルンゲンの歌」は、「パルチヴァール」の前半と後半が書かれる間の期間に仕上げられたと考えられている。

フランス流布本サイクル
(1215〜35)

特定の作者によるものではないが、フランスで作られた、アーサー王伝説関連の様々な物語群。



■ 後の時代に書かれた異なるバリエーションの「ニーベルンゲン伝説」


韻文「不死身のザイフリート」
創作年代;現存する最古の印刷 1530年ごろ 現存する最新の印刷 1642年ごろ

言語や様式は統一されているものの、全体的に矛盾の多い物語。腕白者の少年ザイフリートが竜を退治して乙女クリエムヒルトを助け出し、結婚するまでの話。しかし、ザイフリートは小人から「君は暗殺され奥方とは8年しか暮らせない、だが君が死んだ後、奥方がその仇を討つだろう」という予言を受ける。(続く結婚後の物語は、ここには入っていないが、やはり暗殺者はハゲネだったのだろうか。)

悲劇「不死身のゾイフリート」
創作者;ハンス・ザックス 創作年代(1557年)

当世風の職業、職匠歌人(マイスタージンガー)と呼ばれた中の一人、ハンス・ザックスによるもの。ハンスの本職は靴屋の親方。副職が劇作家。
「ニーベルンゲンの歌」や先述した「不死身のザイフリート」など多くの作品をもとに、むりやりつなぎ合わせた全7部の膨大な悲劇戯曲を書き上げた。ゾイフリートとディートリヒがヴォルムスのバラ園で決闘し友情が芽生えるところや、ディートリヒの師匠がプリュンヒルトであるところなど、笑える要素が盛り込まれている。
これらマイスタージンガーの手によって、それまで騎士階級の文学だった「ニーベルンゲンの歌」が、民衆に広く浸透していくことになる。

民衆本「不死身のジークフリート」
創作年代;現存する最古の印刷 1726年

内容は韻文「不死身のザイフリート」とほとんど同じだが、名前が現代風に改められ、韻文から散文に書き換えられたことで民衆向けになり、矛盾点が取り去られて分かりやすくなっている。ハーゲンヴァルト(ハーゲン)の性格がかなり変化して、臆病で卑怯な人間にされているのが、もとの「ニーベルンゲンの歌」ファンには辛い。民衆化された伝説は、形だけを名残として残す。



■ 「ニーベルンゲンの歌」と戯曲の時代


『ニーベルンゲン』 フランツ・ルードルフ・ヘルマン

三部作の戯曲。1819年に発表。


『ニーベルンゲンの財宝』 エルンスト・ラウパッハ

1828年に初演。


『北欧の英雄たち』 ド・ラ・モット・フケー
(Friedrich Baron de la Motte=Fouqué: Der Heid des Nordens, 3 Bde. 1810)

「大蛇殺しのジグルド」「ジグルドの復讐」「アスラウガ」からなる三部作の戯曲。1810年にまとめて「北欧の英雄たち」として発表された。中でも、第一部の「大蛇殺し」は、のちにワーグナーの戯曲にも影響を及ぼしている。ちなみにアスラウガっていうのは、シグルドの娘・アスラウグのこと。特にヴォルスンガ・サガをたくみに取り入れ、中心として扱っているようだ。(この人は、他にも、北欧の英雄伝説を元にした「ウンディーネ」を製作していることで知られる)

<自分的ポイント>
ブリュンヒルトの性格が、「ニーベルンゲンの歌」よりも古い伝承、ヴォルスンガ・サガに近い。ジグルドを愛しつつ憎む葛藤や、ジグルド暗殺とともに自分も命を絶つところは北欧女性らしい気性の激しさを持っている。しかも暗殺者はヘグニではなく、グンナルの末弟グットラム。ここでのヘグニは、グンナルの弟であり、ジグルド暗殺を思いとどまるよう進言する役であることに注目。


『ニーベルンゲン』 フリードリヒ・ヘッベル

「不死身のジークフリート」「ジークフリートの死」「クリームヒルトの復讐」から成る三部作の悲劇戯曲。1861年、第一部と第二部がワイマールで初演される。

<自分的ポイント>
しょっぱなからフォルケールが出てくる。しかも歌う!v 出番が多いぞー。わーい。(思いっきり個人的だなソレ)
基本的なあらすじは「ニーベルンゲンの歌」と同じなのだが、ひとつ大きく違うことは、「ニーベルンゲンの歌」では省かれていた基本となる物語、竜退治やブリュンヒルトとジークフリートの出会いなどが、ジークフリート本人の口から過去の回想としてかたられていることだ。それによって、全体的な流れが矛盾なくスムーズになっているとも言える。


『ニーベルングの指輪』 リヒャルト・ワーグナー

「前夜 ラインの黄金」「第一日 ワルキューレ」「第二日 ジークフリート」「第三日 神々の黄昏」からなる、四部作の戯曲。ヘッベルと違い、こちらは、「エッダ」など古い北欧神話を元にしている。そのため、ヴォルスンガ・サガに登場する双子の兄弟がジークフリートの両親となっている。オーディンがヴォータン、フリッグがフリッカなど、神々の名前が独特の書き換えになっている。また、ここにしか登場しないエルダという女神や、ローゲという炎の神もいる。



「ブルンヒルト」「クリームヒルト」 パウル・エルンスト

前者は1911年に初演。プリュンヒルト伝説に視点を絞った戯曲で、ハーゲンにジークフリートを暗殺させたのち、ブルンヒルトが自害するところで終わる。
後者は、そのあとに書き上げられ1924年に初演。ディートリッヒもヒルデブラントも登場せず、リューディガーがハーゲンをとらえ、エッツェル王がクリームヒルトを成敗する。なぜかリューディガーの娘の名前がグートルーン(クリエムヒルトのこと)…。


「ニーベルンゲン族の災い」 マックス・メル

それぞれ1942年と1951年に初演された、二部作の戯曲。話の筋は「ニーベルンゲンの歌」に近いようだが、詳しいことは分からない。

「ニーベルンゲンの歌」 フリッツ・ラング

1924年製作の無声映画。
第一次世界大戦後、愛国主義バリバリ時代のドイツで第二次世界大戦の前までに作られた映画。勇壮なニーベルンゲン伝説は愛国心を煽り、ドイツ民族の誇るべき伝統扱い。ヒトラーもこの映画の前半部分(英雄シグルズの超人的な戦いとか)がお気に入りだったそうです。





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