ニーベルンゲンの歌-Das Nibelungenlied

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オルトウィーン

Ortewin von Metzzen/Ortwin von Mets
(現代読み:オルトヴィン・フォン・メッツ)


【作中の役割】

猛将ハゲネの妹の息子。メッツの領主。かなり血の気の多い人であると語られ、ジーフリトがはじめてブルグントにやってきて暴言を吐いたとき、人々が呆れている中、瞬間沸騰でマジギレする。


【作中での評価】

メッツのオルトウィーンは頻りに剣を、剣をと呼ばわった。まことに彼は、トロネゲのハゲネの妹の子だけのことはあった。(119)
−序盤、ジーフリトの暴言に対しオルトウィーンがマジギレしている場面

「メッツのオルトウィーン殿なども、よくはたらかれました。(あの方の剣のおよぶかぎりの者は、すべて痛手を負って倒れるか、大抵の者はそのままこときれてしまうのです。)」(231)
−デンマルク勢との戦いの様子を、使者がクリエムヒルトに報告する場面


【名台詞】

「あの人の剛勇とて、なんの恐るるところはございません。王様のお許しがあれば、私がぞんぶんにやっつけます。」(869)

ハゲネがジーフリト殺害をグンテル王に進言するシーンで、おじけづくグンテル王に対し自身たっぷりに言うオルトウィーン。この場面はまだ前編なので、ハゲネの妹の子である彼は、年若い。若さゆえの率直な憤りというべきか。


【解説】

実在モデルは不明。主要なキャラクターをハゲネの年代とおくと、彼はハゲネの妹の息子、つまり次の世代の人物にあたる。
前編序盤の、ザクセンとの戦いで既に戦闘に参加していることから、少なくとも戦場に出られる年齢=ギーゼルヘルよりは年上 であったことが予想される。
物語の本筋からは外れているが、ジーフリト暗殺の計画に加担していた人物である。

そもそも彼は、初対面の時からジーフリトがキライである。
宮廷にやってくるや無礼な言葉を口にし、挑戦的な態度をとるジーフリトに、まっすぐに向かっていこうとする。もちろん神話的な力を持つ英雄ジーフリトに、ただの人間であるオルトウィーンが勝てるわけがないのだが、その無謀さ、瞬間沸騰な血の気の多さが、オルトウィーンの素直なところであり、若さである。

オルトウィーンがジーフリトを嫌ったのは、自分に対し挑まれたから、ではない。国と主君の名誉を脅かす存在だったからである。
怒りの理由ももっともなもので、最初はジーフリトから挑戦してきたから、暗殺の相談をする時にはジーフリトが王の名誉に関わる秘密を握っており、人に漏らしてしまう恐れがあったからだ。
そう考えれば、喧嘩っ早いのではなく、「忠義に熱い」のだと解釈できる。ハゲネによく似ている気質だと言える。

彼は、フン族の国へは同行しない。
物語が終わった後も、フーノルトやジンドルトらとともに、国もとで生き残っている。そしてブルグントの国にはまだ、プリュンヒルトと、グンテルの息子がいる。多くの人々が死に絶えたが、すべての血が途切れたわけではない。
家臣たちを失ったディエトリーヒが、失意のもとフン族の国を去った後、彼自身の叙事詩に続きを織り成してゆくように、オルトウィーンたち次の世代の人々にも、続きの物語があったかもしれない。

生き残った者がいてこそ、続きの物語が作られるのだから。




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