ニーベルンゲンの歌-Das Nibelungenlied

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グンテル

Gnther /Gunter
(現代読み:グンター)


【作中の役割】

ウォルムスの国の国王。三人兄弟の長男。ハゲネらの主君。
妹クリエムヒルトに求婚に来たジーフリトを、妹をダシに敵国の攻撃を退けるのに使ったり、自分の求婚の手助けに使ったりと利用しまくる。しかしそこまでは、戦うより味方としたほうがいいというハゲネの計算とも言える。そこから先、夫婦の初夜に関する秘密は、明らかに彼の独断である。
夫婦の危機と、取り返しのつかない不和は、自分の臣下ではない者に重大な秘密を委ねた軽率な行為の代償ともいえるだろう。
裏切られてなお、ジーフリトの弁護をするなど、人が良いことは伺えるが、それ以上ではない。

クライマックスで、妹・クリエムヒルトに捕らえられ、首をはねられる。


【作中での評価】

「一行の中のもう一人は、ほまれ高い人のように見うけます。もしそれだけの権力さえあれば、広大な王国の立派な君主ともなれましょう。或いは王国の支配者かもしれません。他の武士たちと並んでも、ひとしお颯爽としております。」(412)
−プリュンヒルトの従者が、ウォルムスからやって来た4人について報告する場面


【名台詞】

「どうしてだ。あれがエッツェルの妃となっても、わしはあまりあの王に近づいて憎しみなどうけたりしないよう、十分に用心いたすつもりでおる。」(1206)

クリエムヒルトがエッツェル王に嫁ぐと、復讐のための力を蓄えるだろうとハゲネが忠告するのに対して言う言葉。いや…だから、そのセリフを言った4歌章あとでアナタ、「わしらは留まろうとは思わぬ」とか言ってますが…。


【解説】

実在するモデルは、ブルグントの国王グンダハール(グンダハリになっている本も)だとされる。
「ニーベルンゲンの歌」がライン河畔を舞台とするのも故なきことではなく、実際にブルグント族がウォルムスを首都とする国を作り、フン族に追われ、壊走したという歴史がある。その、フン族相手の歴史的大敗の際の王が、グンダハールなのだ。

伝説の中のグンテルは、歴史と同じく「フン族によって全滅の憂き目にあう」ブルグント族の王である。
ハゲネの忠告を受け入れずにフン族の国に出かけてしまったことが、そもそもの間違いだった。彼は妹を信じたのだが、妹のほうは兄妹の情より、過去の和解の誓いより、最初の夫との結婚生活を重んじ、憎しみを抱くハゲネもろとも一族すべてを滅ぼすのである。


「エッダ」のニーベルンゲン伝説では、グンナルと呼ばれ、自ら戦闘に参加する。また、アッティラ(この物語のエッツェルに相当)に捕らえられた後、蛇の牢に閉じ込められるが、竪琴をひいて蛇を眠らせ、その毒牙から逃れたという。北方に伝播した伝説では、フォルケールの持つ楽人の素質も備えた、多彩な主君として描かれていたのだ。

しかし、この物語の中でのグンテルは、頑固者であり、少々、気弱なところを見せる。泣き言を言う場面も少なくない。
序盤の、ザクセンが攻めてくるシーンでは困っているだけ、ジーフリトに名誉を傷つけられ妻との仲が決定的に悪くなった時も穏便にコトを進めようとしているだけ。フン族の国でも、さして何かしたわけではない。クライマックス近くまで戦わず、ハゲネが殺された時には嘆いたヒルデブラントも、その前にグンテルが首を刎ねられた時には何も言わないのだ。
戦っても武勇を謳われる主君ではない。王としては、優柔不断な印象を与えることは、否めないだろう…。




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