■ニーベルンゲンの歌-Das Nibelungenliedt |
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Gernot
【作中の役割】
グンテル王の弟。ジーフリトが宮廷にやってきてケンカを売ったとき、「戦うのは良策ではない、味方につけたほうがいい」といきり立つ一日度を抑えたのは、彼である。
グンテルよりも国政について口出しする場面が多く、実質、国の運営を支えていたのはこの人だったとも考えられる。
戦場においても剛勇の人と記される。
親交のあったリュエデゲールと戦わねばならなくなったとき、ハゲネ、フォルケールやギーゼルヘルが戦うことを拒んだため、ゲールノートが代わりに相対する。リュエデゲールはゲールノートに深手を負わせるが、ゲールノートも、以前リュエデゲールにもらった業物の剣を振りおろし、二人はともに命を落とす。
【作中での評価】
【名台詞】
「われらは他国を制圧して、そのため誰かが武士の手にかかって命を落とすというようなことは、およそ好ましいこととは思っておらぬ。この国は豊かな国。それは当然我々の物で、それがまた国の仕合せなのだ。」(115)
序盤、求婚にやってきたジーフリトが、ブルグントの国もろとも自分のものにする、などと口走った時、敢えて挑戦を受けず、やんわり流した言葉。ゲールノートが先手を打って家臣を止めたため、その場でケンカになることはなかった。王者然とした、分別のある立派な判断と言えよう。
しかし残念ながら、彼は長男ではなかったのだな…。
【解説】
北欧のニーベルンゲン伝説でハゲネが持っていた「王の兄弟・進言役」という立場に取って代わった人物。実在するモデルは不明。
ゲールノートは、ブルグントの国においてNo.2の地位にある人物である。
重臣であるハゲネが目立っているため、表立って活躍することは少ないが、政治的判断が必要となる場面には登場し、要所で兄のフォローに当たっている。ジーフリトが宮廷に現れ、無礼な発言をするシーンでも、ゲールノートがいなければその場で争いとなっていたはずだ。
発言からは戦いを好まない平和主義のようにも受け取れるが、勝てないと分かっている相手と戦わないだけである。
ザクセンとの戦いでは、容赦のない戦いぶりを見せているのだから。
目立たぬところで、理性的に計算して行動する人物、と言えるかもしれない。
ハゲネがグンテル王にジーフリト暗殺を進言した際、次に話に加わったのは「オルトウィーンとゲールノート」だったと書かれている。これがジーフリトに敵意を抱く順番とするならば、ゲールノートもジーフリトを好ましく思わなかった一人ということになる。(ちなみに、その次に話しに加わるギーゼルヘルはジーフリトに好意を抱いているので、「どうしてそんなことをするのか」と強く憤っている。)
彼は政治的な狡猾さもあわせもつ。
ジーフリトの父ジゲムントにお悔やみの言葉を述べるとき、「私は何も知らなかった、何者があの人に敵意を抱いていたか知らなかった」と言うが、以前ジーフリト殺害の話に加わっていたのだから、知らないはずがない。
自分の身を弁護すると共に、身内を庇う発言である。
しかしその狡猾さは、人の道に外れるものではない。
エッツェルの宮廷で窮地に追い込まれ、クリエムヒルトから、「ハゲネ一人を差し出せば命は助ける」と言われたとき、真っ先に「そんなことはできない」と突っぱねるのは、ゲールノートなのだ。(ちなみにそのとき、グンテルのセリフは何も無い)
ただ和平のみを求めるのではなく、戦うべき時には戦わねばならないと、すっぱり割り切っているようにも感じられる。
この物語の中で最もキリスト教的で、徳の高い人物として描かれるリュエデゲールは、ゲールノートとの相打ちで倒れるが、それはブルグント勢でリュエデゲールに相当するキリスト教的な人物が、彼だったからだろう。