マビノギオン-Y MABINOGION

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「マビノギオン」に登場する武器防具


 この物語の中には、様々な魔法の道具、武器、獣が登場する。それらはあまりに異教的なためか、のちのアーサー王伝説では消滅してしまった貴重なものばかりだ。
 「エクスカリバー」でも「石に刺さった剣」でもない、名剣「カレトヴルッフ」を装備したアルスルと、その騎士たちの主な装備品。


*ポイント…この時代、騎士の標準装備は、槍・盾・剣・短剣で、短剣は斬りつけるだけではなく、投げて攻撃しても良いものだったらしい。騎士が短剣による接近戦で戦うシーンは、他の時代の騎士物語には、あまり無いのではないか。

 ※お知らせ※
コンテンツTOPの【注釈】の通り、最新の研究により「島のケルト」が存在しなくなってしまったため、2017年5月末より「ケルト神話」と表現していた部分を一部修正してお送りしております。ご了承ください。
所有者 名称 解説
アルスル
(アーサー)
プリトヴェン(船)
Prytwenn
アルスルの乗る船。言葉の意味は「形の綺麗な」。
グウェン(マント) 「白」と、いう意味の名を持つマント。その言葉通り真っ白で、四隅に赤金の林檎の刺繍がしてあるという。まとったものは、姿を消すことが出来る。
カレトヴルッフ(剣)
Caletuwlch/Kaletvwlch
のちのエクスカリバー(Excalibur)と同じもの。
「calet」が「賢い」を、「bwlch」がV字の刻み目を意味する。
「calet」は、クーフリンが持つ「カレドボルグ」の「カレド」と同じ単語。
ロンゴミニアド(槍)
Rongomynyat
キリストを貫いた「ロンギヌスの槍」と比較されていることもあるが、確かではない。言葉の意味としては「打ち手の槍」。
ウィネブ・グルスヴッヘル(盾)
Vyneb Gwrthucher
「夕べの顔」という意味。効能等は不明。
カルンウェンハン(短剣)
Carnwenhan
「小さな白い柄手」と、いう意味。
カヴァス(犬)
Cauall ki Arthur
アーサー王の優秀な猟犬。誰にもやりたくない、と言っているほど。巨人イスバサデンが指名していないにもかかわらず、猪の長エスキスエルウィンを倒してしまう。カヴァスとは、本来「馬」を指す言葉だったらしい。
スァムライ(雌馬)
Llamrei
スァムライには「灰色の跳躍者」「早足の者」という意味がある。猪の長エスキスエルウィンを狩るシーンでは、プリダインのカウが借りて乗っている。
オウァイン
(イーヴェイン)
黒い鎧 泉の騎士がまとうもの。その騎士を彼が倒し、跡を継いだときに身にまとうようになった。
白い獅子 オウァインが助け、以後旅をともにする従者。
烏の軍団
urankes
総勢3百羽の烏の軍勢。オウァインの父方の祖父、キンヴァルフより贈られたもの。人間ではないが人間と戦えるほどに強く、彼に勝利をもたらすのだ。
ケンヴェルヒンの3百本の剣
tychant cledyf cledyf Kenuerchyn (tri chan cleddyf Cenferchyn)
これもオウァインの祖父、キンヴァルフの所有するものと考えられているが、詳細は不明。
指輪 最初にリネットから渡された、姿を消す指輪。城に戻ることを忘れたとき、泉の貴婦人の使者が来て取り上げていくが、仲直りしたときに再び手元に戻る。
キンウィル ヘングロイン(馬)
Hengroen
カムランの戦いで<アルスルに最後まで付き従う人物の馬。
ヘングロインとは、「古い皮膚」という意味らしい。
クレディフ・キヴルッフの息子たち グラス、グレイシック、グレイサット(犬)Glas,Glesic,Gleissat グラスは「灰色」、グレイシックは「鮭」を意味するが、グレイサットについては不明。
語呂合わせのよい三つの名前は、詩人たちが即興で物語に取り入れることがよくあった。
カス、クアス、カヴァス(馬)
Call,Kuall,Kauall
それぞれ「策略に富む」「素早い」「馬」。これも上記と同じ、語呂合わせと思われる。
レムヒの
蓮っ葉女
グウィドリト(子犬)
Gwydrut
猟犬。
グウィディン・アストリス(子犬)
Gwyden Astrus
上に同じく。犬なんだけど、アルスルの名士たちの中に入ってるのは、実は人間だったのが姿を変えられていたからなのですな。
ペレドゥル 湖に住む怪物、アダンクの姿を見ることが出来るようになる魔法の石。ある女性が、自分を愛してくれることを条件にペレドゥルに手渡す。その女性は、「わたくしを探したいときは、インディアの方角をお訪ねください」と言い残す。
エドリム 「悲しみの小山」に住む、「塚の黒蛇」の尾についている石で、片手にこの石を掴んでいると、もう片方の手で好きなだけの黄金を掴める。人々はその蛇の死ぬのを待っていただけだが、ペレドゥルは自ら行って蛇を殺し、忠実に仕えてくれたエドリムへの贈り物とする。

…名前の出てくるアイテムが少ない。面倒なので省いた部分もある。
続いては、「キルッフとオルウェンの物語」より、巨人の長イスバザデンがキルッフに求婚の条件として挙げるものをリストアップ。

名称 種類 効能/用法(笑)
ドーンの息子アマエソン 婚礼の日に出す食べ物を育てるための畑を耕させる。
ドーンの息子ゴヴァノン 畑を耕す農具を作らせる。正統な王以外のためには農具を作らないという。
グリウリド・ウィネの
二頭の雄牛
動物 荒地を耕させる家畜。栗毛の牛のこと?
メリン・グワンフィンと
イッヒ・ブレッヒ
動物 雄牛の名前。牛なのに名前がカッコイイ。
ニンヒアウとペイビアウ 動物 同じく雄牛の名前。はなればなれの場所にいる。
もとは人間だったが、彼らの犯した罪のため、神がその姿を変えてしまったのだという。
亜麻のヴェール 品物 花嫁となるオルウェンが婚礼の日に被る白いヴェール。
ただし、指定された、作物も育たない耕地で種から育てなくてはならない。
ブラゴット 食物 ミードと並び、ウェールズでは代表的な、甘い飲み物。
お祝いの席でも出された。
スウィロンの息子
スウィルの杯
品物 素晴らしい飲み物を入れることが出来る杯。
しかし、そんな特別な器に入れなければならない「強い飲み物」って、一体?
長脛のグウィズネの
大籠
品物 ダグダの釜に似たアイテム。食べ物がいくらでも湧いてくる。
婚礼のための食べ物を取り出すらしい。(じゃあ畑いらないじゃん)
10 グルガウト・ゴドディンの
角の酒器
品物 角で酒の器をつくるところは北欧っぽい。祝い酒を入れる。
11 タイルトゥの竪琴 品物 タイルトゥの持つ、オート演奏の竪琴。鳴り止むのも自動。
婚礼の晩に奏でるべきもの。
12 リアンノンの小鳥 動物 「マビノギの5つの物語」に登場する乙女リアンノンの持つ、忘却の小鳥。
この小鳥の歌声には不思議な力があり、死者を目覚めさせ、生者を眠りに誘い込む。
また、忘却の力も持っており、新婦の父は辛いことを忘れるのに使いたいらしい。
13 ディウルナッハの釜 品物 同じく「マビノギの5つの物語」に登場。
ディウルナッハはイウェルゾンの王アエドの息子、オドガルの執事。
魔法の釜なのに、ただ肉を煮るために使いたいと言う…。
14 猪の長
エスキスエルウィンの牙
品物 剛毛なイスバザデンのヒゲを剃るための剃刀を作る。
生きながら抜いた牙でなくてはならない。
ちなみに、イスバザデンはこの剃刀で顔の肉ごと削られたあと死ぬはめになる。
15 オドガル イウェルゾンの王アエドの息子。エスキスエルウィンの牙を抜ける、唯一の人物。
16 プリダインのカウ プリダインの60の州を支配下に置く人物。
エスキスエルウィンの牙を保存できる、唯一の人物。
17 白き魔女、
黒き魔女の血
品物 地獄の高地にある、悲しみの谷の突端に住む魔女たちの血。
イスバザデンが身支度を整えるとき使う洗髪剤、もしくはポマード。 …血で?
18 小人グウィドルウィンの
品物 上記の魔女の血を保温しておくマジックポット。
温かいうちでないと、血は役に立たないらしい。
19 剛鬢のリンノンの瓶 品物 その瓶の中では、牛乳がすっぱくなることはない、というマジックポット。
婚礼の席に出す牛乳を入れておく。
20 櫛と大はさみ 品物 タレド・ウレディクの息子トゥルッフ・トゥルウィスの二つの耳の間にある。
なぜ耳の間に櫛とはさみが? とは、聞いてはいけない。
剛毛なイスバザデンの髪を整えるために必要な特注品。
21 ドゥルトウィン 動物 エリの息子グライトの犬。
上記のトゥルッフ・トゥルイスを狩ることの出来る、唯一の犬。 …狩るのか。
22 百の爪持つ
コルスの皮紐
品物 この獰猛なドゥルトウィンを繋いでおける、唯一の皮紐。
23 百の手持つ
カンハスティルの首輪
品物 もちろん、そのドゥルトウィンにはめておく首輪。
24 百の繋ぎ持つ
キリッズの鎖
品物 首輪と皮ひもをつなぐ品物。ここまで3つ、すべて対・魔犬仕様の特注品。
25 モドロンの息子マボン 生まれて3日目に母のもとから姿を消した人物。
この人物を探すのが大変だった…。
26 グウィン・メグドゥン 動物 さながら波のように速く走るグウェドゥの駿馬。グウェドゥは「暗白色」。
マボンがこれに乗り、トゥルッフ・トゥルイスを狩る。
27 アエルの息子エイドル 疲れを知らず探求を続ける者。
マボンを見つけるためには、マボンの親戚であるこの男を見つけなくてはならない。
28 イウェルゾンびと
ガルセリト
イウェルゾンの主席狩人。トゥルッフ・トゥルイスを狩るために必要。
「主席狩人」は、王の宮廷での24の役職のひとつ。重要な地位である。
29 ディシスの紐 品物 騎馬武者ディシスの髭から作る紐。二頭の猟犬を繋ぐのに必要。
生きているうちにヒゲを引っこ抜いて作らなくてはならない。
ちなみに、髭には、巨人の力がこもっているという信仰があった。
30 野生児キネディル らい病やみのヘトゥンの息子。
山に住む、どんな動物よりも猛々しいため、猟犬を繋ぎとめておける。
31 ニッズの息子グウィン 世界が破壊されるのを恐れて、神がアンヌヴンの悪霊を中に封じ込めたという人物。
そのため、命を惜しまない性格になってしまった。
トゥルッフ・トゥルウィスを狩るために必要。
32 ディ 動物 モロ・オイルヴェダクの馬。グウィンが乗り、トゥルッフ・トゥルウィスを狩り立てる。
33 フラインクの王
グウィレンヒン
トゥルッフ・トゥルイスを狩るために必要。
ただし、自分の国を離れることは少ない。
34 アリン・ダヴェドの息子 真に良き猟犬放ち人。
ここまでくると、いいかげん、「トゥルッフ・トゥルウィスって何だよ」っていう声が…。
35 アルスルと彼の狩人たち 実はこれがいちばん入手簡単な品だったりして。
「お前と一緒に来ることはあるまい」って…。イスバザデンは情報不足のようです。
36 クレディフ・ディヴルッフの
孫息子たち
トゥルッフ・トゥルウィスを狩るのに必要。下の三人も同じ。
37 キリッズ・キヴルッフの
息子たち
ブルッフ、キヴルッフ、セヴルッフの三人。角笛を吹き鳴らし、狩りの始まりを告げる者。
とにかくスゴイらしい。形容詞がずらずらずらーっと続いている。
38 巨人ウルナッハの短剣 品物 トゥルッフ・トゥルウィスにトドメを刺すために必要。
これを手に入れるためカイが大活躍。
39 不眠 「これらを手に入れるまで、寝ちゃダメ!」…ですって。
オレにとっては、これが一番辛いんですが…。(寝たいよ)

ワンポイント
 「トゥルッフ・トゥルウィス」は、かつては人の王だったが、その邪悪さゆえに神によって猪に姿を変えられたもの。
 人であったため頭がよく、猪の軍勢をひきつれて各地を荒らしまわっている。(おお神よ。何故もっと無害な動物に彼の姿を変えなかったのか。せめてウサギとかニワトリなら良かったものを)

ケルト神話 他のブリテン島・アイルランド古伝承との類似
 「トゥレン3兄弟」の話で、キァンを殺してしまったトゥレン3兄弟が、償い(エリック)として課せられる厳しい探求が、この話に似ている。島の探求物語は、なぜか「台所用品から戦いの武器まで」幅広く集めて来いと要求するもののようです。
子犬だの焼き串だの槍だの、探して来いっつって言われてもなー、そんなクエストこなさせられる勇者は嫌だ。
 …ご苦労様です。キルッフ。




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