シャルルマーニュ伝説
-The Legends of Charlemagne

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ロランの歌−あらすじ2


悲劇の予兆は既に始まっている。
ロラン含め12人衆をしんがりにおいてフランスへ戻るシャルルマーニュの心は重い。さてはガヌロンめ、敵と内通しおったか、もしもロランを失えば取り返しはつかぬ…などと涙するが、だったら今から戻って止めろよという気がしなくも無い。(仮に負けん気のロランが命令を聞かなくても、努力くらいはするべきだ…)
ロランをしんがりに任命したのは、貴方です。シャルルマーニュ殿。

その頃、マルシル側はガヌロンの言ったことを鵜呑みにし、いざロランを討ち取れ、さすれば右腕を失ったシャルルマーニュは二度と攻めては来るまいと戦いの時を待っている。後に残りしフランスの12人衆と戦うべく、マルシルも手の者から12人を選び出す。
敵の本隊が帰国して、今や数の上でも圧倒的とあって、負けかかってたわりには強気である。
武装して近づきつつある鎧のきらめき、兵士たちのどよもしに気づいたオリヴィエはロランに寄りて言う、「どうやら、サラセン人との戦いは免れないようだな」と。
「なに。ここを一歩たりとも退くものか。まさに願ったりだ。」
その気合いは認めるが、ロランよ、戦況を良く見たまえよ。

迫り来る軍勢を前にして、オリヴィエは言う、「ガヌロンはこれを承知していたはず。おのれ、わざわざ我らを危険な目に合わせる企みか」 「黙れ、オリヴィエ。あれは俺の義父だ。悪口は聞きたくない!」(※)
かくて戦は始まろうとする。味方の不利は既に明白、オリヴィエはロランに駆け寄って、援軍を呼ぶため角笛オリファンを吹き鳴らせと要請する。だが、ロランはそれを拒む。なぜに辱めを受ける必要があろうか、異教徒などわが剣にて切り伏せてくれるわ、と。

そう、はづかしいから援軍なんか呼ぶもんか、オレの力だけで勝てるわい、と言いやがったのであるこの男。
そんなこと言ってる場合じゃねーよ。


★ワンポイント
※印のセリフについて。 前章まで、ロランはガヌロンを蛇蝎の如く嫌っていたはずなので、ここの部分は後の時代の加筆だという説がある。
が、ロランとガヌロンの関係をどう取るかによって、この辺りの解釈は違ってくる。ロランがガヌロンをそれなりに慕っているか、信頼していた場合、しんがりに指名されたことには腹をたてていても、このように言うかもしれない。または、しんがりに指名されたことに腹は立てていても、それはわざとではないし、マルシル王が裏切ることも知らなかったはずだ、という意味にもとれる。



かくして、ロランの意固地のために、フランス勢2万vs.イスパニヤ勢40万、という、絶対勝てない戦いが開始された。
最初の段階で角笛を吹いていれば、先に山を越えた本隊が戻ってきて、マルシルの軍勢は打ち破れたはずなのに、である。
これは勇気ではなく無謀である。オリヴィエは忠告したんだが…。

先陣を切って駆け来たるマルシルの甥アエルロー、よせばいいのにガヌロンの裏切りを告げ、「ここでシャルルマーニュは右腕(ロラン)を失えり!」などと挑発するものだから、怒ったロランにばっさり切られあえなく落命。この調子で、挑発されたオリヴィエも、挑発してきたサラセン人を切り伏せる。フランス12人衆vs.イスパニヤ12人衆はフランス側に軍配が上がった。

しかし戦いはさらに苛烈を極め、ついに、マルシルが手勢を引き連れて戦場に姿を現す。やがて、1人、また1人と味方が倒れてゆく。
ついにロランは、援軍を呼ぶべく角笛を吹こうとする。だが、今度はオリヴィエの激しい怒りに遮られる。
「オリヴィエ、なにゆえの怒りか?」 
「そは強者の名にそむこうぞ。そなたは先刻、我が吹けと申したときには角笛を吹かなんだ! この惨状はそなたのせいと知れ。今さら笛を吹こうとももう遅い、恥を上塗りするだけだ!!」
ロランは、オリヴィエの妹オードと婚約している。この戦に生きて戻れば、オードと結婚するのだが、オリヴィエは、それすら許さぬと激しい怒りようである。

そこへ大僧正チュルパン(※いかがわしい歴史書に必ずと言っていいほど名前の出てくる人。聖職者だが、戦場においては殺戮者でもある^^;)が割って入り、諍いはやめにしてほしい、もはや手遅れとて吹かぬよりはマシだ、と角笛を吹くようロランに促す。

ロランは三度、角笛を吹く。その音色ははるか遠方に去っていた、シャルルマーニュの耳にも届く。
あれは戦を告げる音、さてはロランの身に何かあったかと馬首をめぐらさんとする王の前に、ガヌロンが進み出て、「思い過ごしでございましょう、戦などあるものか。」と、まっすぐフランスへ帰らせようとする。
だが、急を告げる角笛の音は決して消えず、人々は戦のあったことを知る。
ガヌロンの裏切りは知れ、彼は捕虜となる。シャルルマーニュはすぐに軍を引き返させ、ロランを援護しようとする。

ロランとオリヴィエは死を予感し、捨て身の覚悟で敵陣に切り込む。ロランはマルシルの右の拳を斬り落とす。また、マルシルの息子を斬り殺す。だがオリヴィエは、マルシルの叔父アルガリフの手によって致命傷を負わされ、相打ちとなって倒れる。
親友が死にゆくさまを見たロランは、ようやく辺りの惨状に気がついた。
味方のほとんどが討ち死にし、辺りは死屍累々。残る味方はゴーチェとチュルパンのみ。満身創痍の3人は、身をよせあい、せめて命の尽きるまではと死に物狂いで剣を振るう。

ちょうどその時、ようやく、フランスの軍勢が吹き鳴らラッパとどよもしが、戦場に聞こえてきた。
「まずい、本隊が戻ってきてしまった。戦闘が再開されればイスパニヤはおしまいだ!」
イスパニア軍は浮き足立つ。ロランの率いる軍の強さを見誤り、壊滅させるのに時間がかかりすぎてしまったのだ。

サラセン人の軍勢が逃げ出した後、ロランは、戦場をまわり、12人衆の遺体をかき集める。最後まで息のあったチュルパンも死ぬ。
ひとり残されたロランは、天然の大理石が姿を見せる木陰に倒れ伏し、そのまま気を失ってしまう。
それを見ていたのは、戦場に潜んでいた異教徒だった。ロランが気を失ったのを見るや近づいて、その手から剣を奪おうとした。だが、名剣を奪われそうになった瞬間、ロランははっと正気に返り、とっさに角笛オリファンで賊を殴りつける。角笛は砕け、ばらばらになって散った。
もはや生きながらえることはあるまい、と、彼は死を覚悟する。
「ならば異教徒の手に奪われるよりは、美しきデュランダル(剣の名前)よ、お前もここで果てるが良い」
剣を力いっぱい大理石に打ち付けるが、名剣は名剣たるがゆえに、簡単には折れてくれない。
ロランは嘆き、免罪の言葉を述べながら力尽きる。


★ワンポイント
合戦の描写中で、ロランが傷つくシーンはどこにも出てこない。死に瀕したオリヴィエが敵と見誤って至近距離からロランの頭に剣を振り下ろしたときすら、かぶとが割れるだけでロランは実は無傷である。つまりロランは、ニーベルンゲン伝説のジークフリート(シグルド)の如く不死身の英雄なのである。
死因は「角笛を力いっぱい吹いたために血管が破裂した」こと、つまり自傷行為である。誰からも傷つけられることのない不死身ゆえに自身の勝利を確信していたものの、自分は助かっても仲間が全滅することに気づかないあたり、また自分ひとりで生き残って敵を全滅させたとしてもそれは本当の勝利ではないことに気づいていなかったあたり、ロランの人としての愚かさと、悲しさを感じられるシーンだと思う。



そして最後の一人まで天に召され、戦場が静まったのち、シャルルマーニュがようやく戦場に辿りつく。呼べども答えは返って来ない。怒りに震える王は、全軍に追撃の命を下す。(なぜか天使が降りてきて「やっちまえ、シャルルマーニュ! まだ日は沈まないよっ」などと、けしかけている…)
その日、日が暮れるのは異様に遅かった。フランスの軍勢はイスパニヤ軍をこてんぱんにしたあと、野原に野営する。
そのときシャルルマーニュは不吉な夢を見る。さらなる大きな戦い、鎖につないだ熊(=ガヌロン)を巡る争い。

一方、ロランによって傷を負わされたイスパニアの王マルシルは、サラゴッズへと逃げ帰っていた。
人々は戦に加護をもたらさなかった不甲斐ない神々の神像を砕き、もはや負け戦と嘆いているが、その時、遠くバビロニアより、バリガン王の率いた軍勢がサラゴッズにやって来た。
冒頭にもあったとおり、シャルルマーニュのイスパニア侵攻は7年かけたものであり、その最初の年に出していた援軍要請に応えた軍が、今、ようやく到着したのだった。(ぶっちゃけ遅いよ。^^; …と、いいたいところだが、ここで言う「7年」は叙事詩的表現のため、実際に7年も戦っていたわけではない。)

すでにヤル気を無くしているイスパニア勢に渇を入れ、我らなら憎きフランスを打ち破れるわと豪気なバリガン。
マルシルの軍兵は悉く敗れ去ったものの、代わりにシャルルマーニュの懐刀、ロランとその他12人衆が討ち取られたことを聞くや、勝機を見る。シャルルマーニュの軍勢は、後退の難しいセーブル河の川べりに宿営しているという。
マルシルの仇を討たんと、バリガンは闘志を胸に燃え立たせるのであった。


翌朝、フランス勢はまだ、イスパニアに援軍の現れたことを知らぬ。
シャルルマーニュは言う、「甥(ロラン)の遺骸を捜したい、わしを先頭にやらせてくれ! 奴はかつてこう言った、『敵国にて死ぬる時は、敵地に頭を向け、戦に勝ってこそ』と!」。かくて戦場を前に単身ウロついた王は、緑の中に、倒れ伏したロランの遺体を発見する。
悲しみにくれるシャルルマーニュと家臣一同は、弔い合戦を誓い合う。
「おおロランよ。わしという悪い主君に逢ってしまったがために、こんなところで死なねばならぬとは。一門に勇士はあまたおれど、そちほどの者はおらぬわ」


しかし、そんな彼でもシャルルマーニュの愛しい甥であり、最も親しい友であり、心許せる唯一無二の相手であったことは間違いない。
馬鹿な子ほど可愛いと申すべきか、無謀ながら天真爛漫ゆえの人望とでも言うべきか。
王の嘆きやいかに。人々の嘆きやいかに。
アンジュー伯ジェフロワの吹く角笛のもと、人々は死せる友人たちの遺骸を運び出そうとする。
…と、そこへ現われたる、異教徒の軍勢!

いざ、ロンスヴァル決戦・第二幕。敵はバビロニアの王、バリガン率いる異教徒たち。

−つづく




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