それは兵士隊の中で十三番目の武士、
戦闘の始まりを引き起こしたのは
こいつに責任取らせりゃいいんだって。(ムリ)
ベーオウルフら一行は、この男の道案内により竜の巣にたどり着くが、その後の戦いに男が出てこないところを見ると、どさくさにまぎれて逃げたのかもしれない。どちらにせよ、お咎め無しだ。 なんていい王様なんだ!
だが、そんな気高い覚悟も、ビビリの部下たちには通じなかったのだ。
竜におじけづいて、老いた王をただ一人戦場に残し、戦いもせず森に逃げ込む。愚か者め。 「お、王様は強いからいいよな」 「う、うん。きっと大丈夫だ」「オレたちがいなくったって…」とか、言い合ってたんだろうか。
ただひとり、戦場に戻り王を助けたウィーラーフは、のちに激怒している。
「お前ら、君主の恩を忘れたのか?! 武士にとっては恥の生命よりも死のほうが勝る! 人が貴様らの誉れなき振る舞い、逃亡が知られたあかつきには、一族の銘は奪われると思え!」
まったく、そのとおりだ。
何で王様一人が戦わにゃならんのだ。身内の不始末の責任はお前らにも関係あるだろうが。
ベーオウルフもベーオウルフだ。
誰かを責めることもせず、ただ黙々と戦いに赴く背中は、悲しすぎる。だったら、なぜ部下を連れてったんだ? 誰だって、1人で戦うのは嫌だろう。ほんとは誰か一緒に戦って欲しかったはずなのに、何で何も言わずに行ってしまったんだろう…。
部下の不始末は上司の責任かもしれないけれど、1人ですべての責任を背負いすぎるのもどうだろう。
何かあったら直ぐ部下のせいにする上司、シッポ切りが上手な政治家さんなどに、見せてあげたい、この責任感。
部下を大切にするのはいいけれど、その優しさを汲み取れない連中が相手では、単に甘やかしているのと変わりない…。(涙)
それでいいのかベーオウルフ!
<彼は勇敢だった。だが、きっと部下の教育はニガテだったのに違いない。…なにしろ、人より優れた力を持ちながら、性格穏やかな王だったのだから…。>