この家の近く、高等法院の向かい側ぐらいに立っているサミュエル・ジョンソンの銅像。殆ど何の脈絡も無く立っている。
彼は1737年に上京(上倫?)して以来、ロンドンで17回も引っ越しを繰り返したが、唯一現存しているのが此処。この家に彼は1748年から1759年まで住み、英国初の辞書"Dictionary of the English Language"を編纂する。これにより英単語の綴りが確定した、と評価する声もある。
しかしこの辞書は多分にジョンソン博士の主観が入っており、「新解さん」の元祖のようなところがある。有名な例として「カラス麦 (oats)」の項には、「穀物。イングランドでは通常は馬に与えられるが、スコットランドでは人間を養う(a grain, which in England is generally given to horses, but in Scotland supports the people)」とか、当の「辞書編纂者(lexicographer)」は「辞書を書く人。原文を写し、言葉の意味を細かく述べるのに忙しく、辛気くさいことをおこなう無害な輩(a writer of dictionaries, a harmless drudge, that busies himself in tracing the original, and detailing the signification of words.)」と書かれていたとのことである。(『イギリス英語の裏表』(小林章夫著))
(←画像左)
家の遠景。
この家は新聞街として名高かったフリート街(今はロイターぐらいしか残ってない)から多少横道に逸れた奥深い所にひっそりと建っている。地図で見ると分かりにくいが、フリート街には看板が有るのでそれに従って行けば辿り着けるようになっている。
家そのものはまあ普通の古い家。中は塗り替えられているが、そもそも築300年の年代物の物件であり、みしみしと音を立て、かなり危うさが漂う。そこんところはあまり気にしないで見物しよう。それから英国の展示にはありがちだが、ビデオでジョンソン博士とボズウェルのそっくりさんが色々解説している。30分近くありそうだ。
←屋根裏部屋の博士の仕事部屋に例の辞書が置かれている。
部屋にはジョンソンの肖像画とかステンドグラスが有り、どれも気難しそうな顔をしているし、実際そういう奴だったのかも知れない。
尚、この家は350ポンドを払えば一晩貸し切りにしてくれるので、パーティーでも出来るんだろうと思う。結婚式を挙げた人々も居るらしいが、何故こんな所で?
家の付近は、ジョンソンがよく通ったというYe Olde Chesire CheeseやWig and Pen等のパブがそのまま残っていて、結構古くさい雰囲気を醸し出している。家の前には石畳の広場っぽい感じになっていて、ジョンソン博士が飼っていた猫Hodgeの像とベンチが置いてあり、シティの喧噪の中にあって静寂な空間となっており、本を読んだりするのに適している。
場所 17 Gough Square, London EC4A 3DE Blackfriars or Chancery Lane
値段 £4.00(£3.00)
電話 020 7353 3745