英国情報−生活全般関係

右ハンドル


車の流れが日本と同じ
意外と知られていないかも知れないが、英国は日本と同じ右ハンドル(=左側通行)なので運転はしやすい。日本では外国これ須く左ハンドルという既成概念に囚われがちだが、そもそも日本が右ハンドルなのは英国の真似をしたからである、と言われている(異説有り)。じゃあ世界ではどっちが主流なのかというと、国の数で言えば7割ぐらいが左ハンドルとなっているらしい。ざっと見ていくと、欧州大陸諸国は軒並み左ハンドルのようである。米国はこれまた当然に左ハンドル。アジアでも中華人民共和国や大韓民国は左ハンドルとなっている。さすが大陸だ。一方、旧英領は大体右ハンドルらしい。だから大陸と言ってもオーストラリアは右ハンドルであるし、インド、シンガポール、南アフリカも右ハンドルである(しかし米国も元々は英領だった筈だが…)。台湾はというと、旧日本領であるにも関わらず左ハンドルであるが、これは左ハンドルの国民党統治のためであろう。余談だが、スウェーデンは昔は右ハンドルだったのに、大陸からの観光客が増えたせいで、とうとう左ハンドルに変えたという暗い過去を持っている。

ではここで問題。英国は左側通行、フランスは右側通行であるならば、両国をつなぐユーロトンネル内はどっち側通行でしょう?正解はこちらでどうぞ。

閑話休題。右ハンドルというのは、元々は馬車が左側通行だったからで、御者が擦れ違うときに、お互いに挨拶等をし易い(右利きが多いので)ということから発生したとの説がある。これはこれで分かるが、じゃあ大陸諸国には左利きが多かったのかと言うと、多分そうではないので、左ハンドル発祥の秘密は謎である。知ってる人がいたら教えて下さい。右利きの視点から言うと、ギアチェンジをしてる間に利き腕ではない方の手による片手運転になってしまうのは心配だと思うのだが、左ハンドル国民からはギアチェンジを利き腕でない方の手でするのは心配だという声も聞こえてきそうではある。

さて、英国の車は右ハンドルではあるものの、日本と違う点が1つ存在する。それは、ウインカーとワイパーのスイッチが日本とは左右逆の位置に付いていることでる。つまり、ハンドルを中心にして、右側にワイパー、左側にウインカーが付いている。よって、よく曲がろうとして窓を拭いてしまったものだったが、在英生活に慣れるにつれ、この左右逆転にも慣れてしまい、殆ど間違えなくなった。逆に、元々日本では車を持っていなかったというのもこれあり、帰国してからの方が未だにちょくちょく間違えてしまう。普段は大丈夫なのだが、咄嗟に(特に左に)曲がろうとするときに、間抜けに窓を拭いていることがある。

それはそうと、英国では外車が多い。と言うより、外車という概念は多分無い、か有っても薄いのではと思う。よく見掛けるメーカーとしては、フォード、フォルクスワーゲン、BMW、フィアット、プジョーあたりが多い。当然、日本車も多く見掛ける。英国内の日本車のシェアは日産が1位で、以下はトヨタ、ホンダの順である。日本の車メーカーの工場は英国経済と雇用事情にかなりの存在感を示しており、ホンダの工場がリストラの動きなんてのはフィナンシャル・タイムズ紙の1面を飾ってしまう。逆に、ローバーなんてのは虫の息だし、ジャガーもそんなに頻繁に見掛けるわけではない。

「外車」とは言え、日本車は右ハンドルのままだからそれで済むし(ワイパーとウインカーは御丁寧に日本と左右逆に付けてある)、フォルクスワーゲンやフォード、フィアットの車が左ハンドルのままになっているのは見たことがない。これは英国では左ハンドル車は右ハンドルに比べて税金が恐ろしく高くなるという事情もあるが、それ以前に、外車という概念が無いので、左ハンドルを「外車だー」と有り難がる風潮が無いということだろうと思う。そのへんが日本とは違って実用的である。と言うか、日本で左ハンドルに乗ることには、外車であることを誇示する以外に何か利点は有るのだろうか?極端な例では、日本では英国車である筈のジャガーの左ハンドルが存在するらしいが、早く目を覚ましてほしいものである。とはいえ、昨今の日本市場では外車でも左右両方の仕様があり、ベンツさえも右ハンドル車の方が売れているらしい。

私は左ハンドルには強烈な違和感が有り、パリでは友人の車に乗せてもらおうとして運転席を開けてしまった等の失敗が多かった。絶対自分で運転したら逆走するに違いないと思われ、もし大陸諸国に住むことになったら、車に乗るのは考え物である。いや本当に、乗ってるうちに段々分からなくなってくるのだから怖い。かと言って、フランスで右ハンドル車に乗るかというと、それまたその国の掟に背く訳であり、左ハンドルの国ではやはり左ハンドル車に乗るべきだとは思う。

ときに、右ハンドルか否かということは、車に乗らない人でも実はかなり重要な要素である。と言うのは、歩行者も横断歩道を渡るときに気を付けるべき方向が逆になるからで、フランスやドイツに行ったときは何度も危ない目に遭ったし、逆にフランスからロンドンに遊びに来た友人(日本人だが半ばフランス人化している)は、全く逆方向の安全を確認して横断しようとして危機一髪だったことがあった。それに、電車のホームでも同じことが言える。パリで地下鉄を待っていると自分の感覚とは逆の方向から電車が入ってきて、何度も違和感を覚えた(大したことではないが)。やっぱり慣れるまでは大変。でも左ハンドルの国に行くと、外国に来たという感覚が強くなるのは、やっぱり日本的感覚。


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