Holborn station |
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これは急いでいる人にとってはかなり助かる話である。善意だけに頼るのではなくて制度化されているため、もし前方が塞がっていれば正々堂々と「道をあけてほしい」という意味で"sorry"と言うことが出来る。私も健康のためエスカレーターでは必ず歩くようにしていた。だったら、階段を歩けという話も有ろうが、階段が併設されていない場合も多々有ったと思う。
日本の事情を考えてみると、確かに日本でもエスカレーターの一方を空けておくというのは習慣として存在していると思われる。但し、首都圏の場合はなぜか右側を空けておくことが多く、英国とは反対である。私も英国に行く前には首都圏に数年間住んでいたので、来英当初はうっかり左側に立ってしまって顰蹙を買ったことも屡々だった。一方、関西では逆に英国と同じく左側空けである。これは梅田駅で以前左側を空けるよう放送がされていたことが原因ではないかと言われている。逆に首都圏が右側空けなのは理由不明。
さて、先日の日経新聞夕刊(13/8/17)によれば、東京都交通局はエスカレーターの走り、歩行、駈け降りをやめるPRを6月末から開始しているらしい。2月に都営線の九段下駅でエスカレーターでぶつかった事故がきっかけとのこと。お節介な話だ。単に歩く時には気を付けろと言えばいいだけの話で、安直に禁止すりゃいいってもんじゃないでしょう。その他の鉄道事業者は慣習を重んじて特に措置はしないらしい。
記事には、急いでいる人は階段を使えという一般人の意見が紹介されていた。階段が常に併設されていれば、そういう意見も有りだけど、じゃあエスカレーターしか無い場合は走っていいのか?と聞かれたらどうするのだろう。
ここで、話は英国のエスカレーターに戻る。地下鉄でエスカレーターに乗っていると、或る奇妙な事態に遭遇することになる。エスカレーターで歩かずにステップに立ち、手をベルトの上に置いてみよう。すると、あーら不思議、段々ベルトの上の手が後ろに取り残されていってしまうのである。これはステップの部分とベルトの部分の進む速さが違うという、これはもう設計上の失敗としか言いようのない原因によるものである。しかも、多くのエスカレーターで陥る状況である。よって、時折は手をベルトから離して手繰り寄せなければならない、って大した作業ではないけれど。
更に言えば、古い物好きの英国では、ついこないだまでエスカレーターの階段は木だった。以前はエスカレーターが燃えて駅が火事になったこともよくあったという。木製のエスカレーターには今でもごく稀に出会えることがあるが、動いているのが不思議なぐらい。走ったらやばいんじゃないだろうかと思ってしまう代物である。いや、本当にやばいと思う。どうしようもなくやばくなった所から金属製に替わっていったのだろう。だって、そういう国なのだから。