英国情報-生活全般関係

フィッシュ・アンド・チップス


皿の直径は約26㎝。量はこれぐらいが普通。
英国の代表的料理の第一に挙げられるのが、フィッシュ・アンド・チップス(以下F&C)である。フィッシュとは白身魚のフライのことで、その身が天麩羅の如く揚げられている(尾と頭は無い)。よく使われる魚は、コッド(鱈の一種)、ハドック(同)、プレイス(鰈の一種)等で、専門店では種類を選べるし、値段も魚によって異なる。一方のチップスとは、これは日本で言うチップスとは違って、フライド・ポテトをイメージしてもらえば近いと思う。イギリス英語のchipsとはアメリカ英語でいうFrench flyのこと。但し、こちらのは結構太い。で、基本的にこの2つが1つの大皿に盛られている。つまり揚げ物に揚げ物を添えて食うのだから、かなり脂っぽいのは事実で、カロリーは異様に高い。栄養のバランスを保つため、店によってはグリーンピースやサラダを付け合わせたりすることもあるが、焼け石に水のような気がしないでもない。

しかし裏を返せば栄養価が高いとも言える訳で、値段も手頃だったため20世紀初頭には都市労働者の人気を獲得し、次いで全国に広がっていき、第1次世界大戦の時には英軍兵士の主食として重宝がられたという。それに金曜日は肉食禁止というキリスト教の考え方もF&Cの普及を促したと言われている(眉唾)。

F&Cは英国の国民食とも言える域に達しており、どんな田舎に行っても必ずF&Cの専門店を見掛けることが出来る。殆どの店が店内で食べる(eat in)か持ち帰りか(take away)を選べるようになっており、後者の方が圧倒的に値が安い。とは言っても、£4付近が相場。邦貨にして700円ぐらいだが、英国は物価が高いのでしょうがない。中で食べると大してサービスも良くないくせに、値は£7ぐらいに跳ね上がる。テイクアウェイにすると、藁半紙のような紙で二重に包んでもらう(昔は新聞紙で包んでいたそうだが、今では御丁寧に法律で禁止されている)。でそれをその辺の公園や若しくは歩きながら、ばくついて食べるのである。そのあたり英国人はあまり気にしていない様子。幸いロンドンは公園の類が多いので、食べる場所には事欠かない。

さてこのF&Cに欠かせないものがある。それがソルト&ビネガー、即ち塩と酢である(モルト・ビネガーは麦芽から作られるもので、日本の酢とは風味が違う)。塩はまだしも、日本人にはこのビネガーという習慣は考え付きにくいものなので、最初も私はケチャップを付けて食べていた。しかし暫くして、こちらで知り合った或る日本人の方と、その方のお宅の近所のパブに行ってF&Cを食べたことがあった。でいつもの様にケチャップを付けようとすると、いきなり「それは邪道だ」と言われてしまった。そして「本場はソルト&ビネガーですよ」と教えてくれたのだ。それで怖々振り掛けてみたのだが、これが実に美味い。今までケチャップなんぞを付けていた自分を呪ってしまった。それ以降は家にも常備して、常にどぼどぼと掛けて食べている。

日本人の間ではF&Cはあまり人気がないようだが、その理由の1つはこのソルト&ビネガーを試していないというのも一因ではないかと思う。店に行けば、塩もビネガーも机に置いてあるし、店の人も"salt & vinegar?"と聞いてくると思うので、そういう場合は"yes, a lot"と答えよう。というわけで、私はF&Cの強烈な擁護者になってしまった。学食でも殆どF&Cばかり食べている。旅先でもよく食べるが、海の近くで食べると美味しい、とかいう話を聞く。英国で最もF&Cがうまいと言われているのは、海沿いのリゾート地のブラックプールという街で、F&Cならブラックプールと英国人の1/3が信じているらしい。

英国以外の国を暫く旅行していると、無性にF&Cが食べたくなって、帰国すると早速近所の店に買いに行ってしまう。日本には早く帰りたいが、この本場のF&Cが食べられなくなるのが唯一の未練である。

<巻末資料>独断と偏見のロンドンのお奨めF&Cの店


<追記>
先日、とうとうF&Cを食べにブラックプールまで行ってしまった。確かに美味、だったと思う。町中はF&Cの店だらけ。


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