英国情報−生活全般関係

漢字ブーム


現在ロンドンでは、ちょっとした「漢字ブーム」の様相を呈している。否、ロンドンのみならず、フランスやベルギーでもそうだったし、カナダに行った方からも同様の話を聞いたので、西欧全体と言ってもいいのかも知れない。

最も顕著なのは衣類関係。Tシャツや帽子等に様々な漢字がプリントされて売られている。その中で今流行っているなと思われる漢字は「龍」。と言うのは単に今年は辰年だからである。あと「二千年」という文字もよく見掛ける気がする。ミレニアム騒ぎはこんなところにも及んでいたのだ。その他にも「愛」「楽」等から果ては「空手」等、種々雑多な文字が並んでいる。中には偏と旁が逆だったりする如何にもお粗末な手書き文字も有ったりする。

左の画像はロンドン一繁華なオックスフォード街のとある店の軒先で売られていたTシャツ。「可口可樂」とは中国語で「コカ・コーラ」の意。このような漢字の音と意味の絶妙な翻訳は中国語の妙技である。日本ではこの伝統が絶えて久しく、私はそれがとても残念。

さてさて、私が今まで見た中で最も意味不明だったのは、ベルギーのアントワープで見掛けたあの服だろうな、やっぱり。というわけで、右の画像を見て頂きたい。その字体等から察するところ、この服のデザイナーは「菊正宗」と書きたかったのだろうが、「宗」が「音」になって、しかも上下逆になっている。私はあまりファッション・センスがある方ではないので断定する立場にはないが、しかしどう見てもこれは単に間違ってるだけのような気がしてならない。そもそも一体全体如何なる了見で「菊正宗」をプリントしようと思ったのかも疑問だが、まあ多分漢字ならなんでも良かったんだろう。省みて、自分の持ってる服の英語をちゃんと確認してみる必要があるなと思いを馳せた。

衣類以外では、入れ墨が挙げられる。私は試した訳ではないので、これが本当の入れ墨なのか、それとも風呂場でごしごし洗ったら落ちてしまうような「入れ墨」(英語ではtemporary tattoos)なのかは分からない。街頭では、入れ墨師が漢字のサンプルとその英訳を書いた立て看板と共に立っている。「朋 friend」「悟 realise」といった具合。実際、入れ墨などする人がそれほど居るのだろうかと思われるかも知れないが、私が通り掛かった限りでは、結構な数の人々が墨を入れられているのを見掛ける。部位は二の腕だったり、踝だったり様々。漢字を入れ墨したいから英語を訳して漢字で書いてくれと頼まれた日本人もいるらしい。マーケットでは、インチキ入れ墨シールが売られていたので、面白がって買ってみた。又、先日テレビに出ていた某女性歌手の腕には「女力」の入れ墨が有った。

このブームの起源が何なのかは知る由もないが、1つ確からしいのは、このブームは日本ではなくて中国に由来するものだろうということである。中華街に限らず中華系の人々は、店の看板等に(英文字ではないという意味で)漢字を潤沢に使っている。即ち、英国人には分からないだろうなどと全く遠慮することなく漢字を使いまくっている。全く自己主張の強い人達だ。まそういう訳だから、西欧人が漢字に触れるのは日本関連ではなくて中国関連の場合の方が多いのだろうと勝手に私は推察している。そういう意味では、これを「日本文化ブーム」だと無邪気に喜ぶのは、ちょいと早計。


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