上海情報−生活全般関係

銭塘江の逆流


 銭塘江というのは、浙江省を流れる川で、省都・杭州あたりで東シナ海(中国風に言えば「東海」)に注いでいる。因みに、この銭塘江の別名が「浙江」なので、この省を浙江省と言うらしい。そしてこの銭塘江は、海からの逆流が見られるということで当地では有名なのである。今回は、一年で最も大きな逆流が見られるという日、ではなく曜日の都合でその前日に現地を視察してきました。

 この逆流、正しくは「海嘯」と言い、広辞苑によれば「満潮が河川を遡る際に、前面が垂直の壁となって、激しく波立ちながら進行する現象。中国の銭塘江、イギリスのセヴァン川、南米のアマゾン川の河口付近で顕著。タイダル‐ボーア。潮津波。」とある。アマゾン川の逆流と言えば、往年のクイズ番組の早押しクイズで「アマゾン川で…」で押して「ポロロッカ!」と答えてた人がいましたね。あと、英国のセヴァン川でも逆流が見られるとは知らなかった。セヴァン川は英国中部を流れる川で、世界初の鉄橋「アイアン・ブリッジ」が架かっていることでも知られており、私も英国在住時にわざわざその橋を渡りに行ったことがある。

八堡の見物客
 閑話休題。銭塘江の逆流は、年中起きているわけだが、旧暦の8月18日の逆流が最も大きいものになるらしい。これは今年は新暦では10月9日に当たるが、この日は月曜日なので前日の日曜日でもまぁ大差有るまいと思うことにして前日に行ってきた次第。逆流を見る(中国語で「観潮」)スポットは幾つかあるが、一番良いのは海寧市の塩官鎮の観潮台とされている。その他に、海寧市には塩官鎮を挟むように八堡と老塩倉という観潮スポットがある。逆流は車よりも随分と遅くすすむので、最初に八堡で見て、車で急いで塩官鎮に行って再び逆流を見物、そして更に老塩倉に行って3度目の逆流との対面、という技も可能である。逆流の見え方も違うので、取り敢えず3カ所巡りというのでやってみようということにした。

 海寧市は上海から100qほど離れている。日本で100qと言うと遠いなーと思うが、中国大陸に暮らしていると、すぐそこみたいな感覚になってしまうから不思議だ。海寧市までは無事に辿り着いたものの、塩官鎮と違って八堡はあまり観光地化されていないせいか、案内の看板も全くなく、道中で近隣住民に道を聞きまくってやっと到着。入場料だけで30元も取られた。ウェブサイトで塩官鎮に逆流の来る時間が公開されており、今日は13:15となっている。少し手前にあることを勘案してもまだ1時間ぐらいありそうだが、既に見物客は川沿いに座り込んで潮を待っている。

ポン頭潮
 何と既に遠くを見ると微かにではあるが海上に一条の線のようなものが見える。あれが逆流の波なんだろう。軍隊が一列になって行進してくるようにも見えるが、スピードは聞いていたとおり、そんなに早くない。それでも、どんどんどんどん近づいて来て、とうとう川岸にぶつかった。ここで見る逆流は「ポン頭潮」と言い、ポンは石偏に並と書くが、ぶつかる波ぐらいの意味である。(因みに、麻雀のポンも同じ字)。中国人から「死人が出ることもあるから気を付けて」と脅されといたこともあって、「未来少年コナン」で見た大津波みたいなのが来るようなイメージを勝手に持っていたのだが、遙かに安全な波だった。その辺の見物人の呟きを盗み聞きしたところ、今年はあまり大きくないと言っていたので、まぁしょうがないかというところ。

 逆流は来てしまえば終わりなので、急いで次の観潮スポットである塩官鎮に向かう。同じことを考えている連中も結構いるらしく、川沿いの小道を車やバイクが疾走していく。川沿いに一本道を行けばいいだけなので道に迷うことはないが、道中にもそれらしき観潮施設にようなものがあるので少し迷ったが、かなり大掛かりな観潮施設と聞いていたので無視して進むと、公園のような所に出た。八堡からは約20分。ここが塩官鎮の観潮公園である。

塩官鎮の一線潮
 流石にメインの観潮スポットだけあって、見物客は八堡よりも多く、スタンドが設置されている等、施設も整備されている。それにしても入園料50元はぼったくり。この季節だけで、普段は20元らしい。人の足許を見やがって。スタンドに座ると更に金を取られそうだったので、川岸で立ち見をすることにする。そろそろ来るぞとみんな言っているので、遠くを見てみるとやはり微かに見える程度。こっちの逆流は「一線潮」と呼ばれ、横一線に進んでいくので、ポン頭潮とはまた違った見え方をする。今年はあまり大きくなく、死人が出る程ではない。それにしても汚い水。

 付近に逆流の記念館のようなものがあり、そこで過去最大級だった時の逆流の写真等が展示されている。それを見ると、確かに死人が出るのも宜なるかなと思わないでもない。その他、抗日烈士紀念碑なんかも有りますよ。

 因みに、海寧市には皮革城という革製品の店の集まった一大ショッピングセンターがある。上海への帰り道なので立ち寄ってみたが、偽物ばっかり。



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