マザーグース第1集 解説



■マザーグースについて


マザーグースは、イギリスやアメリカの童謡を集めたものです。

日本でいえば、江戸時代頃から、盛んに出版されるようになりました。 その表紙にガチョウに乗ったおばさんの絵が描かれていました。 そこから、一般に「マザーグース」と呼ばれるようになったそうです。

マザーグースに集められた童謡は、誰かえらい人が選んだものではありません。 昔の人々が、なじみ、親しみ、親から子へと伝承してきたものです。 何百年も言い伝えられていくうちに、形を変え、付け足されてきました。

■朗読:マザーグース

マザーグースは、しゃべり言葉の文化です。 英語の持つ、リズムや音の楽しさと美しさがいっぱいつまっています。

そのよさを、思う存分楽しみながら、英語の力をつけていきたい。 そうした気持ちから、このシリーズでは、マザーグースを「歌う」のではなく、「朗読」しています。 それは、ちょうど、おとうさんやおかあさんが、ベッドで子供に絵本を読み聞かせてあげるときの読み方なのです。

■マザーグースと英語文化

マザーグースは英米では、nursery rhyme と呼ばれています。 日本語にすると「童謡」です。 一口に「童謡」といっても、実に多彩です。
  • melody(旋律)
  • riddle(なぞなぞ)
  • song(歌)
  • lullaby(子守唄)
  • poem(詩)
  • jingle(言葉遊びの詩)
  • prayer(お祈り)
などなど、人々の暮らしに結びついた「ことば文化の集まり」なのです。

英米の小説や映画には、しばしば、マザーグースの一節や登場人物が使われます。 「不思議の国のアリス」に出てくる「ハンプティ・ダンプティ」もその一つです。

また、食料品店の名前が「The Jack Sprat Stores」だったり、新聞記事の見出しに「Relax, Mrs. Sprat(安心なさい、スプラット婦人)」とあって、脂肪の取りすぎと乳癌との関係は薄いという研究結果が報道されたりしています。

マザーグースを知ることで、英語がもっと身近に、もっと楽しくなることでしょう。


  • nursery: 保育所や子供部屋のことです。
  • rhyme: 脚韻、押韻のことです。詩の行の終わりを同じ音で終わらせます。





■製作・著作


  • 訳文・解説:諸星蝸牛
  • 絵 :Bac Rojin
  • 朗読:Heather Mathieson
  • 編集:田淵龍二
  • 製作:ミント学習教室
この出版物とMediaCDに収録されているすべてのデータ(文章、絵、ファイルなど)は、著作権法により保護されています。




■マザーグース第1集 解説 目次


このCDには、マザーグースのよく知られているもののなかから24首を選んで収録しています
  1. Baa, baa, black sheep
  2. Here we go round the mulberry bush
  3. Hey diddle diddle
  4. Hickory, dickory, dock
  5. Humpty Dumpty sat on a wall
  6. Hush, little baby, don't say a word
  7. Hush-a-bye baby, on the tree top
  8. Jack and Jill went up the hill
  9. Jack Sprat could eat no fat
  10. Little Boy Blue, come blow your horn
  11. Little Jack Horner
  12. Little Miss Muffet
  13. Mary had a little lamb
  14. Old King Cole
  15. Pat-a-cake, pat-a-cake, baker's man
  16. Pussy cat, pussy cat, where have you been?
  17. Sing a song of sixpence
  18. Sneeze on Monday, sneeze for danger
  19. There was an old woman who lived in a shoe
  20. This little pig went to market
  21. Three blind mice, see how they run!
  22. Three little kittens
  23. Twinkle, twinkle, little star
  24. Two little dicky birds





■Baa, baa, black sheep


雪のように
白くて、ふわっとしているひつじの毛並み
うちの牧場は、みんな上等だ
それなのに、一匹だけ黒っぽくて
ごわっとしたのが、いたりする

やっかいものの black sheep
市場に出しても、売れやしない

   「black sheep 君、毛糸は取れないね」
とつい冷やかしてしまう
負けずに、black sheep は言い返す
   「うちの旦那と、奥さんは
   僕の毛糸を使うんだい
   それに、近所の坊やもね」

  • black sheep
    黒い毛ひつじのことです。集団のなかのはずれ者で、やっかい者という意味にもなります
  • lane
    狭い小道、通路のことで、たいていは田舎道です
  • rhyme(韻)
    wool ⇔ full
    dame ⇔ lane





■Here we go round the mulberry bush


手足も凍える、寒い朝
霜が降りた大地を、さくさくと
踏みしめながら、ふたり、三人
子どもたちが、集まってくる

まわれ回れ、くわの木のまわりを
手をすり合わせ、たたき合わせ
振りまわしては、突き上げて
まわれや、まわれ
まわるほどに、体があたたまってくる

  • Here we go round ・・・
    日本では、「おしくらまんじゅう、押されて泣くな・・・」と言って、寒い日に遊びますね。
  • mulberry
    葉は、カイコのえさとなり、ぶどうのふさをきゅっと縮めたような。赤黒い実がなります





■Hey diddle diddle


しんと張りつめた月明かりのなか
一人で、こころを澄ませていると
得体の知れないものの怪の気配

かすかに聞こえるのは、バイオリンの音色か?
どすんとゆれるのは、雌牛のジャンプか?

ポチがニタニタ、わははと、笑い出すと
食器もガチャガチャ、飛び出した

  • fiddle
    バイオリンのくだけた言い方です。diddle にも、fiddle にも「人をたぶらかす、ペテンにかける」という意味があります。
  • rhyme(韻)
    diddle ⇔ fiddle
    moon ⇔ spoon





■Hickory, dickory, dock


草木も眠る、丑三つ時
起きているのは、ネズミと時計
時計とネズミだけが起きている

そんな時間に、ふと目がさめた
さめたとたんに、時計がなった
ぼん、ぼん、ぼんと、時計がなった

  • Hickory, dickory, dock
    時計の振り子と歯車が時を刻む音です。ふつうは「tick-tack, tick-tick, tick-tock」などと表現しています。
  • rhyme(韻)
    dock ⇔ clock





■Humpty Dumpty sat on a wall


ふんぞり返ったへいの上
転がり落ちたらおしまいだ

ぐしゃっと割れてしまったら
だれにも、もとにはもどせない

なんとも、あいつは、卵だった

  • rhyme(韻)
    wall ⇔ fall





■Hush, little baby, don't say a word


ぼうや、よいこだ、ねんねしな
しずかにねていてくれるなら
あれでも、これでも、なんでも買ってあげるから・・・

ダイヤを買ってあげるより
おしめを替えてあげさへすれば
ぼうやはしずかになるんだよ

  • hush
    「シーッ、静かに」というときに使う言葉です。
  • mocking bird
    「ピョッピョッピョッ、テュテュテュ」と、きれいな声で鳴く、ひよどりくらいの大きさの小鳥です。
  • rhyme(韻)
    word ⇔ bird
    sing ⇔ ring
    brass ⇔ glass
    away ⇔ today





■Hush-a-bye baby, on the tree top


さわやかな風が、ゆらゆらと
おかげで、ぼうやは、すやすやと
今のうちだよ、コーヒーブレイク

ほっと一息、目を離したすきに
ゆりかごもろとも、まっさかさま

こんな子守唄を聞かされては
おちおち、眠っておれません

  • hush-a-bye (hush-a-by)
    「静かにおやすみ」という意味、寝かしつけるときに使います。
  • rhyme(韻)
    fall ⇔ all





■Jack and Jill went up the hill


ジャックとジルの兄弟が、お母さんのお手伝い
なかよくならんで、水汲みに

行ったはいいけど、すってんころり
頭をごつんと、打ちつけた

気の合う二人は、転ぶのもいっしょ
あとからジルも、すってんころり

  • a pail of water
    バケツに一杯の水です。
  • crown
    普通は「王冠」のことですが、ここでは、頭のてっぺんと言うことになります。
  • rhyme(韻)
    Jill ⇔ hill
    down ⇔ crown
    water ⇔ after
    got ⇔ trot
    Dob ⇔ nob
    vinegar ⇔ paper





■Jack Sprat could eat no fat


やせっぽちのだんなに、でぶっちょの奥さん
だんなは、脂身がきらいで、食べられない
奥さんは、赤身がきらいで、食べられない

残したお皿を、取りかえっこすれば
けっきょく、ふたりで、たいらげた
きれいさっぱり、たいらげた

奥さんますます、でぶっちょに
だんなはますます、やせっぽち
それでも、ふたりで、たいらげる

  • fat
    ここでは脂身のことですが、でっぷりと太っている様子をあらわす言葉です。
  • lean
    ここではカロリーの少ない赤身のことですが、贅肉のない、筋肉質の様子をあらわす言葉です。
  • rhyme(韻)
    Sprat ⇔ fat
    lean ⇔ clean





■Little Boy Blue, come blow your horn


山の夕暮れは、早くやってくる
どうしたわけだか、放牧のひつじがまだ帰ってこない
行って見ると、まだのんびりと草を食んでいる

おいおい、ぼうずはどこ行った
もう日が暮れるというのに、どこ行った
笛吹かなきゃいけないというのに、どこ行った

なんとも、わら山でいねむりだ
たたき起こせだって? わたしゃ、やだね
無理に起こすと、わいわい、寝起きが悪いんだから

  • horn
    ここでは、角笛のことですが、動物の角を表すことばです。
  • haycock
    円すい形に積み上げた、わら山のことです。hay が干草、cock が円すい形をあらわしています。
  • rhyme(韻)
    horn ⇔ corn
    sheep ⇔ asleep
    I ⇔ cry





■Little Jack Horner


今日はたのしいクリスマス
年に一度のクリスマス

一人ぼっちのジャック君
道端に、すわって静かに、イブの夜

いい子だよ、君はとってもいい子だよ
自分で、自分をほめてやる

  • thumb
    親指のことです。親指は、他の指と比べて、短く太く、他の指から離れて、向きあわせになるので、特別の名前がついているのです。
  • rhyme(韻)
    Horner ⇔ corner
    thumb ⇔ plum
    pie ⇔ I





■Little Miss Muffet


ぽかぽかあったか、春の日差し
うきうきうかれて、戸外でおやつ

緑のじゅうたんに、よっこらしょ
さっそくおやつを食べ始めると

なにやらごそごそやってくる
きらいなくもがやってくる

  • frighten
    人を突然びっくり仰天させるという意味です。
  • rhyme(韻)
    Muffet ⇔ tuffet
    whey ⇔ away
    big spider ⇔ beside her





■Mary had a little lamb


生まれたばかりの子ひつじ一頭
メリーちゃんが世話係です

えさやり、水やり、散歩に、ブラッシング
うんちの片づけから、寝床の用意まで
メリーちゃんが心をこめて世話します

  • lamb
    子ひつじのことです。
    日本では、動物の子供は、たいてい、子猫、子犬、子馬などと「子」をつければよいのですが、英語では、言葉そのものが違ってくるものがたくさんあります。たとえば、
    • cat - kitten
    • dog - puppy
    • horse - foal
    • cow - calf
    • sheep - lamb
    • goat - kid
    • rabbit - bunny
    • hen - chick
    などです。でも、こうした言葉がない動物の時には、baby や young をつけます。
    • elephant - baby elephant
    • gorilla - young gorilla
    といった具合になるのです。

    では、ここで問題です。日本語でも親と子でことばがまったく違うものがあります。さて、なんでしょう?

    ⇒こたえ

  • rhyme(韻)
    snow ⇔ go
    day ⇔ play
    rule ⇔ school
    out ⇔ about
    near ⇔ appear
    so ⇔ know
    cry ⇔ reply





■Old King Cole


コール王様はおちゃめなおじいさん

外交、内政、人事に財政
むずかしい仕事をかたづけて
おちゃめなおじいさんに早替わり

お気に入りは酒とタバコにバイオリン
にこにこ、にこにこ、早替わり

  • merry
    陽気で愉快で楽しいという意味です。「I wish you a merry Christmas!」で使われています。
  • rhyme(韻)
    Cole ⇔ soul
    he ⇔ three
    rare ⇔ compare





■Pat-a-cake, pat-a-cake, baker's man


いっしょにあそぼう、pat-a-cake, pat-a-cake
たたいて、つきだし、pat-a-cake, pat-a-cake
右手と右手を、pat-a-cake, pat-a-cake
こんどは左手、pat-a-cake, pat-a-cake

  • pat-a-cake, pat-a-cake
    日本の「セッセッセ、パラリトセ・・・」のような、手合わせ歌です。
  • pat
    軽くたたくことです
  • prick
    突き刺すということです
  • rhyme(韻)
    man ⇔ can
    B ⇔ me





■Pussy cat, pussy cat, where have you been?


うちのかわいいネコちゃんは
町までお出かけ、何をしに
評判の高い、女王様を一目見に

やってきました、ロンドンのお城
忍び込んだは、女王様のお部屋
すてきなドレスに、かがやく冠
りっぱな王座にそりかえる

かわいい声で、家臣をしかる
そのスカートの下から、ネズミがちょろり

  • pussy
    赤ちゃん言葉で、ネコのことです
  • pussy cat
    かわいいネコちゃんということです。かわいい女性に呼びかけるときにも使います。
  • rhyme(韻)
    been ⇔ queen
    there ⇔ chair





■Sing a song of sixpence


きょうは、王様の誕生日
誕生パーティー、なに出そう

おいしいものなら、食べ尽くしている女王様と
おいしいものより、お金がすきな王様の
ふたりに、お似合いの一品は
これしかないと、料理番が知恵しぼる

ひとにぎりのライ麦で
こんがり焼いた、パイの中
あけてびっくり、パイの中

  • sixpence
    昔のイギリスの6ペンス銀貨のことです。日本円にすると今の数十円くらいになります。
  • blackbird
    クロウタドリ。「ピーヒョ、ピーヒョ、ピピピヒョー」ときれいな声でなきます。
  • rhyme(韻)
    rye ⇔ pie
    sing ⇔ king
    money ⇔ honey
    clothes ⇔ nose





■Sneeze on Monday, sneeze for danger


むすめ16、花ならつぼみ
ひとつくしゃみが、でるたびに
期待と不安に、ゆれうごく

はくしょん、水曜、きっとあの人から手紙が来るわ
はくしゅん、金曜、しまった、きょうは金曜
はくしゃん、土曜日、あしたがたのしみ

  • sneeze
    くしゃみをするという意味です。くしゃみは縁起が悪いとされ、くしゃみをした人には「God bless you!」と言ってあげます。
  • rhyme(韻)
    danger ⇔ stranger
    letter ⇔ better
    sorrow ⇔ tomorrow





■There was an old woman who lived in a shoe


まいとし、毎年、子供が生まれ
気づいたときには、もうおばあさん

大きな子供は、巣立ったけれど
ちっちゃな子供が、まだ11人

まいにち、毎日、おおさわぎ
気づいたときには、もう日暮れ

大きな声で、叫んでみたけど
ちっちゃな子供は、逃げ回る

こんなことなら、大きな子供を残しとくんだったわい
さすがのおばあさんも、ためいきついた

  • whip
    むちで打つという意味です。馬にむちをあてて走らせるようなときに使います。
  • rhyme(韻)
    shoe ⇔ do
    bread ⇔ bed





■This little pig went to market


明かりを暗くして、お休みの時間
きょうは、どんなことがあったかな

この子は、お買い物
この子は、留守番
この子は、おいしいものいっぱい食べたけど
この子は、ぺこぺこ
そしてこの子は、迷子になっちゃって・・・

ぼうやの今日はどうだったかな

  • This little pig
    「This little pig ・・・」と言って足の指を指差しながら、話が進んでいきます。





■Three blind mice, see how they run!


農家のかみさん、気丈夫でなけりゃ
ネズミなんかに、負けてられない

わが物顔の、ネズミを追いかけ
捕まえては切り、切っては追いかけ
しっぽを全部ちょん切った

  • mice
    ネズミのことです。1匹だと mouse ですが、2匹以上の時には mice と言います。
    そこで問題。このように2匹以上になると言い方が変わる動物、他にいますか?

    ⇒こたえ

  • rhyme(韻)
    wife ⇔ knife ⇔ life





■Three little kittens


わんぱくざかりの、子猫たち
なにをやっても、「おばかさんね」と言われてしまう

手袋なくして、「悪いこね」
なくした手袋見つけても、「おばかさんね」
手袋汚して、「いたずらっ子ね」
汚した手袋洗ったら、やっと、「いい子だね」

なにか、ごほうびもらえるのかなと思ったら
「ネズミがいるわよ」と、はぐらかされた

  • mitten
    親指以外の4本の入るところが一つになっている手袋のことです。5本指の手袋は「glove」と言います。
  • rat
    ネズミのことです。mouse はドブネズミのような大型のネズミ、rat はハツカネズミのような小型のネズミです。
  • rhyme(韻)
    kittens ⇔ mittens
    dear ⇔ fear
    dear ⇔ here





■Twinkle, twinkle, little star


気の合うふたりで、見あげる夜空
まっくらやみに、きらきらと
かがやく星を、見ていると
こころも、からだも、すっとする

  • twinkle
    きらりと光ると言う意味です。うれしくて目がきらっと光るときにも使います。
  • rhyme(韻)
    star ⇔ are
    high ⇔ sky
    gone ⇔ upon
    light ⇔ night
    dark ⇔ spark
    go ⇔ so
    keep ⇔ peep
    eye ⇔ sky





■Two little dicky birds


決まって朝にやってくる
二羽の小鳥は、ピーターとポール

いつものへいにちょこんととまり
お羽の手入れや、話しにむちゅう

どっちがピーターで、どっちがポールか
名前をつけたときから、区別がつかない

「飛んでけピーター」
ほらあれがピーターなんだよ

  • dicky bird
    子供のことばです。little bird のことで、小鳥をあらわしています。














































ニワトリ − ひよこ
かえる − おたまじゃくし
とんぼ − やご

まだほかに、4本足で走り回る動物がいるよ ⇒こたえ




















































いのしし − うりぼう



















































ガチョウです  goose − geese

では、体の一部では? ⇒こたえ




















































足と歯でした
foot − feet
tooth − teeth