2017/01/06 ウェブ授業で出版社と合意
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ミント音声教育研究所は、ウェブ授業の実現に向けて出版社と合意し、⇒ガイドラインの背景で紹介する研究授業のためのガイドラインを制定した。
ガイドライン本文はこちらから入手できる。
教科書ウェブ活用研究の企画書はこちらに公開している。
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もくじ |
- ガイドラインの理念
- ウェブ授業システムの概要
- ウェブ授業の特徴と効果
- ウェブ化された教科書のサンプル
- ガイドラインへの賛同者を募集
- ガイドラインの背景
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ITを使って効果的な授業運営を行う環境を整えるために、先生と出版社とウェブ運営者が協力する体制を構築することを目指す。
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本ガイドラインで行うウェブ授業システムは、語学教科書とその音映像をウェブ化して、eラーニングを行う電子教科書である。
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- 教科書をデジタル化し、
- 字幕をつけてウェブ化したものを、保護されたサイトにアップする。
- ウェブ上のチャンク・プレーヤーTalkiesから、IDとPWで教材にアクセスする。
このシステムを実現するうえでの困難は、主に最初の (1) にあり、そのひとつが著作権の扱いと字幕の作成にあった。今回のガイドラインは、このふたつを同時に解決する道筋を与えることなった。
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ウェブ化された教科書(Reading Pass 2/南雲堂)
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ウェブ授業の効果や特徴はさまざまであり、それを研究するために授業実践を2年計画ではじめている。昨年春から行った先行的授業実践によれば、以下のような点が上げられる。
- 教科書がそのまま電子化されている.
- 特定の技能専用ソフトではないので、リーディング、リスニング、スピーキング、ライティング、発音、文法、語彙など総合的な目的で運用できる.
- 教材が音声と字幕つきで提示される.
- 音と文字と意味が同期するので、内容理解が速く進み、英語(表現や発音)に集中できる.
- 学校でも、家庭でも、通学中でもアクセス可能である.
- 自動問題作成機能により、クローズテスト(穴埋め)演習が使える.
- 一斉授業での講義から個別訓練へと、滑らかな授業運営ができる.
- 付属のアンケート機能が使える.
- リアルタイムでの学習状況の把握や生徒の意見を回収閲覧できる.
- 汎用的なウェブ・プレーヤーである.
トーキーズによるウェブ授業の先行的授業実践例を紹介したシンポジウムの記録が、以下のページに掲載されている。
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新年度に向けて、ウェブ教科書のサンプルが公開され、以下の手順で試用できる。
- ⇒Talkies を開く
- 左上の library をクリック
- 右やや上の public library をクリック
- 開いた小窓にIDとPWを入力
- ID=8kWpwHan
- PW=minamikumo
- メニューから 再生ボタンをクリックして鑑賞する
図入りの案内はこちらから
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翌年の新学期に間に合わせるためもあり、昨年秋の約1ヶ月少々でLET(外国語教育メディア学会)の賛助会員となっている出版社8社に趣旨を説明したところ、条件付ながら3社の賛同を得た。
- −匿名 / 協力する
- 南雲堂 / 協力する(ウェブ化推薦教材あり)
- 金星堂 / 教材、学校名、先生名、採用部数などが明確になれば対応できる。
- −匿名 / 英文提供は個別の権利確認が必要。和訳はない。
- −匿名 / 検討する(著作権協会に一任)
- −匿名 / ウェブ利用は個別の権利確認が必要。
- −匿名 / 未回答
- −匿名 / 未回答
3社のうち利用可能な教材提供をおこなった南雲堂と協議を重ねて、ウェブ授業ガイドラインの策定にこぎつけることができた。
このウェブ授業ガイドラインに賛同し、提供可能な教材をお持ちの出版社、あるいはウェブ授業を希望する先生の募集を開始した。
対象: 提供可能な教材を持つ出版社、ウェブ授業を希望する先生.
条件: 教科書ウェブ活用研究 と ウェブ授業ガイドライン に賛同する.
賛同される出版社、お使いの教科書でのウェブ授業を希望される先生は以下のアドレスにご連絡ください。
E-Mail:tabuchiryuji@nifty.ne.jp
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ミント音声教育研究所の田淵が、昨年(2016年)6月LET 関東支部 研究支援プログラム研究に
と題する研究を応募し、採択されたが、研究支援プログラム担当者より
- 研究の中で扱われる音声情報等の著作権についてである。教科書の音声情報をネットワーク上で公開し、教師や学習者に情報配信する際に、著作権者の権利を保護するために、どのような明確な手立てが講じられているか説明が必要である。
との再検討を求められた。そこで
- 著作権者の権利を保護するための、明確な手立てが講じられている。教材が置かれたサーバーへのアクセスには、担当教師が開設した専用のアカウント(IDとパスワード)が必要である。
と解答したところ、再び
- 教材の二次利用に関して、単にアクセス制限の有無という対応だけではなく、教材の著作権者である出版社から、その利用に関する承諾を事前に得ていただくようご対応
を2週間以内に行うよう求められた。添え書きには
- 大変厳しい判断かと思いますが、著作権という難しい問題に関連することですので、ご理解いただければ幸いです。
とあった。
その後、共同研究者と出版社の協力を得て無事に最終採択となったが、プログラム担当者の苦慮がうかがわれ、申し訳ない気持ちとともに、いくつか気付かされることがあった。
- 長年運営されてきた学会、特にITメディアに特化した語学学会でありながら、教育現場における著作物(ここでは語学教科書)の扱いについて、共通認識が形成されていないのだろうか?
- IT社会でありながら、生徒が購入した教材を有効利用するのに、一々出版社の許諾を必要とするのは、果たして、「著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。」と言う著作権法の精神に即しているのだろうか?
- 語学教科書をウェブ化して、反転学習や個別学習に利用した場合、そのことによって出版社は本当に経済的損失を被ることになるのだろうか?
- 教育のIT化が始まろうとする2004年に発表された「学校その他の教育機関における著作物の複製に関する著作権法第 35 条ガイドライン」から10年以上経ち、現状と法律(あるいは解釈、運用)のずれが大きくなっているのではないか?
しかし、政治を動かすのは、時間がかかる。実際、2004年のガイドラインにしても、政府の肝いりで行われた権利者と利用者による2年がかりの協議にも関わらず合意を得ることに失敗し、権利者側からの一方的なガイドライン発表となっている。
そこで、まずは現場から動いていくことにして、今回のウェブ授業ガイドラインの発表となった。
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2017.01.06 田淵龍二
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