Written by Sari Furuya

この本は、単なる猫の飼育書ではありません。
猫が好きで、それだけに、いつのまにか違った方向に逸脱してしまいそうな自分を、初心に戻してくれます。「猫自体」。猫という生き物自体を、愛し、敬い、尊重し、守り、癒される。そんな同じ目の高さから語った一冊です。キャットショーやスタンダードについて、痛烈に皮肉った、著者独特のブラックユーモアには、思わず吹き出してしまいますが、その文章の裏に隠れた著者の溢れんばかりの猫への愛情が、自分を原点に戻してくれるような不思議な力を与えられます。


そのほんの一部をご紹介いたしましょう。

〜猫と犬の違い〜

 犬は群居動物。猫は個人主義者。

 犬はリーダーを求め、権威と力に従う。人間は犬の主人にはなれるが猫に対しては同居人にとどまる。ただし、良き同居人として愛される望みは大いにある。

 犬は人間が多少出過ぎた真似をしてもがまんしてくれる。猫の堪忍袋はトカゲの尾のように切れやすい。

 人間の過保護を犬は「思いやり」と取り、猫は「おせっかい」とみなす。

 犬は不自由と風雪に黙々と耐え忍ぶ。

 猫は風雪にされされても自由を求めて生きる。

 犬は崇拝し、猫はただ愛する。猫の愛情表現は犬にくらべると地味でつつましい。

 犬はお使いに出かけ、新聞を運び、車や家の番をし、盲人を導き、おぼれる子供を助け、隠されたマリファナをかぎ出し、サーカスで自転車をこぐ。

 猫は眠り、食べ、遊び、小動物を狩り、敵や危険が迫るとすばやく身を潜(ひそ)め、必要とあれば獰猛(どうもう)な戦士となり、戦いが終わると食べてはまた眠る。

 老猫の世話に必要なのは無限の愛情と有限の干渉。

 老境にさしかかった猫の暮らしは、飼い主の管理ひとつで暖かい炉辺にもなれば味気ない砂漠にもなる。

 人の伴侶として愛されながら、ふつうは人よりもずっと早く生涯の黄昏を迎え、去って行く猫たち。穏やかな入り日のぬくもりを、できるだけ長く楽しんでほしい。静かに寄り添い、守り、力づけてやろう。


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