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写真伝心 18 見る写真、見せる写真 前ページ 
 旅の写真や家族の記念写真を見ると、撮影したときの情景が思い出され、懐かしさがこみ上げてきます。それは写真に写っているものだけでなく、その時の様子が立体的に思い出されるためだと思います。しかしこの写真を他人が見てもあまり興味を示さないでしょう。

 写真展に展示する写真も同じことが言えます。作者は気に入って、すばらしいと思っていても、他人にはつまらなく見えることがあります。それは「見る写真」と「見せる写真」が違うからだと思います。旅の写真や家族の記念写真は本人や家族が「見る」ことが目的ですが、写真展の写真は他人に「見せる」ことが目的なのです。

 写真展などに写真を展示する場合には、通常は説明抜きで、第三者が写真と向き合うことになります。いつも撮影者がそばにいて説明をする訳ではありません。見る人は写真という範囲の限られた四角の平面を見ているだけです。撮影時の状況も何も知らない人が見ているのです。写真を通して、いかに撮影者の思いを伝えるかの真剣勝負です。ここでは「見せる写真」が求められます。

 撮影者は撮影現場の情報をたくさん持っています。その場の雰囲気、風の音、鳥の声、遠近感、周りの風景、時間の経過、現場への道のりなどです。さらにそこに撮影者の「思い入れ」が加わり、そして自分が分かっているものは他人も分かるだろうと錯覚してしまいます。しかし、こうしたものはほとんどが見る人には伝わりません。

 写真を見る人に撮影者の意図や感動を伝えるためには、「見せる写真」として、主題をはっきりさせ、分かりやすく表現するとともに、見る人の立場からもう一度写真を見直すことが必要と思います。撮影者は写真を見てくれる人も、自分と同じ岸に立っていると思いがちです。しかし、見る人は向こう岸から見ているのです。

 撮影者の感動を見る人に伝えることは、大変難しいことだと思います。見る人にどれだけくみとってもらえるかが大切だと思います。これからも自己満足に陥らず、「見る写真」「見せる写真」を楽しんで行きたいと思っています。