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性本能と原爆戦
PANIC IN YEAR ZERO

米 1962年 95分
製作総指揮 ジェームズ・H・ニコルソン
      サミュエル・Z・アーコフ
監督 レイ・ミランド
脚本 ジェイ・シムス
   ジョン・モートン
音楽 レス・バクスター
出演 レイ・ミランド
   ジーン・ヘイゲン
   フランキー・アヴァロン
   メアリー・ミッチェル


 いやはや、物凄い邦題をつけられてしまったものである。大蔵貢さんは判りやすいタイトルを好んだので(例えば『明治天皇と日露大戦争』『憲兵とバラバラ死美人』『生首奉行と鬼大名』等)、これも彼の命名によるものだろうが、それにしてもあんまりだ。「性本能」の部分は、主人公の娘が愚連隊に犯されるところだけだからである。しかも、暗示しているだけで、直接的な描写はない。エッチな映画を想像して大蔵映画のチェーン館に足を運んだ野郎どもがカックンとうなだれるさまが眼に浮かぶ。

 邦題のインパクトだけが先行し勝ちな作品であるが、中身もなかなかなものである。『西暦0年のてんやわんや』という原題の通りに、原爆戦後の文明リセット状態における生存競争をシリアスに描いている。


 キャンピング・カーで小旅行を楽しむ筈のレイ・ミランド一家は、途中でとてつもなく巨大なキノコ雲を目撃する(左写真上)。しかし、爆風はない。そよ風さえも吹いていない。核兵器に対する認識不足がありありな描写であるが、この映画は放射能の恐怖を描くことが目的ではないので、ここは眼をつむる。
 第三次世界大戦が勃発し、世界中の主要都市が全滅したことをラジオで知ったミランドは「私たちだけはなんとしてでも生き残らなければならない」と家族に向って高らかに宣言。食料や銃を大量に買い込み、小切手での支払いを拒絶されるや銃で脅してトンズラする。バリケードがあれば突き破り、渋滞で横断できなければガソリンをぶちまけて火をつける。当然に大惨事となるが、そんなことはかまわない。そして、橋を壊して自分たちだけ助かろうとするのである。
 予告編から、暴徒から家族を守る親父の話かと思っていたら、こいつらの方が暴徒だった。

 このワイルドな作品を監督したのは主演のレイ・ミランド本人。アカデミー主演賞も受賞した名優だが、ロジャー・コーマンと出会ったことからAIP映画にどっぷりとハマり、こうして監督業にも進出することになるのである。


関連人物

サミュエル・Z・アーコフ(SAMUEL Z. ARKOFF)


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