なんだか場末のピンク映画のような禍々しいタイトルで、いやらしいことを想像しちゃいがちだが、まったくそんな映画じゃないよ、お立ち会い。殺されるのはあくまで一流のファッション・モデルで、温泉街のヌード・スタジオのそれじゃござんせん。
本作は巨匠マリオ・バーヴァによる、いわゆる「ジャーロ=イタリア製の殺人映画」の先駆となった作品である。このたびDVD化されたのを機に再見して、その先見性に改めて感心した次第。やがてダリオ・アルジェントへと至る「ジャーロ」の特徴すべてがここで既に完成されているのだ。
胡散臭い登場人物たち。
残酷な殺人。
黒手袋にコート、それにマスクの殺人者。
複雑な物語と不可解な謎解き。
要するに、バーヴァがここでやったのは、物語を犠牲にして、殺人そのものを華麗に見せる。これに尽きる。そのことを高らかに宣言しているのがオープニング・タイトルである(左写真)。俳優たちが原色の照明と共に、幻想的に紹介されていく。あまりに美しすぎて息を飲む。撮影出身のバーヴァによる「テクニカラーへの挑戦」といった趣きだ。
そして、この配色の妙をも含めてバーヴァの粋を踏襲したのが、他ならぬダリオ・アルジェントなのである。『サスペリア』を思い出して頂きたい。左の配色にそっくりではなかったか?。
しかし、『サスペリア』の世界的大ヒットでアルジェントが「イタリアン・ホラーの帝王」と称されていた頃、バーヴァはというと『サスペリア』の二番煎じの『ザ・ショック』を撮らされていた…。新旧交代の憂き目に遭っていたわけだが、我らがアルジェントは「心の師匠」を邪険にしないよ。ハリウッドに招かれて撮った『インフェルノ』冒頭の水中撮影でバーヴァ御大の監修を仰ぎ、御大の死後は息子ランベルト・バーヴァの面倒を見てやって『デモンズ』とかいろいる撮らせてあげている。
ああ見えても結構イイ奴なのだ。
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