ノースダコタ州ナイアガラ在住のユージン・バトラーは世捨て人の変人だった。生前は殆ど人と言葉を交わすことはなく、1906年に精神異常と診断されて癲狂院に収容される。そこで1913年に死亡した。
2年後、彼の自宅が取り壊された際、トンデモないものが発見された。床下に6つの骸骨が埋まっていたのである。いずれも男性で、頭蓋骨を叩き割られている。5体は成人、1体は15歳から18歳までの少年と推定された。床には隠し扉があり、そこから突き落とされて埋葬されたわけだが、しかし一体何でまた?
被害者の身元は判らずじまい、証人もない中で警察はこのように推理した。被害者はおそらくバトラーが農繁期に雇った臨時の人足なのだろう。そして強盗か何か悪事を働こうとしたために、雇い主の逆襲に遭って殺されたのではないだろうか、と。
結局、動機が判らぬままに本件は閉じたわけだが、今日では性犯罪の可能性が指摘されている。つまりユージン・バトラーは、少年たちを犯した上に殺害し、床下に埋めたジョン・ウェイン・ゲイシーの先駆ではないかというのだ。あり得ない話ではない。
しかし、私にはもう一つの可能性もあるように思える。吝嗇ゆえの殺人である。本件と時を同じくする頃、カリフォルニア州サクラメントでジョセフ・ブリゲンという男が逮捕された。しみったれのこの男は人足に給金を払うことを惜しむ余り、これを殺害して豚の餌にしていたのである。ユージン・バトラーもしみったれが故に人足を殺していたのではないだろうか?
いずれにしても、本件の謎が明らかになることはないだろう。
(2009年1月22日/岸田裁月) |