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クラウス・ゴスマン
Klaus Gosman
a.k.a. The Midday Murderer (西ドイツ)


 

 連続殺人犯の中には己れの犯行を様式化する者がたまにいる。「こだわり」というやつなのだろう。例えば、ポーランドのルツィアン・スタニアクは国民の祝日を選んで犯行に及び、
「葬式のない祝日はない」
 との手紙を当局に送りつけた。
 己れの犯行を様式化する者は理性的だ。ロバート・K・レスラーの云う「秩序型」というやつである。衝動を抑制し、計画的に行動する。その典型例がこのクラウス・ゴスマンだろう。「正午の殺人者」と呼ばれたこの男は、必ず正午きっかりに犯行に及んだ。ニュルンベルクの教会の鐘がけたたましく鳴り響くちょうどその時に合わせて発砲したのである。銃声を誤魔化すためだ。スタニアクの「国民の祝日」よりも遥かに合理的な理由に基づいている。

 しかし、犯行の動機となるととんと合理性を失う。第二次大戦中の1941年に生まれた彼は、子供の頃に父親が米兵に射殺されるのを目のあたりにし、以来、死に対する強迫観念を募らせて行ったと語ったが、それがどうして無差別殺人に結びつくのか、その因果関係が判らない。戦時下では目の前で肉親が殺される者は大勢いるが、そのすべてが殺人者になるわけではない。ゴスマンが殺人者になったのには、まだ明かされていない特別の理由がある筈だ。

 いずれにしても1960年から65年にかけて、正午きっかりに7人を射殺したゴスマンは、最後の銃撃の直後に捕らえられて終身刑に云い渡された。その日記には女優エルケ・ソマーの誘拐計画が綿密に書き綴られていたという。実行されなくて幸いである。


参考文献

『連続殺人紳士録』ブライアン・レーン&ウィルフレッド・グレッグ著(中央アート出版社)


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