1963年に大蔵映画が配給した『死体解剖記』という映画がある。『吸血ゾンビ』のジョン・ギリングが脚本監督を担当した英国お得意の怪奇映画だ。
舞台は19世紀初頭のスコットランドはエジンバラ。まだ解剖学が異端とされていた頃、ロバート・ノックス博士(ピーター・カッシング)は研究に必要な遺体を「復活屋(resurrectionist)」と呼ばれる連中から調達していた。この「復活屋」とは、要するに墓荒らしのことである。墓から屍体を盗み出し、それを売るのだ。
バーク(ジョージ・ローズ)とヘア(ドナルド・プレザンス)も「復活屋」を生業としていた。ところが、この商売もやり辛くなってきた。遺族が監視していることが多くなり、新鮮な屍体がなかなか手に入らないのである。
そこで小ズルい2人は閃いた。鮮度が高いほど客は喜ぶ。ならばいっそ、自分たちで屍体を作ってしまったらどうだろう…。
かくして、酔っぱらいや浮浪者等、いなくなっても誰からも文句を云われないような連中が2人の犠牲者となった。ところが、ノックス博士の弟子とその恋人にまで手を出したばっかりに、2人の犯行は発覚するのであった…という物語だ。
以上は実話をモチーフにしている。しかし、犯行発覚のきっかけは若干事実と異なる。マリー・パターソンという売春婦がそもそものきっかけである。彼女の遺体が解剖台に運ばれてきた時にいた学生の1人が、彼女の常客だったのである。
1829年1月27日、ウィリアム・バークは13件の殺人容疑で有罪となり、絞首刑に処された。一方、相棒のヘアはというと、バークを売ることで不起訴となった。どこまでも小ズルい男である。
2人にまんまと騙されたノックス博士はというと、世間からアホ呼ばわりされて大学を去った。アメリカに渡った後、旅回りの芸人になったという噂もあるが、本当かどうかは判らない。
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