アカコッコ
和名:オオミズナギドリ 英名:Streaked Shearwater
 御蔵島ではカツオドリ、あるいはカツウドりと呼ばれる大型の海鳥。和名はオオミズナギドリですが、御蔵島では是非カツオドリと呼びたい。オオミズナギドリという和名はあくまでも生物学上の分類。旅人たちはむしろその土地の人が大切にしてきた文化も含めて自然体験したいものなので、あえてカツオドリと呼びたいのだ。島のお年寄りにあったら是非、カツオドリってどんな鳥って聞いてみたい。
 カツオドリは春になると御蔵島にやって来て、山や崖の斜面などの地面に巣穴を掘って卵を産み、子育てをします。そして10月の終わりごろになると、親鳥は子育てを終え、雛が巣立つ前に御蔵島を離れます。 でも左の写真のようにカツオドリは森の木の根元や地面に穴を開けて巣をねぐらとする。地面に穴をあけて木を枯らしすので島にとっては害鳥であり、国から年間で一定の数量の捕獲が認められている。昔から貴重な食料でもあった。
 イルカウォッチングの期間は御蔵島にはカツオドリがいるので、ぜひ見てみよう。カツオドリはカラスのいない朝早く島を飛び立ち、夜になって島にもどってくるので、日中に海で見るか、暗い時間に島の上空や森で懐中電灯で照らして見るかということになる。写真は朝、飛び立ち損なって川田橋付近の道をてくてく歩いていたカツオドリ。
2002年6月29日撮影
 飛び立つのに使われる木の根元の付近の幹表面がピックのようなもので削られたような跡ができていることがある。カツオドリのクチバシと爪のあとだ。また触ってみると分かるが、幹の上面の削られた部分はごつごつしておらず、紙やすりで研磨されたようにきれいに仕上げられている。カツオドリの足で毎日研磨されたからだ。上の写真の木の上面(左側面と下面(右側面)とでは、色やゴツゴツ感が違うのが分かるだろうか。もとは下面(右側面)のようなゴツゴツした樹皮にやや苔が生えて緑がかっていたはずだが、カツオドリが木に登り始める際に、鋭いクチバシや爪を木の幹に立てる為、樹皮が剥ぎ取られ、さらに幹が削られているのだ
 繁殖期のカツオドリの親鳥は、果たしてどこまで餌を取りに行くのでしょうか。実は遠くは北海道まで餌を探しに行く親鳥たちがいることが人工衛星を使った調査で確認されました。日本の太平洋側一帯がどうやら索餌の範囲になっているようです。山階鳥研等の調査。 八月の中旬に、御蔵島で卵からかえった雛たちは、親鳥が苦労して捕った餌をもらいつづけ、体はどんどん大きくなって行きます。しかし飛ぶ練習はしない為、あちらこちらに贅肉がつき、10月中旬には親鳥よりも体重が重くなってしまうとのことです。しかしそれからだんだんと締まるところは締まって体重が落ち、大人の体型に近づいていき、11月の初めころに親鳥から最後の餌をもらった後、一週間以上も飲まず食わずで生き延びて更に体重を落とし、巣立ちを迎えるのだそうです。この研究は"Chick Growth and Fledgling Performance of Streaked Shearwaters Calonectris leucomelas on Mikura Island for Two Breeding Seasons", Nariko Oka ,Hitoshi Suginome ,Norio Jida, Naoki Maruyama/J.Yamashina Inst. Ornithol. p39-59,Vol.34,2002 に詳しく書かれてあります
土に還るカツオドリ
 御代ヶ池までの短い探勝路は、一気に駆け下りてしまえば15分で到着してしまうほど短いですが、興味を持ってゆっくりと歩いてみると、様々な自然の営みが見えてきます。
 命を全うしたカツオドリは森のなかで土に返って行き、土を豊かにし、緑の苔の絨毯がそれを覆い包みます。そこから新しい命がまた生まれていきます。そんな静かな自然の営みを見つけました。
自然環境保全促進地域指定(2004年1月)により、御蔵島のカツオドリ(オオミズナギドリ)の営巣地が保護されることになりました!
危険と隣り合わせの帰還
 日の出前に飛び立ったカツオドリが帰ってくるのは日没後。巣穴付近に着陸するには、グライダー滑空してそのまま森に突っ込むしかない。巣穴で待つヒナに食料を運んでくるために危険を顧みずカツオドリは戻ってくる。森に突っ込んで枝に翼を引っ掛けてしまえば、翌朝の日の出にはカラスの餌食になってしまう。
「御蔵島の旅人」ホームページへ
 これはカツオドリが飛び立ちに利用している事が比較的分かりやすい木だ。幹の上面にだけコケが生えておらず、木の地肌が見えている。これはカツオドリが毎日登るために、登る面が磨り減ったのだ。ガイドなしの散歩でも行ける黒崎高尾のコースにもこうした木が何本かあるので見つけてみよう。