<堂々の茶釜の滝>
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滝百選巡り
所要時間6時間の
茶釜の滝紀行
04/10/10
有り難うございます。
ティ・タイムへ
M310topへ
以来、職場ではエレベータを減らして階段を利用し、スポーツジムでは本格的に筋トレを開始した。
地下足袋は履き慣れるのに時間がかかると言うので渓流シューズを購入し、近くの滝巡りに行って
トレーニングも行った。最後のプログラムとして、今日は、温泉でゆっくり休養する事にしている。
翌朝7時、宿の前に、ガイドの小林さん、研修中の松山さん、そして、杉田さん親子と健脚の4人が長靴を履いて集合していた。杉田さん
は、百選の滝も97滝目という滝巡りの大ベテランだった。
茶釜の滝には、体力的には楽だが危険の多い
“
沢ルート
”
と、比較的危険は少ないが急な坂道等で
相当な体力を必要とする
“
山越えルート
”
がある。明け方まで降った大雨のお陰で、体力的に心配な
山越えルートに決った。
≪茶釜の滝ルート図概要≫
盛岡で東北新幹線を後にして、花輪に向かう高速バス「みちのく号」に乗り換えたが、窓の外に
目を置いたまま、眠ることも出来ずにいる。いよいよ明日9月25日は、百選の滝の中でも、ワー
スト3に
入る難所の滝「茶釜の滝」に挑戦する日だ。どんな厳しさが待っているのだろうか・・・・
往復約6時間のコースで、多くの滝ファンが目標としながら踏み込んでいない「幻の滝?」である。
単独入山が禁止されるなど、年に十人程
しか訪れる人がいないと言われている。
インターネットで色々情報を集めてみるが、リベンジという言葉があったり、高いところを梯子で
上っている写真が掲載される等、大変な状
況を伝える内容ばかりであった。
しかし、滝百選巡りには如何しても欠かすことが出来ないので、6月末、
十和田八幡平観光協会
にガイド案内について問い合わせてみた。以下がその時の
返信メールの概要である。
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実は、鉄バシコ、ロープ、チェーン等が全て鉄砲水や雪解け水で流され、非常に危険な
状態の為、ここ数年ガイドを停止していました。今年
7月末に、これらの再整備工事に
入りますので、8月末頃にご案内できるものと思います。
しかし、とても過酷な場所で、相当の体力と技術を要する為、上級者コースとなっており、
ヘルメット、スパイク付きの長靴若しくは地下足袋
等の装備が必要です。
毎年、山菜採りやキノコ採りの方が、遭難している場所であり、熊も頻繁に出没します。
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このメールを見た多くの方から、この滝は中止するようにとの忠告を受け、流石に迷ってしまったが、まだ時間があるので参加を前提として
準備を進める事にした。
7時50分、不安と期待のスタート。
景色の良い大場谷地の木道を10分ほど進むと急な上り坂になる。往路の最初の難関で、標高差200m程を40分で登りきったが、
心拍数
は150を超え、汗が滝のように流れた。
一人だけフーフー・ハーハー言っている私を気遣うように、「ここから暫くは、長い下りですよ」と小林さんがやさしくリードしてくれる。
<いよいよスタートだ!>
途中、台風に倒された太いブナの倒木をまたいだり、くぐったりしながら、下りの山道を1H程歩いて行くと、徐々に傾斜が増してくる。鎖場
があったり、ロープを掴みながら崖を渡り歩いたりと厳しくなり始めた頃、右前方に雲上の滝を見下ろすところに出る。
<台風の被害で、このような倒木が3箇所も>
<鎖につかまり下りて行く所が随所に>
ここからが、一段と急な坂になる。鎖が無い所は、木の枝や足元の岩などを掴みながら
降る。ドロドロになった軍手を見ながら、「戻りは相当厳しいなぁ」と帰りの事が心配になってくる。
ぬかった土砂に足がすべり、僅かに触れた石がゴロゴロ転がって落下して行く。下にいる人の脇を通るのを見てほっとしながら、やはりヘ
ルメットは必要だと改めて感じた。
やっと沢に出ると山間から見た雲上の滝が、今度は正面に立って仰ぐことが出来る。落差推定60mの直瀑で素晴らしい滝である。
暫く、マイナスイオンを浴びながら休憩をとる。
<雲上の滝>
ここからは、渓流シューズに履き替えて沢歩きだ。大きな岩には鎖が張ってあり、一人一人が順に渡っていく。この岩場で少しでも足を滑らせ、バランスを崩したら大変である。山越えルートでも危険な場所が多く、
細心の注意を払いながら進む。
<滑ったら大変!全く気を抜けない。 しっかりつかまり 一人ずつ慎重に>
10分ほど沢を下ったところで、左の支流に入る。約200mで落差20m程の滝が見えた。
茶釜の滝の前にあるのだから
“
キュウスの滝
”
と言っていた
が、「茶釜の滝はこの上にあって、
ここからは未だ見えませんよ。左の方から登って行きます」と小林さんから説明があった
。
<ロープと1段目の梯子を上る>
周りを見回すと、崖に沿ってロープが下がりアルミの梯子(第一段目にあたる)が見えた。
これだ!写真で見た場所は。実際は30m程なのだろうが、すごく高く感じる。
<キュウスの滝?>
梯子の繋ぎ目が少々頼りなかったが、しっかり枠を掴んで1段目を
上って行くと、一人が立てる程の場所に出た。右側に僅かに回り込み、
更に(左の写真には写っていない)2段目の梯子を登って行く。
<2段目の梯子を上る>
そこに、人がすれ違うのに神経を使うような狭い滝見台があった。
先に着いた人が「ワァ〜!素晴しい滝だ〜」と叫んでいる。
10時40分だった
。
足元の数十メートルの断崖を挟んで落差100mの「茶釜の滝」が堂々と現れる。
滝口は右側に
飛び出すが、途中の段で岩にぶつかり正面に流れを変え、谷間に囲まれた滝壺に飛び込む。
この流れ落ちる様が茶釜に注がれる水のように見える事から
この名が付いたと言われる通り、良く見ると何処となくやさしさも
感じさせる滝
である。
暫く高台に立って、眼前に広がる雄大な景観を眺めていると、
さわやかな瀑風に押し上げられて、谷間を浮遊しているような
感覚になってくる。
難儀しながら、やっと到着した安堵感と夢を達成した満足感が、
心地よい気分にさせるのだろう。正に秘境の名滝「茶釜の滝」だ。
<岩間に囲まれた滝壺>
今までにない大きな感動を胸に、下に下りて昼食をとる事にした。
先ずは、先ほどの梯子を下るが、下を見ると目が廻りそうになる
ので、下
を見ないように足先の感覚で梯子の段を捕まえるのである。
足が上手く運べない時は、流石に緊張感が走った。やはり、ここは、高所恐怖症の人には、無理だと思った。
<下を見ずに下りる、下の人が小さく見えます>
11時45分、昼食を終えて帰路へ。誰とはなく「行きは良いよい、帰りは〜」と歌いだしたが、
正にその通りだった。こんな大きな岩を渡って
来たの?こんな急な坂だったの?と振り返りながら、
ヘトヘトになって引き返す。
先ほどの感激も忘れ、「誰がこんな大変な滝を百選に選んだのだろうか?」と恨み節も出てしまう。
<こんな所を来たの? 戻りの方がズーっと厳しい感じだなぁ〜>
途中で痛み出した膝をだましながら、標高差(推定)400m程をひたすら歩く。
結局、熊にも誰とも会うことも無く、14時30分、どろんこで無事帰還した。
ガイドの小林さん、松山さんに心から「有難うございました」と御礼を申し上げた。
杉田さんからは、「ここを制覇できたら、他の滝は大丈夫で
すよ」と激励された。
今回も、パートナーの温かさに包まれて、
梯子を上り、沢を渡り歩く等の貴重な体験が出来た最高の滝巡りになった。