02年 ワールド・カップ 雑感
今大会の順位 .
<勝点、得失点、総得点順>
1・ ブラジル
2・ ドイツ
3・ トルコ
4・ 韓国
5・ スペイン
6・ イングランド
7・ セネガル
8・ アメリカ
9・ 日本
10・ デンマーク
11・ メキシコ
12・ アイルランド
13・ スウェーデン
14・ ベルギー
15・ イタリア
16・ パラグアイ
|
過去のW杯優勝国 .
と ブラジル/ドイツの成績
[優勝] [準優勝]
1930 ウルグアイーアルゼンチン
1934 イタリア ー チェコ
1938 イタリア ー ハンガリー
1950 ウルグアイーブラジル
1954 西ドイツ ー ハンガリー
1958 ブラジル ー スウェーデン
1962 ブラジル ー チェコ
1966 イングランドー西ドイツ
1970 ブラジル ー イタリア
1974 西ドイツ ー オランダ
1978 アルゼンチンーオランダ
1982 イタリア ー 西ドイツ
1986 アルゼンチンー西ドイツ
1990 西ドイツ ー アルゼンチン
1994 ブラジル ー イタリア
1998 フランス ー ブラジル
2002 ブラジル ー ドイツ
|
Jリーグ経験者 .
[韓国]
・柳想鉄 <柏>
・黄善洪 <柏>
・洪明甫 <元柏>
・朴智星 <京都>
・崔龍洙 <市原>
・尹晶煥 <C大阪>
・崔成勇 <元神戸>
[ブラジル]
・エジウソン <元柏>
[カメルーン]
・エムボマ <元G大阪>
[ポーランド]
・シビエルチェフスキ
<元G大阪>
[スロベニア]
・ミリノビッチ <市原>
・カリッチ <元G大阪> |
アジアで最初のワールドカップは、6月30日、ブラジルの優勝で終了した。
5・31の初戦は、セネガルの番狂わせではじまり、対戦したフランスの他、アルゼンチン、イタリア、ポルトガル等の優勝候補が早々と姿を消してしまった。有名選手が、無言のまま、空港で見送られた姿は、寂しいものがあった。多くのサポーターは、彼らのレベルの高いプレイを期待していたもので、"魅力の無い最低のワールド・カップ"と言う声が出つつある中、常勝国である「ブラジル対ドイツ」の決勝戦が実現し、内容も素晴らしかった事で面目が守られたという印象である。
開催国の日・韓はと言うと、ともにすばらしい結果を残した。予選リーグをトップで勝ち抜いた日本。そして、韓国は、ベスト4である。しかも、対戦したチームが強豪ばかりであったから、驚きと感激も、また、大きいものがある。今大会のTV観戦者数、延べ400億人と言われたが、誰もこの結果を予想できなかったはずである。
5大陸のレベル差が少なくなった、最初のワールドカップになったが、日本のサッカーも、一気に世界の仲間に入ろうとしている。4年後のドイツ大会では、安定した実力で今回以上の成績が要求される様になった。
さて、今まで感じていた事(先入観)と違った発見があったので、雑感としてみた。
@ 若者が叫ぶ、「日本!日本!」に驚く
日本が決勝リーグに進出した日、日本中が盛り上がった。大型画面の前で飛び跳ね、隣と抱き合いながら喜ぶサポーターから、サッカーを知らない年輩の人まで、嬉しい顔々が全国各地で見られた。取り分け、若者のエネルギーはすごかった。大阪では、100人以上が道頓堀に飛び込み、渋谷では、交差点を占拠し信号機によじ登って騒いだ。閉塞感の強い中で、若者が一体となってこんなに発散できるイベントは、サッカー以外に作れないだろうと思う。
そして、なんと言っても「ニッポン! チャ・チャ・チャッ!」の声援である。色んな理屈で、愛国心が希薄になったり、国歌を歌わなくなった若人が多い様に感じていたので、驚いている。Jリーグでの"ひいきチーム"を応援する「うら〜わ! レッズ!」の延長であり、単純にチーム名「ニッポン」への声援であろうが、何のためらいも無く【日本!】を口にしているのである。
日本のサポーターは、外国のチームにも、同じようにその国の名前で声援する。この姿は、"国の威信をかけて戦う”外国人には大変不思議に映るらしい。反対に、サッカーに負けた国が戦争にまで結びつける事態などは、私には、全く信じられない事である。
B いい審判は、無駄な笛を吹かない。
イタリアのコリーナさん(42歳)は、ヨーロッパで4年優秀審判に選ばれた人で、今回で多くの人が記憶したと思う。大きな目玉にスキンヘッド、細身の体でCMにも出ていると人と言えば、お判りでしょう。
私も初めてなので、細かい動きまで注視していたが、最初のアルゼンチン対イングランド戦でびっくりさせられた。コリーナさんは、ボールがラインから出ても殆ど、笛を吹かないのである。笛を吹かなくとも、選手同士の判断で自然にゲームは流れて行くのである。きわどいプレイでボールが出ても、コリーナさんを見ることなく進行するので、本当に驚いた。
Jリーグでは、ボールが外に出れば、審判は当然はっきりと笛を吹く。両チームが審判を見ながら、手を上げたポーズでマイボールを主張する。そして、判定に対し、どちらか一方のチームは、大声で文句を言う。今まで、こんな光景が当たり前に、繰り返されて来た。
コリーナさんのお陰で、真剣にボールを追いかけている選手には、誰に触って出たボールかは解っている事を知った。その選手達の判断に任せ、ゲームを止めることなく流すことが、選手をゲームに集中させる事を教えて貰った。そこに、最高のプレイを引きだし、見ている人に最高の感動を与える事が出来るのである事を。
また、期間中に誤審が話題になった為、15億人がTV観戦すると予想された決勝戦を、コリーナさんが裁く事になった。始まって直ぐ、通常のタックルに見えたプレイにイエロー・カードを1枚出した。続くジャンプでも、普通に見えたプレイだが、"肘を使った"とイエローカードを出した。ドイツ・ブラジル双方に1枚ずつである。
一瞬、ペナルティーの多い、大変なゲームになるなぁ、と感じさせられた。しかし、これ以降、もっと激しいプレイでもイエローカードは、1枚も出さなかった。終わってみると、今大会で一番フェアで素晴らしいゲームだった。ワールドカップにふさわしい感動を残した決勝戦だった。
この2枚のカードは、決勝戦をコントロールする為の戦術だった事を、本人がある番組で、後日談として紹介していた。"今日のゲームは、ペナルティーに厳しく、公平だぞ"と言う意識を両チームの選手に植え付け、信頼を得る為の演出だったという。お見事!
ワールドカップの審判の定年は、45歳である。このコリーナさんは42歳。残念ながら、ワールドカップは今回が最後であるが、ぜひ、他のゲームで素晴らしいレフリングを、もう一度見たいものだ。
C 誤審に対する、強者の姿勢に一言
サッカーの判定には、ミスはつきものだが、今回は、特に大きな問題になった。理由は意外と簡単だと思う。強豪と言われたチームが、誤審によって苦しんだからだ。今までは、強豪に有利な判定(誤審)が多かったと言うことだと思う。強豪に有利な方が運営的にも、都合が良いことになっていたのでしょう。プロ野球で巨人有利のジャッジが多いと言われているのと、似た問題では無いだろうか。
マラドーナの「神の手」は、あまりに有名だ。ゴールキーパーの頭の上に出た手が、ボールに触れている。ゴールとしたのは明らかな誤審であるが、何故かマラドーナ栄光のエピソードとして語り継がれている不思議がある。これ等は、ゴールを許したとなるキーパー、敗戦チームの立場等からすると、許せない出来事であが、相手があのマラドーナだった為の悲劇としか言いようが無いのである。
今回、誤審で姿を消したチームは、相当、怒り心頭、いろんな騒ぎを起こしている。審判に対する買収などの個人攻撃もあるようだが、激しい動きの中の判定である。ミスはあり得るのである。強豪は、もっと大きな心が必要では無いか。誤審があっても、それを跳ね返す強いチーム力と結果として誤審を敗因にしない強い心があって、強豪ではないのだろうかと言いたい。
実際強豪と言われたチームが負けた試合を見たが、相手を圧倒する様な力は発揮していなかったと思う。何かイライラして、常に判定に不満顔でゲームをしていた様に見えた。余談だが、誤審はサラリーマン世界では、比較にならない程多い。誤審を言い訳にして”ふてくされ”ていたら、やっていけないので、居酒屋で憂さを晴らしながら、皆頑張っているのである。
VTRを採用したらと言う意見もあるが、反対である。大相撲を見て貰えば解る。”物言い”がついた時の行司さん、協議にも入れず、ただ立っているだけである。一所懸命やっている筈の"行司さん"の権威が低い様に見えて仕方がない。大相撲は、あれだけのスペースの判定に、"行司さん"の他に数名の審判員がついているが、大変珍しい事である。角界の役員、部屋を代表している親方衆の力が強過ぎるのだろう。
今回で、FIFAも、何らかの対応をする方針のようだ。サッカーの場合、あれだけのスペースと激しさを考えると、やはり、審判は少ないかもしれない。今のままで、誤審をすべて審判の責任にされたのでは、少し気の毒かなぁ。
A 世界レベルのサッカーは、ペナルティーが少なかった。
10年前に発足したJリーグは、世界のトップリーグから退いた外国人選手が一気に来日した。プレイ出来る外国人枠が1チーム3人になった為である。そして、日本の選手のレベルは急速に上がったが、審判のレベルまでアップした訳ではなかった。むしろ、審判のレベルが低い事を幸いに、、ペナルティーを簡単に貰いに行く行為、自分に不利な判定に文句をいう風潮を作ったのも、事実、また、外国人選手であった。有名で、テクニシャンといわれる南米の選手ほど、コケ方も上手く、日本の優秀な選手も大いに真似をしたもので、私は、この姑息なプレイを不愉快に感じていた一人である。
しかし、今回は、シュミレーション(ペナルティーを貰うため、故意に倒れる行為)に対して厳しいこともあって、全く姿を消していた。世界は、すばらしいプレーヤーほど足が引っかかっても倒れずに、前に前に進もうとする。そこに、すばらしい迫力と感動が生まれるのである。勝負に対して、堂々と勝ちに行く、清々しい姿を見せて貰った。
これからのJリーグも、ペナルティーの少ない、気持ちの良い試合が多くなってほしいと大いに熱望している。
DJリーグ経験者が今大会で大活躍していた喜び
Jリーグ経験者が今大会で大活躍したが、Jリーグが、欧州リーグと同じように、世界のレベルアップの場になっている事に、大変驚いた。特に、韓国チームの活躍は、すごかったが、Jリーグ経験者が7人もいたのである。
Jリーグが発足した当時から、ピークを過ぎた外国人選手が目立った時代が10年間も続いているのであって、今回のJリーガー経験者の活躍を、どう受け止めたらいいのか戸惑うくらい、嬉しいことである。
今大会で、決勝リーグに残ったチームは、強い組織力を持ったチームが殆どであった。今の日本も、高度な組織プレイを身につけ、ある程度の成績を残す実力を持っている。しかし、ブラジルの優勝は、高度な組織プレイを前提にして、更に卓越した個人プレイを発揮しないと、これからは勝てないことを証明している。
トップに立つための決定力は、なんと言っても個人技である。これからJリーグが、世界レベルのリーグ水準を確保するには、個人技の高い若者を育てる事が課題となる。今回の大会に感動した子供達が育ってくることを期待したい。
ティ・タイムへ M310topへ
<今回の主役、ロナウドの笑顔>
<W・CUPは カフーの手に>
<決勝リーグ成績>
<世界の審判・コリーナさん>
<スポーツ紙から>
02/7/17