小売業やサービス業では、ポイントサービスをカードで取り扱う方法が、盛んになっているが、従来は、1cm四方のスタンプカードを指定の用紙に貼り付け、1枚全部が貼り終わると商品券に換えると言うものだった。夕食の後に、その日の買い物で集まったスタンプを貼り付けている姿は主婦の定番となっていたものである。

さて、人間の心には、どうしても忘れられない嫌な思い出・残念な思い出等が何時までも心に残っているが、この思い出の一つ一つを、”心の中のスタンプ”と言う。そこで、私たちはどれくらいスタンプを持って生きているのか、また、相手がどれくらいスタンプを心の中に貯めているのかを考えてみたい。

まず男性だが、相手(奥さん等)に対して、嫌な思い出の他に、止めて欲しい事・直して欲しい事まで拡大してスタンプを上げてもらう。大体5枚〜8枚程度に収まる人が殆どだ。10枚を越す人は、よほど細かい事に拘る人、15枚以上はかなり神経質な人と言っていい。

その男性に、奥さんが持っていると思われる”心のスタンプ”を予測して貰うと、ウ〜ンと言って考え込んでしまう人が多い。普段から女性の立場になって考える事が、少なくなっている為だが、それでも、全員が自分(男性)よりは多い枚数で在ることは判っている様だ。自分の2〜3倍の15〜20枚を予想する人が多かった。

この中で、自己中と言われている人は、常に不満を口に出している為か思ったより少なくて、3〜4枚くらいである。むしろ「妻には感謝している方が多いですよ」と”大人”を言う人が多い。ならばと、相手のスタンプは何枚くらいと思うかと尋ねると、「10枚くらいでしょう」と、こちらも甘い評価である。自分は相手に不満を与えていないよと自身を持っているところも、自己中なのである。<あなたは?>

今度は、反対の女性に同じ質問をすると、これが大変である。即答出来ないのは同じだが、これは怖いくらいにスタンプが多い為で、直ぐには出てこないと言うのが実情のようだ。その証拠に、喧嘩をして怒らせると良くわかるし、全ての人が体験している筈である。

何十年も前のデートの時間に遅れた事から、行きたいところへ行けなかった不満、友達に会った時の白けた態度、実家に帰った時の嫌みな言い方等々。まして、誕生日・結婚記念日等を忘れたあの年のあの日のこと等、こちらが忘れている事が次から次と出てくるものだ。

さらに、パーマに行った時、いつもと違う服を着た時、初めての料理を作った時々に、気づいてくれなかった事等は、何年経っても忘れてはいない。また、数少ない旅行で、「行きたかったところが在ったのに」、「やりたかった事が在ったのに」と悔しかったこと等も、上げれば本当にきりがない。これでは、急に聞かれても直ぐには数を言えないのが、当たり前である。

一般的に結婚30年以上も経過していれば、妻のスタンプは2桁で終わるはずが無く、100枚以上は心の中に貯まっているのではないだろうか。私は今結婚32年である。と言うことは・・・・・・。

しかし、大半の男性は、こんなことになっている事には、殆ど気がついてない。だから、何かの原因で喧嘩になった時、スタンプがドンドン出てくる事に大いに戸惑い、今は関係ないだろうと腹を立てながら応戦する事になるのである。

”心のスタンプ”と少し違うが、幼なじみと久しぶりに合った女性が、20年〜30年前にあった成人式の服装で話が盛り上がっている事に出くわす。自分の着て行ったものなら思い出す事もあろうが、他人の衣装まで覚えているのである。何処にそんな記憶の仕掛けが在り、何のために覚えているんだろろうか、何とも女性の記憶には感心させられる。

また、男性と女性では、一つの事に取り組んでいる時の集中力が大いに違うと聞いた。男性は一つの事に集中すると他は何にも受け入れなくなる様で、野球を見ている時に話し掛けても、全く聞いていない事を想定すると理解できると思う。

反対に女性は、幾つもの事を同時に受け入れる事が出来る。古い単語で恐縮だが、”ながら人間”なのである。例えば、一所懸命料理を作っているが、子供と話をしながら、テレビにも神経がいっているのである。男脳と女脳の違いと言われているが、本当に不思議である。

学生時代の娘と母親のケンカに見る関係も、男性には理解出来ない一つである。帰りが遅いとか、言葉使いが悪いとかを注意された事が原因で、激しい喧嘩(?)となる。そして、ドアが壊れるのでは無いかと思う勢いで部屋を出ていき、足がくじけるのでは無いかと思う程の音を残しながら、階段を上がって、また大きな音を残して自分の部屋に入っていく。

が、次の瞬間、ケーキを買ってきている事を思い出した2人が、今度は別の会話をしながら一緒に食べているのである。さっきまでの喧嘩は何だったのだろうか?喧嘩とケーキを食べる事は女性の間では、別の事なのであろうか?。

男には、この様な二面性(?)は絶対に無いと思っている。喧嘩した後はその事が頭から離れず、少なくともその日は、顔も見せたくないものである。翌朝には忘れていると言うのが、普通の男性の感情ではないだろうか。

さて、”心のスタンプ”を貯めない、粋で平和な明るい社会に憧れるが、今の私は、時々2人の時間を作る等して、貯まっているスタンプを減らす事も、大事な年齢になって来ている様だ。


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      雑感


 44 心のスタンプ・男女の差
01/10/28