03/10/1

58歳の挑戦(?) 
       「 水 泳 」
「力を抜き筋肉をスムーズに」 9月30日 TV番組から  

昔、巨人で活躍した「ガルベス投手」は、
舌を出しながら投球していた事は有名だが、
無駄な力を抜く為だったと言う。
バスケットのジョーダンや短距離のカールルイスも
シュートタイミングとゴール直前では、
軽く舌を出していると言う。
力を抜く事は、スターにも大きな課題の様で、
意外な方法を採用していたのですね。


「xx歳の手習い」という言葉があるが、58歳になって初めて「水泳」に取り組む事になった。

4月、大宮駅そばにオープンした大型スポーツジムに入会すると同時に始めたのだが、もう数ヶ月、未だに「水浴び」の段階を抜け出せないでいる。自分の不出来を棚に上げ、「誰か適切なご指導をしてくれる人が現れないかなぁ」と情けない心境になっている。

私が育った家は、小・中学校から3分と言う近さ。近所の子供達と広い校庭を使って日が暮れるまで遊ぶ毎日だった。当時は子供達が集まって始める遊びが殆どで、空き缶や棒切れで「良くあんなに楽しく遊べたものだよなぁ」と、今では考えられない様な不思議があった。

振り返ってみると、田舎の自然全てが遊び場だった。中でも、町を縦断する川では、四季折々最高の遊びが出来た。冬はスケート、春になると魚取りである。"ウナギやナマズ・ドジョウ・フナ等"それぞれに捕まえ方が有り、人によって得意があった。梅雨が明ける頃には蛍狩りが出来る。そして夏の遊びと言えば、なんと言っても水浴びである。小学校入学までは、素っ裸で男の子も女の子も一緒に遊んだ。"冬の赤いほっぺ"と同時に"夏の褐色の肌色"は田舎の子供の象徴であった。

時々事故も起きた。当時も皆と一緒に遊ぶのが苦手な子供がいたのだろうか、殆どが人の居ない場所で遊んでいた為に起きた事故だった。そこで、川をせき止めて、所定の時間を父兄が当番制で監視をする"自然プール"が作られた。その脇では"チリン・チリン"と鐘を鳴らし、自転車に旗を立てたアイスキャンディー屋さんがいる。今でも、懐かしい夏の風景として思い浮かんでくる。

小学生時代に、この自然プールで誰の指導も無くワイワイ楽しみながら「水浴び」から「水泳」を覚えていったのである。また、普段話した事も無い監視員の方々も、小さな子供達の中に入って一緒に楽しく遊んでくれた。農作業も多忙なこの時期に、近所の子供達のために監視に当たったのだから大変な事だったろうと今になって思うが、この様な大人と子供のふれあいが、"人間としてのやさしさ"を育んでいった余裕のある良き時代だった。

さて、私の水泳であるが、水を少々怖がっていた事と小学校2年生の夏に胸の病気をした事で、大きく出遅れてしまった。暫くの間、体操の授業と放課後の掃除が免除された事を喜んでいたが、「水泳」と言う面では大きな差となった。健康が戻ってからもこの泳げない事を知られるのが嫌で、皆の居る所では絶対に水に入らない様にした。結局"かなづち"のまま、この年を迎えたと言う訳である。


ジムでは、"やさしいクロール"と言う初心者向けのプログラムに参加した。"もぐり"と"蹴足"、ビート板を使った"バタ足"と進んでいく。皆一緒のスタートなので心配した程の恥ずかしさはない。十数名の生徒が何となく上手い人の順に並ぶ事になるが、始めは中ほどで着いて行けた。問題はビート板を使わなくなってからである。ビート板が無い不安からか、手と足がバラバラで身体を動かす程に沈んでいくのである。いつの間にかグループの最後尾になっていた。

一緒に始めた人達の上達は早く、次の「クロール呼吸編」「すいすいクロール」と、上級コースへ進んで行った。取り残された私は「力が入っている」と言われるが、どうすれば力が抜けるのか全く判らないでいた。
「この年齢で始めたのだから時間が掛かっても仕方がないさ!」と慰めながら練習を繰り返していたら、「突然出来る様になりますよ!」とやさしい激励を受けた。

月が新しくなり5月からの新規会員が入会して来た。当初は4月からやっている私の方が少し上手いので、先頭の方に並んでいた。が、直ぐに追い越されていく。特に、熟年の女性で毎日、しかも朝から来て練習している人は信じられない速さで上達する。

とうとう5月生にも追い越され出したので、基本も不十分ではあるが"クロール呼吸編"に進んだ。これが、また、大変だ。水に潜って顔を出す「ウーン・パッ!」「ウーン・パッ!」の水中呼吸のレッスンまでは良いが、手・足・呼吸を一緒に行う段階になると直ぐにバタバタ状態で、顔を上げ呼吸する事が出来なくなってしまう。それまで一緒だった人達がすいすい泳いでいるその隣のコースで、結局、レーンの途中で立ち止まりながら頑張っているのは、自分一人になった。時々めげそうになるが、それでも3kgほど減った体重維持と体力強化のために今も通い続けている。


今回、水泳で力を抜く事の難しさを嫌と言うほど思い知らされているが、良く考えてみると同じ悩みは他にもあった。まず、30年のキャリアとなったゴルフだが、経験年数を自慢する程は上達していない。毎回、肩に力が入り過ぎてはスコアーを大きく崩している。そして、色々な競争の中で過ごした40年間の会社生活がある。優秀な人材の多さに驚いた入社時から、力を抜く事への不安が働いていたし、肩書き社会で自分を失いたくないと意地になって頑張った事などが力みになってストレスに繋がっていたように思う。

どうやら、力を入れずに自然体で過ごす事が私の大きなテーマの様である。



         ティ・タイムへ          M310topへ