時間前販売の功罪

出店していて準備をしていたら、「時間前なのに買物客が来て強引に売らされた」という経験はありませんか? お買物で開始時間の少し前にフリマ会場に着いたら、「もうすでに時間前に買物をしている人がたくさんいた」なんて経験はありませんか? 
「やっぱりフリマの買物は朝一番がええもんある! ここのフリマは早よ入れてくれて、ほんまにええフリマや」とお客さんからお褒めやお礼を頂いたり、「スタート前にほとんど売れてしもた、ホンマにここはよう売れるフリマや」と出店者から感謝を頂いた主催者の方はおられませんか?
またその反面、お客さんから「時間通りに来たら、ロクなもんしか残ってなかった。もう二度とこんなフリマ来るか!」、出店者から「売れたけど、無理やり値切られて怖かった」、「準備の邪魔やし、ちゃんと管理してえな」などの苦情やお叱りがあるのも事実。時間前販売は良いのか悪いのか両面の話が行き交います。
さてこの行為は、フリマにとって良いことなのか悪いことなのか? 今月はその功罪について考えてみました。

フリマのお買い得タイムと買ってしまう理由(わけ)

 フリマの「お買い得タイム」は、言わずと知れた「スタートすぐ」と「終了前」。
「スタートすぐ」は「お宝探しタイム」とも言い、何しろ自分が欲しい物、お値打ち物を手付かずの原始の状態で、それをゲットするのに最高の時間です。
 フリマの買物は、何しろ行ってみないどんな店が出ているかわからない。そしてお店を覗いてみないとどんな品物を売っているかわからない。そんなお店に「一番」に行くことが、そこにあるすべての商品の中から、どれでも好きなものを選び、値段交渉して買える権利ができます。すなわち「一番」は独占購入権と交渉権が独占できる時間なのですね。


 
街のお店は何を売っているかだいたい想像がつくし、自分もそれを売っているだろうからこそ、その店に足を運んでいるはず。値段も本屋さんみたいにどこでも同じだったり、少し高いか安いか、店員さんがかわいいか、かわいくないかくらいの差で、争って今すぐ買わなくても、時間とお金に余裕のある時に買えばいいということに。


 フリマの買物は、一般の家庭や自分の収集物の不要品の「処分」がメインですから、何万円もしたものが数百円で売っていたり、お願いしたらもっと安くしてくれたりします。欲しい物とお値打ち物が目の前に突然出現して売り手も買い手も至福の出会いの時間と場所が演出されます。これが魅惑の「お宝探しタイム」です。

 フリマに買物に来るお客さんは「買うため」に来ている方がほとんど。安くていいものを手に入れたい人。趣味の収集品を探す人、他で高かったからフリマで安く出てないかと探すのが目的。ウィンドーショッピングに来ているという方はあまりいません。常に「買う」態勢で会場をまわっています。
 ですからフリマでは、欲しい商品を見つけたらすぐに買う。迷っていたら他の人に買われてしまいます。他の店にあるという保証はありません。自分にとってオンリーワンの出会い商品であることが多いはず。また今度というのはもういらないということに等しく、つまりフリマの買物は「ワンチャンス、ワンアクション」で決まることが多いのです。

 「終了前」のお買い得タイムは、「売れ残り品投売りセール」。持って帰るのがいやだったり、もう売上目標をクリアした後だったりすると半額以下にしたり、組み合わせてセットになったり、「あげるわ、持ってってー」とタダでいただけたり。でも、何せ一日売っていて売れなかった「売れ残り」ですから、自分の欲しい物と出会えるチャンスは、スタート時と比べるとう〜んと少ないというものですね。

何にでも開始・終了時間がある

 何にでも開始時間と終了時間がありますよね。フリマもしかり。
 フリマの開催時間とは、お客さんに来てもらう時間と帰ってもらう時間のことで、すなわち買物ができる時間のこと。
 主催者はこの時間を基本にさまざまな計画をたてます。場所のレンタルの契約をしたり、開催告知を行います。開催のタイムスケジュールを作って、出店者の搬入・準備時間、販売時間、搬出時間など出店要項にまとめ連絡・徹底をはかります。また運営スタッフにそれぞれ時間時間の作業分担を決め、運営計画を作り役割分担して動きます。開催時間は全ての運営計画の原点となる時間です。
 さて、この時間を守らないで早くから買物客がやってきたらどうなるのでしょうか。そうです、運営・人員計画が狂い、安全管理が果たせません。真面目なお客様への不利益など、さまざまなトラブルが発生することになります

時間前販売はどんなトラブルをおこすのか

◆真面目なお客さんに不利益を与える
 「○×フリマ開催! 10時〜16時まで」などと主催者は、新聞・雑誌、チラシ、ポスター・看板などでフリマ開催の広報をします。これは、出店者やお客さんとの約束でもあります。お客さんが広報を信じて時間通りにやって来たら、すでに買い物が始まっていたら、真面目に来た人には詐欺のようなもの。真面目なお客様から様々な特典と可能性をなくしたことになり、前述の「お宝探しタイム」を奪ったことになります。時間通りに行ったらすでに映画が始まっていた、電車が行ってしまっていたみたいなものです。映画や電車は払い戻しできますが、フリマはそうは行きません。せいぜい主催者に文句を言うか、二度とそんなフリマに行かないくらいしか気を治める方法が見つかりません。どちらもフリマ開催には大問題です。

◆出店者の準備の邪魔になる
 出店者は会場到着から販売開始まで結構いそがしいものです。受付して荷物を運んだり、並べたり、値段をつけたり、販売開始と同時に押し寄せてくるお客さんに間に合わせようと必死で準備をしています。そこに時間前に不法に侵入してきた人が「アレ・コレ見せろ」と指図したり、まだ空けていない箱や並べていない商品を勝手に品定めしたり、欲しい物があったら値切り交渉を始めたり。出店に慣れた方は「時間前は売らない!」とキッパリ断ることも出来ますが、慣れていない人、気の弱い人は、「怖いので」「しつこいので」と売らされてしまうケースが多いようです。「時間前は禁止になっています」と一応は言う人も、「じゃ、後から来るので取り置きしといて」と言われると応じてしまう人も多い。ズルイことに変わりはないし、他所でいいもの見つけて取りにこないということも。ズルしてでも手に入れたいくせ、値切りたおすので、売る方にはメリットがないことも。ただ、邪魔なのと、「あんな奴に売るんやなかった」と後悔をしたり、まわりの出店者から白い目で見られているような気がして、楽しいはずのフリマ出店が、一日気分の悪いものになったということも。
 万引きが多いのもこの時間帯。まだ整理のついてない商品を持って行かれる窃盗事件が後をたたない。

◆周辺地域、会場施設への迷惑
 主催者が時間前販売を管理しないフリマは、次第に時間前に買おうとする人たちが朝早くからたくさん集まってきます。周辺道路に路上駐車をしたり、大声で話をしたり、たばこの吸殻を捨てたりして周辺住民から主催者に苦情が入ることも。警察や役所に「投書」が行くこともあります。会場が使えなくなることに発展することも。会場が商業施設の場合、周辺住民への迷惑回避のため、その対応に予定より早くからスタッフやガードマンなどの人手と手間が発生することもあります。

どんな人たちが時間前に買っているか考えてみよう

 さて、前文の「ここのフリマは早よ入れてくれて、ほんまにええフリマや」と主催者を褒めてくれた人たちはどんな人なんでしょうか? 

◆自分だけ良かったらいいという自分勝手な人たち
 当然、何時からフリマが始まるかを知っていて、他のお客さんが開店時間を楽しみにやってくることも知っていて、それより早く来て買物、取り置き行為をする人たちですから、これは「自分だけが良い買物できたら、他の人はどうでもいい」「決まりなどどうでもいい」という卑怯な性格の持ち主としかいいようがありませんね。


◆嘘をついてでも入ってくる人たち
 フリマ会場に囲いなどがあったり、入口をガードできる会場などでは、会場の出入りは主催者が管理していて、出店者以外入れないようにしているはずです。それでも、「○○の手伝いにきた」「見るだけだ」などとすぐにバレる嘘をついて侵入しようとする人がいます。「中でみんな買っている奴がいるのになんで自分だけとめるんや」と訳の分からんことを叫ぶ人も現れます。「嘘つきは○○のはじまり」なんて言ってしまいそうな、悲しい情景が毎回のように出入口で展開されています。

◆転売目的の人たち
 いわゆるリサイクルやマニアック商品を商いする転売目的の人たち。アマチュアが家庭の不用品処分が目的なので、商売する人から見たら数千円、数万円で売れるものが数100円で売っていることがあります。これをまだ値切って買って行くのです。
 他の市やフリマで高く売ったり、自分の店で販売します。ネットオークションで売る人もいます。要するにフリマは恰好の業者の仕入れ場所なのです。
 時間を守って買物をする業者の人たちは大歓迎なのですが、一部の常識のない人が、業種全般のイメージを悪くしているということも。お店を構えていたら信用が一番大事だと思うのですが。時間前に買いあさる業者の店が分かったら、世間に言いふらしてやろうかと思うのは私だけでしょうか。

時間前販売の功罪

 こうして考えますと、時間前販売という行為は、いかに害の方が多いということが分かると思います。
 会場の状況にもよりますが、「管理していない主催者」、「管理している主催者」、圧倒的に多いのは「気にはしているが、どうしていいか分からない」という主催者が多いようです。一生懸命ガードしていても、数人に侵入され、他の客もつられて販売がスタートしてしまい、致し方なくガードをやめたという事も起こってしまいます。

対策を考える

 会場が囲われているところは比較的簡単に時間前の侵入者を排除できます。しかし、どこからでも侵入できる会場が圧倒的に多いというのが現状です。そんな会場の時間前販売を防ぐ方法を考えてみました。スタッフの人数も限られていますので、お客さん全員を監視することは不可能です。ですから基本は「出店者の方の協力をひたすらお願いする」のと「出店者の見守り」しか方法はないと思います。

◎その1
 朝の受付時に出店者に「絶対、時間前の販売・取り置きに応じないよう協力をお願いする」。もし強引な買い付けがあった場合は「必ず本部に連絡」、スタッフが駆けつけることを説明する。となり同士の協力も要請する。お願いを無視して時間前販売をして見つけた場合は出店者が退場処分となることを説明し、主催者は、お願いを聞かない出店者を監視。

◎その2
 時間前販売を認める。しかし時間前は値切りなしの定価の2〜3倍の価格で売ってもらうことを出店者に徹底お願いする。時間まで待てば定価の価格になり、値段交渉もできるので、かなり減少するはず。
 
 フリマが嘘をつく人やルールを守らない自分勝手な人、人や社会の迷惑となる人のたまり場にならないようしたいものです。不正な人、ズルイ人が得をして、真面目な人が損をするようなフリマに絶対ならないようにしてほしいものです。

先頭に戻る INDEXへ

アクセス解析