月刊FURITEN  「特集」より転載
フリマで売っても良いモノ?悪いモノ?  その1

フリマ会場に一歩足を踏み入れると、そこはもう一面おもちゃ箱をひっくりかえしたような光景が広がります。プロやセミプロのお店は別として、家庭の不要品をタンスや押入れから引っ張り出したての商品は、それはそれは見事に多種多様、雑多なモノ達が並びます。懐かしいモノ、笑えるモノ、「こんなモノまで売るんかー」とあきれるモノまで勢ぞろい。フリマの醍醐味です。
 フリマで売ってはいけないモノもたくさんあります(フリマだけでなくダメなものは何処でもダメ)。でも、それを会場で結構見つけてしまうのも事実。わざと売っていたら犯罪。知らずに売って法律違反をしてしまったということも。
 今月の特集は、知らずに売ってしまいそうなモノ、「なんで売ったらアカンねん」というモノ達をご紹介します。

飲食・食品

 「おでん作らしたら料亭に負けへん」、「クッキー焼かしたら大阪一や」なんてお母さんたくさんいてはります。ぜひ食べさせてほしいものですが、でもこれをフリマでやると違法で危険。
 営業を目的としない学園祭やバザーなどで、会場で調理をして食べ物を販売する場合は「模擬店開設届」と「検便の結果」を保健所に提出すれば、飲食屋台の出店が許可されます。しかし、地域の保健所によって若干対応が異なるようですが、フリマは基本的には「営業行為」なので、模擬店開設届で飲食出店が許可されることはありません。ですから、フリマでの飲食出店とは、原則的には保健所からその地域の「屋台の営業許可」を得ている業者だけが出店可能ということになります。地域の飲食店や喫茶店がフリマで飲食出店する場合も、別に屋台の営業許可を取らないと違法です。

 ですからフリマでの飲食出店は、「屋台の営業許可を持っているか」と「主催者がこれを認めるかどうか」の2つが備わらないと実現できないことなのです。
 それなら家庭で調理した料理や焼いたお菓子を持って行ってフリマで売れば良いじゃないかということになりますが、これもダメ、違法です。
 前述の通り「売る」という行為は営業そのもの。そしてフリマという場所で営業行為をするわけですから、食品を製造・販売する保健所の許可が必要になります。
  
 例えばクッキーのようなもの場合は「菓子製造業」として食品営業許可を得る必要があります。「衛生上問題の無い場所で製造された」ということが販売する上で必要になるので、このような許可が必要になります。
 許可を取るためには最低限、自宅の台所とは別の部屋にその製造物専用の厨房設備が必要です。


 
そして「食品衛生責任者」を置かねばなりません。これは、調理師か製菓衛生士の免許を取るか、講習を受けた人。
 その他、定期的な検便や製品の細菌検査や施設のチェックも受けなければなりません。
 クッキーなどに包装を施して販売する場合は、製品の内容に関する表示も必要となります。
 賞味期限や添加物の表示義務の他に、遺伝子組み替え食品、アレルギー食品に関する表示も義務づけられています。
 また、それだけしていても起ってしまったO-157やいろいろな細菌中毒などの事故を想定して、PL法対策の保険などに加入しているかということも重要なポイント。何か起った時にどんな責任かとれるのか? 責任の取れない人が、だだ作るのが上手というだけで、他人の口に入るものを衛生の知識もなく無許可で販売することは恐ろしいことです。
 フリマ主催者は、食べ物の出店を認めた場合、自分で作った食品を売りたいという人が、ちゃんと資格のある人かどうかを見極めるだけの知識が必要となります。
 自分で作っていない既製品の食品を売りたいという場合は、「賞味期限の表示があるかどうか、そして賞味期限内のものか」「商品の保存方法が守られていたか(冷暗所で保存など)」のチェックが安全のため絶対に必要です。前者は嘘の表示でないかどうか、後者は暑い中寒い中どれだけ日が経っているのか、太陽にどれだけ当っていたのか、ホコリや砂、排気ガスをかぶっていないか、まったく確認の方法がありません。
 だから、法的に問題なくても禁止にしている主催者が多いのです。

あんま・マッサージ・指圧

 こちらは「技術を売る」もの。
 骨董市やフリマ会場で、地面に布やゴザを敷いてあんま、マッサージをする光景に時々出会います。あんま、マッサージには「あんまマッサージ指圧師」という国家資格があり、その資格を持って医療行為としてのマッサージ業務を行います。
ですから基本的には「違法」ということになります。
 しかし民間の資格もたくさんあって、民間の協会や学校が卒業証を発行するもので、例えば整体・カイロプラクティック・タイのストレッチ、エステの全般に教室やスクールが存在します。
 これらは、国家資格ではありませんが「美容」「癒し」として営業されることが現実的で、医療行為を謳うものはほとんどありません。
 最近フリマで多く見られるようになった出店もこのような主旨のお店が多いと思います。フリマで歩き回って疲れた足に足つぼマッサージをしてもらったり、出店の合間にちょっと半身マッサージをしてもらったり、毎月出店していたら近所のお年寄りが集まってきたり、お買物だけではないフリマの楽しみが増えます。ぜひ増えて欲しいものです。
 しかし主催者は国家資格有資格者であれば、出張マッサージは保健所に届出が必要なので、フリマ出店の場合がそれにあたるかどうかを、その地域の保健所に確認しておくことが必要。
 民間資格の場合は、法的に届出の必要はないので、出店者の認定書や学校の卒業証書の提示など求め有資格者かどうかを確認、そして癒しや美容の範囲を逸脱しないかをチェックするべきです。
 エステや健康にかこつけて、影で健康器具や薬品を売りつけたり、霊感商法のような様子はないか、医療行為に及ぶ言動がないか、スピリチュアル系の感情の入った占い行為はないかなど、耳をダンボにしてチェックすることが必要です。

お 酒

 町内のお祭りやバザーなどでお酒を売っていて盛り上がる光景が浮かびます。暑い夏のフリマの冷えたビール、極売れ商品に間違いなし。さて、お酒類をフリマ出店で販売してもいいのでしょうか?
  
 酒類の販売は、販売する所在地の所轄税務署長から酒類販売業免許を受ける必要があります(酒税法第9条)。酒類の販売業とは、酒類を継続的に販売することをいい、営利目的かどうかとか誰に売るのかということを問うていません。
 ですから特定のフリマ会場で毎回売っているというのは免許が必要となり違法ですが、「一度だけ」とか「たまに」売ったというのは法に触れるものではないということになります。

 自分が飲もうと買いすぎたものやお中元やお歳暮で頂いて家庭でだぶついたお酒をフリマでリサイクル販売するのは、継続的販売に当たらないので免許は要りません。
 問題は、主催者がお酒を飲食物として販売禁止品目の中に入れているかどうかということ。飲食物と見れば、どうしても「保存状態」が主催者には見えませんので衛生上禁止ということにすべきです。イメージも良くないかも。

 タバコ

 たばこを販売するには、「たばこ事業法」に基づき財務大臣(財務局長)の許可が必要。
 海外のお土産でもらったりして、たとえ自分にとってはだぶついた家庭の不要品のタバコであっても、フリマでの販売は営利行為とみなされ許可が必要となります。
 フリマには未成年もやってくるので未成年者喫煙防止の観点(年齢確認法等)からも、フリマで販売してはいけないものだと考えます。ちなみに無許可でたばこを販売した場合、30万円以下の罰金刑。(たばこ事業法49条)

 香水の小分け売り

 香水はフリマで結構人気商品のようです。お土産でもらって気に入らない少しだけ使いさしのものやデューティフリーショップで仕入れたまっさらのもの、別れた彼氏からのプレゼントなど??など、人だかりができる商品です。
 大瓶のものを小分けして売る、いわゆる香水のアトマ販売といわれる行為。香水は薬事法により化粧品に分類されていますので、それを小瓶などに小分けして販売すると「製造」とみなされます。化粧品の製造には許認可が必要なため、許認可のない個人の香水の小分け売りは違法行為です。
   主催者は当然販売禁止商品にしないといけません。香水を扱うお店があればその商品をチェックすべきです。

薬 品

  家にある風邪薬や胃薬、シップ薬、漢方薬、サプリメント、ドリンク剤、化粧品など。絶対フリマで売っちゃダメ商品。医薬品を販売・保管するには薬事法に基づき保険所の許可が必要。許可なく販売すると3年以下の懲役または200万円以下の罰金という重い刑罰の犯罪行為。
 薬事法では販売だけでなく、直射日光や温度・湿度まで指定した保管のルールを定めています。また、輸入の薬品・漢方薬・化粧品・サプリメントには日本の基準と違う医薬品や成分が使用、混合されていることもあるので、疑わしいものは絶対販売禁止。もちろん買っちゃダメ、売らせちゃダメ。

手作り石鹸

人間の肌を洗う手作り石鹸の販売は薬事法違反です。石鹸は化粧品、または医薬部外品に該当しますので、販売・譲渡等を目的としたものについては薬事法の規制対象となり、その製造・販売にあたっては厚生労働大臣の許可が必要です。

原料から作るのではなく、販売されている石鹸を成型し直し販売するのも、石鹸が薬事法の適応を受ける限り、その過程において「何かが混じる」、「何かを混ぜられる」という可能性が多分にあり「製造行為」とみなされます。法に定められた製造設備を備え、管理責任者を置き、認可を得た場所での製造が義務付けられています。人体に直接「塗る」「触れる」という使用方法のものに対しての製造責任を明確にする必要があるのです。

また「洗濯用石鹸・台所用石鹸」は「雑貨石鹸」という分類になり、こちらは経済産業省の管轄となります。雑貨ですから雑貨工業品で「家庭用のモノを洗うことを目的とした製品」についてのみ、 「家庭用品品質表示法」の適用を受け、成分や用途、使用法など、法に定められた表示を順守しなければ違法です。
石鹸の主成分の苛性ソーダは劇薬指定の薬品で、またハーブも種類によってはアレルギー疾患を誘発するようなものがあり、製造者の「名前、連絡先、成分」などの明記と「・・・のような方は使用しないでください」とか、「かゆみなどが起こった場合はただちに使用をやめて医師の診察を・・・」といった注意書きの表示義務が定められています。
当たり前のことですが、トラブル発生の場合に誰が責任を持つのかの明示が義務づけられています。そして、「石鹸を使用したら顔が腫れた」などという被害が出た場合、当然PL法(製造物責任法)の適応を受け、被害者に対して損害を賠償する責任があります。

環境に良いということで「廃油石鹸づくり」が盛んになり、各地の自治体が推奨したり、環境団体、婦人会、サークルなどで手作り石鹸が広まりました。しかし、苛性ソーダによる皮膚のあれや眼に入って失明したというような人体被害がかなりあったようです。また、家庭の廃油にバラツキが激しく、一定の作り方では石鹸自体の品質が揃わず、不良品も多く、かえって環境に悪いものが製造、使用されたということです。

なによりも大変だったのは、手づくり石鹸を作っている人たちが、環境問題やボランティアの善意でやっておられること。法律違反、人体への問題がひろがりました。

もうひとつ、フリーマーケットという環境にも問題があります。
暑・寒、ほこり・砂、排気ガス、会場によってさまざまな状況があります。そんな中、何日も何ヶ月も何年も売り続けられ、成分が変化しているかもしれません。販売者はだいたい分かりますが、主催者にはそれが見えません。そのようなことから、ちゃんとしたフリーマーケット主催者は、薬品や化粧品など直接身につけるものは販売禁止にしているところがほとんどです。

やっかいなのは手作り市やアート・クラフトイベントで、「手作り石鹸」をどうどうと作家物と称して販売する人達と取り締まらない無知な主催者。

手作り石鹸は、法律で禁止されてなかっても野外のフリマや手作り市では禁止にすべき商品です。

金券類

 金券類とは切手・図書券・商品券などのもののこと。実はこの金券類は、以外かも知れませんが法律的には古物営業法施行規により「古物」として扱われるのです。ですから、古物の売買には、盗品などの混入のおそれがあるため、古物営業法に基づき都道府県ごとに許可を得なければ営むことができない「古物商」の免許が必要なのです。個人がフリマで金券ショップを開店することはできません。

ペ ッ ト

 フリマで子猫や子犬の「里親探し」をする姿はほほえましいものですね。しかし販売となると様々な問題があります。
 哺乳類、鳥類、爬虫類に属するものを販売するには 「動物の愛護及び管理に関する法律」 に基づき、各都道府県知事へ保険所を通して動物取扱業の届出が必要。また、動物の販売に当っては、業者の方は、あらかじめ販売する動物について「18項目」の詳細な情報を記載した文書等を購入者に交付し説明を行い、購入者の署名等による確認を受けることが義務付けられています。その内容とは、
@品種等の名称 A性成熟時の標準体重、標準体長その他の体の大きさに係る情報 B平均寿命その他の飼養期間に係る情報 C飼養又は保管に適した飼養施設の構造及び規模 D適切な給餌及び給水の方法 E適切な運動及び休養の方法 F主な人と動物の共通感染症その他当該動物がかかる恐れの高い疾病の種類及びその予防方法 G不妊又は去勢の措置の方法及びその費用(省略) Hみだりな繁殖を制限するための措置(省) I遺棄の禁止その他当該動物に係る関係法令の規定による規制の内容 J性別の判定結果 K生年月日(省略) L不妊又は去勢の措置の実施状況(哺乳類に属する動物に限る) M生産地等 N所有者の氏名(省) O当該動物の病歴、ワクチンの接種状況等 P当該動物の親及び同腹子に係る遺伝性疾患の発生状況(省) Q当該動物の適正な飼養又は保管に必要な事項

カブトムシ

 問題なし。動物愛護法の改正で哺乳類、鳥類、爬虫類のペット販売には届出が必要になりましたが、カブトムシは昆虫で適用外。法律で禁止されているわけではありませんが、昨今輸入外来種(人気のヘラクレスオオカブト・グランディスオオクワガタ・ギラファノコギリクワガタ・アトラスオオカブトなど)が増え、逃がしたり、繁殖させたものが生態系や環境を破壊しているという深刻な現状が出始めているので、いずれ法律で規制されるかもしれません。自然派・環境派の主催者は禁止にされているところが増えています。

 

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