(以下の文章はキョン太と一心同体の杉清志が連句を教えるときに、学生に配布している資料の中に書いたものです。元々縦書きなので数字は漢数字です。横にするとちょっと読みにくいかな、とも思いますが、そのままとしました。)
はじめに
連句は中世においては百句続ける百韻が標準であり、近世俳諧の時代に入って芭蕉が愛用してからは三十六句の歌仙形式が一般的になり現在に及んでいる。しかし授業で初心者である学生が歌仙を巻くのは大変なので、それを大幅に縮小して十二句完結の「暦」という形式を作った。基本的には歌仙の式目を緩和して使うが、縮小に伴う問題もあるので、以下簡単に「暦」の規則(=式目)を書き出してみた。
一 全体の構成
十二句を表六句と裏六句に分け、発句から第三までを序、四句目から裏三句目までを破、裏四句目から挙句までを急とする。
序においては戦争、病気、死、恋、地名、人名等印象の強い語は詠み込まず穏やかに続ける。但し発句だけはそうした制約がない。破は思い切り暴れてよくどんな題材も詠み込んでよい。急は余り沈思せずあっさり付け進める。
季節の句は春・秋各二句、夏・冬各一句とし計六句。春・秋の二句は必ず連続していること。残りの六句は雑の句(季語のない句)とする。
恋句は季句・雑句どちらとでも組み合せて二句続ける。序の部分さえ避ければどこに出してもよい。
二 定座
全体で花、月とも一回ずつ詠む。定座は月が表五句目、花が裏五句目とするが、定座より前に出す分には差し支えない。但し表に花が出たら月は裏とする。また一句の中に花と月が詠まれた場合はそれで定座が完備したものと見做し、ほかには出さない。
なお「花」とは桜の花のことだが、「桜の花」は「花」ではない。「花」という語によって桜を暗示しながら、華やかなもの全ての象徴とするのである。従って「桜の花」「桃の花」「薔薇の花」等の植物の一種としての花は、詠む場合は定座の花とは別の面でなければならない。
三 特別な句の作法
基本的に歌仙の場合と同じだが、脇句と挙句の場合、夏・冬を全体で各一句とする関係で若干異なる。
○発句 当季(現在)の季に該当する季語を詠み込み、切れ字を使い、連衆に対する挨拶の意を込めて詠む。
○脇句 発句に対する挨拶返しの意を込めて詠む。発句が春又は秋の季語を詠み込んでいる時は同季・同時刻の句とする。夏・冬の場合は同季でも雑でも構わない。夏・冬を二句続けた場合は全体で雑の句が五句となる。あくまでも慣例だが、体言(名詞)止めを慣例とする。
○第三 発句と脇句によって出来上がった世界から格調高く離れることを主眼とする。句末は古来「らん」止め、「にて」止めが慣例だったが、現代語の場合は発句・脇句と同じにならないようにすればよい。
○挙句 前句から離れるよりもぴったり寄り添うように、まためでたい内容の句とすることを心がけ、不吉な句を避ける。季は前句に合わせることを原則とするが、前句が夏・冬の場合は雑でもよい。
※その他問題がある場合は歌仙の式目を参照して工夫すること。