筒井康隆『魚籃観音記』
2000年9月30日新潮社

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表題作を含む10作の小説集。抱腹絶倒。さすがプロという作品群です。

作品 感想等 初出
魚籃観音記 孫悟空と観音様が激しいセックスを始め、それをお釈迦様はじめ天上の神々が覗き見するというスケール壮大なSFポルノ。ちょっと仏教関係者の圧力がこわい。大丈夫だったかね、筒井さん。 「小説新潮」平成11年11月号
市街戦 新宿西口前のバスのロータリーがある広場から、ロケバスに乗ってテレビドラマの撮影に出発しようとした一行の前に市街戦発生。どういう戦争かテレビのニュースではさっぱりわからない。何とか池袋のロケ先に辿り着き撮影が始まるものの、やがて市街戦は池袋にも波及。初老の女優菊地梅花は撮影中銃弾に倒れる。が、監督は死んだ菊地の遺体を囲んでお別れするシーンを撮り始める。 「小説新潮」平成12年6月号
社長に三歳の牝馬をやると言われ近所の大学に取りに行ったが、「おれ」にはその馬が人間の若い女としか見えない。ワンルームのマンションに連れて行き、これからその馬と暮らすと思うと、ベッドに連れ込みたい衝動に駆られるが・・・。 「小説新潮」平成9年12月号
作中の死 作家の下畑大知は実在の人物をモデルに小説を書くのが得意。そこで近所の電器屋の船田章太郎の名前を弘太郎と変えて新聞小説の登場人物にする。それを知った章太郎は毎日小説を読み、作中人物と一体化。商売も手に着かない。やがて弘太郎は作中で死ぬ。それを読んだ章太郎は、自分が死んだものと思い込み食欲を含め全ての気力を失い家族からも見放され骨のようになって死んでしまう。 「新潮」平成10年9月号
ラトラス 主人公は巨大化して知能も上がり人間を凌駕するようになった鼠らしい。種の保存のために死んだ父を食い母を食い、見つけた人間を襲って食い、発見した地下のスーパーマーケットで有り余る食料を確保。そこで自分の妹と交尾して種の保存を図ろうと将来設計をするが、妹は別の鼠を好きになって飛び出し、好きになった鼠とその仲間を連れ、更に主人公がさらった人間の若い女の家族にも知らせ、兄のスーパーマーケットに入り込む。主人公は8発しか残っていなかった散弾銃を撃ち尽くす。敵はおそらく、全滅してはいない。 「小説新潮」平成10年3月号
分裂病による建築の諸相 分裂病者らしき筆者が論文形式で、施工者や建築士等が分裂病であった場合の家の形状等について報告した、という体裁の小説。 「新潮」平成9年7月号
建物の横の路地には 映画館の横の路地、グランド・ホテルの横の路地、職業安定所の、図書館の、等様々な建物の横の路地や裏庭に、あんたを助けてくれたり何かをくれたりする人が待っている、という話。 「新潮」平成10年1月号
虚に棲むひと 極めて個性的な女性と付き合い、彼女が去った後彼女をモデルにした小説を書いた。以後自分以外の複数の作家の小説にも彼女は登場するようになった。ところがそれらの小説の中で次第に彼女は落ちぶれ、最後に読んだ「愛の棲む町」という小説ではホームレスになっていた。それに我慢できなくなった時、「おれ」は小説の世界に入り込む。小説の中で「おれ」を待っていた彼女は言う。「とうとう来たわね」「さあ、これであなたも、わたしと一緒に、これからは小説の中に棲むのよ」 「オール讀物」平成12年6月号
ジャズ犬たち 空き地でジャズを演奏する野良犬たちとその取り巻きの猫たちが、近所の住民達の陳情によって一斉に捕獲され薬殺されてしまう、というはかなくも不思議な物語。物語の横糸として、継母に虐待され愛犬を捨てさせられた並河香代ちゃんという女の子や、金持ちらしい和田家の娘で短大生の陽子と、恋仲にある助教授佐伯の失恋の話などが絡む。煮え切らない性格と助教授の安月給のため、金持ちの息子とお見合いするという陽子を佐伯は止められない。キョン太はこの、助教授の安月給というコンセプトが妙に気に入った。 「新潮」平成12年1月号
谷間の豪族 そうとは知らず谷間の豪族の娘と結婚して2年目、作家である「おれ」は妻の一族の事情で一緒に谷間の村に引っ越ししなければならなくなる。想像を絶する豪邸と自然に恵まれた村での生活は一応快適であり仕事も進むが、村を出て東京に行くには、バスに乗るために2936段の石段を登らなければならない。一度友人のパーティーに出席するために東京に出た時、「おれ」担当の若い女性編集者島津桃子との情事を体験。やがて「おれ」の本を完成させた桃子は、「おれ」を訪ねて谷間にやって来る。妻が妊娠3ヶ月になったので、子どもの将来を考えて東京に出たいと思っていたが妻の仕事でそれが難しいと「おれ」は悩んでいた。が、それは桃子が豪族の若い男と結婚し、妻の仕事を引き継ぐことで解決した。「おれ」と妻が出発する日、見送る桃子にどうしてあの男と結婚する決意をしたのかと聞くと、「あの石段を上がるなんてことわたしには絶対にできないと思ったからよ」と答えた。 「新潮」平成11年6月号

 感想と言うよりも、あらすじの要約になってしまったみたいですね。感想を書くならば、いいいい、これいい、面白い、ぐらいしか書けないと思うもんですから。


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