熊谷公男『大王から天皇へ』
(2001年1月10日講談社日本の歴史03)

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 講談社の日本の歴史シリーズは定期購読しているのですが、どんどん配本されるばかりでなかなか読み進みません。年末年始のお休みにやっとまとまった時間が取れて、これを読めました。出たのは一年も前です。既に後続の巻が12冊ほど溜まっています。何とか時間を見つけて読み進めたいですね。


 前の巻がかなり読むのに時間がかかったのは、時間が取れなかったということもありますが、ちょっと読みづらかった、ということもありました。読みづらかった理由は、私の考古学に対する知識不足、ということもあるでしょうが、文章がちょっと晦渋、ということもあったのではないかと思います。あちこちの遺跡の名前なんかが次々に出て来て、その都度それってどこ?なんて考えるとなかなか進まないのです。
 それに対してこの巻は割とすんなり読めました。考古学的な知識も一杯出て来るのですが、基本的に日本書紀に書かれた時代を辿っている。私は日本書紀をまともに読んだことはありませんが、あれは年代記なので、要するに時代順に記述されているから、それを下敷きにした本巻も、ほぼ時代順。
 とはいえ、筆者はいまどきの歴史学者として当然の事ながら、日本書紀の記述を鵜呑みにするわけではない。あれはあくまでも「天皇」号や「日本」という国名が誕生した天武天皇時代の歴史観を反映した物であり、その時点で何百年も前のことを記録した物などはかなり錯綜していたから、それらを取り合わせた結果あちこちに矛盾も生じているから、そのまんま下敷きにすることは出来ない。そこで中国や朝鮮の歴史書や考古学的成果などを取り入れて、日本書紀の虚構をあばきつつ読み解いて行く。そういう記述の構造がわかりやすいということが、読みやすかった理由の一つでしょう。
 後続の巻もこういう風に読みやすいといいなと思ってます。