網野善彦『「日本」とは何か』
(2000年10月24日発行講談社日本の歴史00)

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 まずカラーの口絵に

「日本」という国号は、七世紀末に決まった
「日本海」は大きな「内海」だった
「異形の者」たち
市庭に集まる様々な人々と産物
物売りは女性たちの仕事だった
海は古来、活動の場だった

 というキャプションが付いています。これらが350ページ余りの本文を物語っています。従来日本という国がいつからあったのか、よくもわからずにここは日本であり自分たちは日本人だと考えて来ましたが、この本によれば日本という国号が決まったのは7世紀末の天武天皇の時代。だからそれ以前に日本人はいなかった。だからそれ以前のこの列島について、日本の旧石器時代とか縄文時代とか弥生時代と、日本を冠して呼ぶのも間違い。しかも日本になった時点でまだそれは西日本の一部でしかなく、関東や中国・四国・九州、まして東北・北海道、更にずっと後に国として独立することになった沖縄(琉球)は日本ではなく、それら周辺地域は大和を中心とする日本国の主権者達が、長年かかって侵略を続けた結果日本に組み込まれたのである。しかし組み込まれてもなお、関東や東北・北海道、四国や九州には、近畿地方とは全く異なる言語・文化や生活様式が残り、今の日本を到底単一民族の国家であるとは言えない。それと絡んで「天皇」という国王の称号も天武時代に創り出されたものであり、それ以前には天皇はいなかった。しかもそれ以後も、国内では天皇と称しても、中国の皇帝達に向かって正式な文書で天皇であると主張することは、かなり後まで(いつまでだったかな(^_^;))出来なかったという。
 その論をはじめとして論点は多岐に亘り到底要約は出来ません。ともかくこれまで漠然と考えて来た(多くの人が、私も、歴史家も)日本や日本人に対する考え方が、根底から覆されるような内容で、しかも言われてみればとっても共感できる、感動的な本でした。ページが多いので読み切るのにちょっと時間がかかりましたが、読んでよかった、という本です。


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