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アイヌ民族村で
LAST UPDATE 2004-03-01

 教員採用された年の夏、いやいやながら文部省(当時)の洋上研修に参加させられました。予算1億円の新任教員の研修です。当時テレビでも連日放送されました【爆走、文部省研修参照】。そのなかで、北海道は阿寒湖近くの「アイヌ民族村」を訪れた時の話です。

アイヌ彫刻品が土産物として売られていましたし、アイヌ民族衣装を着て記念撮影というお店でカメラに向かってポーズを撮っている教員もいました。僕は、芝居小屋に足を運びました。熊を狩った後の感謝の踊りというのを見物しましまたが、「簡単な踊りだから、一緒に踊りませんか?」との舞台からの誘いかけに応じて舞台に登りました。にこやかな若い女性の踊り子さんたちに混じって、笑顔を見せない年輩女性の踊り子さんがいました。「愛想が悪いなぁ」と思ったのですが、そのまま踊りを教わりました。

 やがて、芝居小屋を後にした僕は、ある彫刻品のお店に「アイヌ資料館(だったかな?)」の看板を見つけ、地下室へと降りていました。そこには、和人との戦いで活躍したアイヌの肖像画が幾枚も掲げられていましたが、老人の男性が彫刻を彫っています。ほとんどの彫刻品店では、店頭で彫刻する姿を見せてくれているのに、その老人は地下室で彫っているのです。店頭で彫れば客引きになるのに、と思った時、あっ!と気づいたのでした。何のために彫刻を彫るのか?それは客引きの見せ物のためではないんだ。そして、それはあの愛想の悪い年輩の女性にも言えるんではないか?熊を狩った時の踊りは、熊に捧げるためのものであって、観光客相手の見せ物じゃないんだ。

 地下室から出てくると、その「アイヌ民族村」の存在自体が大きな矛盾に満ちたものに見えてきて、そこで働くアイヌの方々の笑顔の向こうには、きっと悔しさがあるんだろうと思ったのです。特に年輩の方々の、悔しさや怒り・嘆きや訴えを感じること無しに、記念写真だけ撮って、お気に入りの彫刻品を買うだけで帰るなんて事があってはいけない、と強く思いました。

 文部省の研修では、そこはあくまで観光・気晴らしのための立ち寄りというぐらいの位置づけでしかなかったと思います。いや、浅はかなアリバイだったのでしょう。(eatyhiroさんへの新掲示板レス、04/2/27、3/1一部語句修正)