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【13】難易度★★ 出題日時:2002年
1月12日(土)20時20分54秒、応募締切2002/1/21 6:00 ある島の住人がこう言いました。 「この島の住人の言うことはみんなウソだ!」 さて、この住人の言っていることは本当でしょうか? A 本当である B ウソである C どちらとも言えない |
これは、古代ギリシアはクレタ島に伝わる、哲学史においては有名な命題なんです。
さて、「この島の住人が言うことはみんなウソだ!」とすれば、この島の住人であるこの人のこの言葉も「ウソ」になり、「ウソだ」ということが「ウソ」なんですから、「この島の住人の言うことはみんなウソではない」または「この島の住人の言うことはウソとは限らない」ということになりますね。二つの場合に分けて考えましょう。
まず前者の場合、「この島の住人の言うことはみんなウソではない」ということは「この島の住人の言うことはみんなホントだ!」ということだから、この人の「この島の住人が言うことはみんなウソだ!」というこの言葉は「ホント」だということになり、「この島の住人が言うことはみんなウソだ!ということは、ホントだ!」つまり「この島の住人の言うことはみんなウソだ!」ということになります。ということは.....、おっと、最初に戻ってしまいました。これでは、「ウソ」か「ホント」か分かりませんね。
次に後者の場合、「この島の住人の言うことはウソとは限らない」ということは「この島の住人の言うことはウソかホントか分からない」ということだから、この人の「この島の住人が言うことはみんなウソだ!」というこの言葉は「ウソかホントか分からない」ということになり、「この島の住人が言うことはみんなウソだ!ということは、ウソかホントか分からない」つまり「この島の住人の言うことはウソかホントか分からない」ということになります。だからこの人の「この島の住人が言うことはみんなウソだ!」というこの言葉は「ウソかホントか分からない」ということになり....、やれやれ、同じことの繰り返しになってしまいました。
つまり、どちらにせよ、この島の住人の言うことは「ウソかホントか分からない」ということになります。ということは、「みんなウソだ!」とは断定できないのだから、この人の「この島の住人が言うことはみんなウソだ!」という言葉は正しくない、つまり「ウソ」ということになります。
この島の住人の言うことはウソかホントか?、という問いならば正解はCになるんですが、この住人の言っていることはウソかホントか?、という問いですから、正解はBです。
いかがでしょうか?これは「エピメニデスのパラドックス」と呼ばれるものです。
エピメニデスとは古代ギリシアのクレタ島の人ですが、エピメニデスが「自分はうそつきだ」と言ったとされ、そこから生まれた言葉の真偽に関わるパラドックス(背理・逆理・逆説)です。
パラドックスとは何でしょうか? 紛らわしいけれど、実はタネやシカケがあるものを「トリック」と言いますが、根本的に矛盾しているもの、つまり真理と真理に反するものが一体化したものを「パラドックス」といいます。
「アルキメデスは先に出発したカメに追いつけない」なども、こうしたパラドックスの例です。古代ギリシアにおいては、奴隷や女性に労働を押しつけ、男性市民階級はヒマでしたし、やがては弁護士のいない裁判で雄弁さが求められたこともあって、お喋りの技術は人気取りのテクニックや、自らの命を救うものでもあったのです。そのため、こうした言葉遊びのようにみえるものも、真剣に哲学的考察がなされたというわけです。
実はね、この解説を書くまでは、kurochan自身は、Cが正解だと思っていたんです。ですから、今回Cと解答してくださった方々には、申し訳なくて、申し訳なくて.....。ゴメンネ!