作者 雲丸

 タイトルリスト

・「萌えて、お兄ちゃん」
・「ネコミミ編」
・「ナースな妹編」

・「わんわん編」・「ねこねこ編」
・「いけない関係編」
・「お兄ちゃんといっしょ編」

 注:全タイトルを通して「萌ちゃん」という妹キャラがでてきますが、それぞれ設定が違います。お話的な繋がりはないのでご了承ください。「わんわん編」「ねこねこ」編はのぞきます。


  ミニミニ妹劇場  「萌えて、お兄ちゃん」

「お帰りなさい、お兄ちゃん」
 家のドアを開け、あたしは笑顔でお迎えする。
「ああ、ただいま……って、うおっ? な、何だ、その格好は?」
「裸エプロン」
「何ィっ?」
「……は、さすがに恥ずかしすぎるから、代わりにスクール水着エプロン」
「す、スク水エプロン……だとおっ?」
 そう。スクール水着の上から、エプロンをつけているのである。
 裸になれない代わりに思いついたのだが……これはこれで、お兄ちゃんのマニア心を刺激できるはず。
「ねえ、お兄ちゃ〜ん」
 と、あたしは猫なで声をだす。
「なにか、してほしいこと……ない?」
 そう言って、あたしがお兄ちゃんを見ると――
 いきなり手刀がとんできた。
 げしっ。
「はうっ」
 顔面直撃だった。
「あうう〜っ、顔はひどいよぉぉ〜」
「似合わんことするからだ。十年早いわっ」
 スタスタと、あたしをよけて廊下を歩いていくお兄ちゃん。
「ま、待ってよぉ。なにがいけないの?」
 あたしは慌てて追いかける。
「この格好、萌えるでしょ? お兄ちゃんてば、素直にそう言ってよ」
「…………」
 お兄ちゃんが、足をとめた。
「よし、そこまで言うなら――」
 振り返り、あたしを見る。
「いいこと……してもらおうかな?」
「え?」
 あたしは驚いた。
 お兄ちゃんが真面目な顔で……あたしに迫ってくる!
「だ、だめだよ、お兄ちゃん。う、嬉しいけど、あたしまだ中一だし……こ、心の準備が――」
 ちなみに、お兄ちゃんは大学生。今日、成人式が終わって、晴れて大人の仲間入りをはたしていた。
「……ダメ、なのか?」
 お兄ちゃんが、あたしを見る。
 そ、そう言われても……。
 う〜ん、その気になってくれたのはいいけど……展開がはやすぎる〜!
 でもこんなチャンスは滅多にないし。
「……ちゅーまでなら、い、いいよ」
 思い切って――あたしは顔を上げ、目を閉じた。
 お兄ちゃんの手が、あたしの肩に触れる。
 顔に息がかかるのを感じた。
 ……ああ、いよいよお兄ちゃんと……どきどき。
 しかし。
 唇に触れたのは、想像とは違うものだった。
 かたい感触。唇とは、あきらかに違うカタチ。
 ……え?
 と、思う間もなく――それが、口の中に入ってきた!
「んっ、んんん〜っ!」
 苦しい。かたい棒状のものが、ズブズブと侵入してくる。
 目を開けると、そこにはお兄ちゃんの顔があった。笑みを浮かべながら、あたしを見下ろしている。
 お、お兄ちゃん、一体あたしの口に何をいれたのっ?
 てっきりキスしてくれると思ってたのに……ひどいよ〜っ!
「どうだ、うまいか?」
 お兄ちゃんが、にやにや笑って言う。
 う、うまいかって……こんな棒みたいなもの、おいしいわけが――って、あれ?
 ぱっくん。
 ……噛み切れちゃった。
 固いものだと思っていたら、案外やわらかく、そして甘い味がする。
 ……って、これ、バナナじゃない!
 なんでバナナがっ?
「俺の好物がバナナだからな。いつもふところにいれてある」
 と、お兄ちゃんが解説した。
 好物だからって、持ち歩くな〜!
「ふふんっ。お前のような子供には、バナナでじゅーぶんだ」
「ひっ、ひっどーい! お兄ちゃんのばかあっ! こうなったら……お兄ちゃんの
バナナ、ぜんぶ食べてやる〜っ!」
 あたしはお兄ちゃんに抱きついた。
 服をまさぐり、バナナの隠し場所を探していく。
「こ、こら、やめろって! う、うわっ、どこに手をいれてんだ!」
「おとなしく、バナナをだしなさ〜いっ!」
 
 そんなやりとりをしながら、今日も一日が過ぎていく。
 相変わらず冷たいお兄ちゃんだけど……いつか、あたしに萌えさせてみせるからね!
 覚悟するよーに。

「あ、バナナみ〜っけ」
「そ、それは違う〜っ!」

  おわり。


  ミニミニ妹劇場  「ネコミミ編」

「お兄ちゃん……どうしよう」
 突然、妹が部屋にやってきて、潤んだ瞳で俺を見た。
「どうしたんだ?」
 現在、妹はあるマッドサイエンティストのせいで、身体が半分猫化している。
 見かけは人間と同じだが、ただ――猫耳と尻尾が生え、そして、ある習性まで猫になっていた。
「あたし、発情期になっちゃったみたい……。我慢できないよぉっ……お兄ちゃん、助けて……」
「な、何ィーーーっ!」
 このことは二人きりの秘密だった。
 当然、他の奴に相談なんてできない。
 ということは、俺が相手をするしか――い、いや、しかしこいつは妹だ。そんなことをするわけには――!
「せつないよぉ、お兄ちゃん……。あたし、お兄ちゃんならいいから……お願い」
 ぷっちーん。
 そのセリフを聞いた瞬間、俺の理性を保つ糸は、あっさりと切れていた――。

  おわり。

  ミニミニ妹劇場  「ナースな妹編」

「ぬ、脱がすよ、お兄ちゃん……」
 そう言って妹の萌が、おそるおそる、俺のパンツに手をかける。
「……何、緊張してるんだよ?」
 俺はベッドに寝たまま、動けないでいるのだが……。そんな顔をされたら、こっちまで緊張してきてしまう。
「だ、だってぇ〜……こういうことするの、初めてなんだもん」
 妹の顔は真っ赤だった。
「他の人にすればいいのに、お兄ちゃんてばわがまま言って……『萌じゃなきゃイヤだ〜』って、騒ぐんだもん」
「ふんっ……。妹の初めてを、他の奴にゆずるわけにはいかないからな。何のためにここに来たと思ってるんだ」
「そ、そんな誤解されるようなこと言わないでよぉ、もうっ……。と、とにかく、始めるからね」
 萌はゆっくりと、俺のパンツをずり下ろしていった。
「きゃっ」
 パンツからでてきた俺のモノを見た途端、萌が悲鳴を上げる。
「おいおい、なんだよその反応は? 研修とかで教わってないのか?」
「だ、だってぇ〜……」
 と、萌はうつむいた。
「つい見栄はって、『あたし経験豊富ですからバッチリですよ〜』って言っちゃったんだもん……」
「あのな……」
 ……経験豊富どころか、妹は男と付き合ったこともないはずだ。
 そのへんのことは、日記をこっそり読んだりして、調査済みである。
「でも……へえ〜。これがお兄ちゃんのなんだ……」
 少し落ち着いたのか、萌えは興味津々、といった感じで顔を近づけてくる。
「子供の頃見たのと、なんかカタチ違う……。それに毛もいっぱい」
 つんつん、と先のほうをつついてきた。さらに軽く持ち上げてみたり、袋のほうまで触り始める。
「うわ〜……ホントに二個玉があるよ〜」
「おい……。ひとのモノで、そんなに遊ぶなよ……」
 さすがにちょっと、恥ずかしい。
「あ、ごめんね」
 ぺろっ、と舌を出して笑う。
 ……その舌をもう少し下げたら、俺のモノにあたるな。
 なんて、軽く妄想をしてしまったのがいけなかった。
 妹に見られてることと、触られてること――。これらの相乗効果で、俺のモノが急速に膨張していく。
「き、きゃっ」
 妹の手の中で、むくむくとモノがそそり立っていた。
「わわっ……」
 男性の反応する様を見たのは、初めてなのだろう。
 萌は目を見開き、そのまま動けないでいる。
「……あー、すまん」
 さすがに、ちょっと気まずく思った。が、萌は興味のほうが強いようだった。 
「す、すごい……。こんな、あっという間に大きくなっちゃうんだね……」
 先のほうから竿の部分へと、感触を確かめるように、手を滑らせていく。
 ……って、お、おい。
 そんな触り方したら、我慢が……。
「も、萌……」
 俺は、妹の顎に手をあて、こちらを向かせた。
「……お兄ちゃん?」
「俺のを大きくしたんだ。だから――責任をとってもらおうか」
「責任?」
 萌は首をかしげた。
「……どういうこと?」
「だから〜」
 と、俺は自分のモノを指さす。
「萌のせいで、俺のコレが大きくなったんだ。だから、萌は責任をもって、これを小さくしなければならないわけ。OK?」
「…………」
 萌は無言のまま、俺のモノに熱いまなざしを向けていた。
 だがその表情からは、わずかに迷いの色がうかがえる。やっぱり兄妹でこういうことをすることに、抵抗があるのだろうか。
 俺はまあ、別に構わないんだけど……。どうせ義理の関係だし。
「あの……お兄ちゃん?」
 俺のモノを握ったまま、萌は目線を上げた。
「な、なめれば、いいんだよね……?」
「そうそう。経験豊富なんだろ? 俺にもそのテクを見せてくれよ」
 少し意地悪に言ってみた。
「もうっ、お兄ちゃんったら知ってるくせに」
 萌は唇をとがらす。
「……わかったよ。じゃあ、ちょっとだけ……だからね」
 妹の顔が近づき――俺のモノに、熱い息が感じられた。
「あ〜ん……」
 萌が口を開け、俺のモノをのみこんでいく。
 ……ああ。ついに義理とはいえ、兄と妹が、いけない関係に進みだしたのか。
 この背徳感が、なんともたまらない。
 俺の興奮はますます高まり、股間がさらに熱さと固さを増し――
「がぶり」
 妹が、かんだ。
「…………」
 一瞬、呼吸がとまる。
「んんーっ」
 萌はモノに歯を食い込ませたまま、顎をひいていく。先のくびれた部分に引っかかっても、勢いを止めることなく――。
「……ぎやああああああっ!」
 俺は絶叫していた。
「ど、どうしたの、お兄ちゃん?」
 俺の悲鳴に、萌が口を離す。
「アホかぁぁぁーーーっ! 歯を立てる奴があるかぁぁぁーーーっ!」
 股間に走る激痛に、俺はベッドの上で転げ回る。本当はおとなしくしていないといけないのだが、今はそれどころではない。
「え? い、いけなかったの? 確か勃起って血液が集まるって聞いたから、口で吸い出せばいいのかなーって思って」
「お前、本当に看護士かっ?」
 何なんだ、そのエッチに興味を持ち始めた中学生のうわさ話のような、うさんくさい知識は!
「……ご、ごめんなさい」
 萌はうつむいてしまう。
「そ、そうだよね。やっぱりあれじゃ痛いよね。あたしも痛いんじゃないかとは思ったんだけど……」
「そう思ったならやめとけっ」
「で、でも、痛いのは最初だけで、だんだん気持ちよくなるっていうし……」
「それはまた違う話だろっ」
 しっかりしてくれよ、萌っ!
「あ、そうだ」
 いきなり、パッと妹の顔が輝いた。
「口でするのがダメなら、これよね」
 そう言って、取り出したものは――
「ちゅっ……注射器っ?」
 蛍光灯に反射し、先端が冷たい光を放つ。
「これで、ちゅーっと吸い出しちゃおうよ。あたし、注射は自信があるんだよ。先生にも上手だってほめられたし」
「ほっ……本気かっ?」
「もちろん」
 にっこり笑う萌。無邪気な笑顔が、たまらなく怖い。
「さあ、覚悟してね、お兄ちゃん。大丈夫。痛いのは最初だけだから――」
「か、覚悟できるかーーーーっ!」
 俺はベッドをおり、病室を抜け出した。
「あ! ま、待ってよぉ、お兄ちゃん!」
 注射器を振り上げ、萌が追いかけてくる。
「く、来るなーーーーっ!」
 や、やっぱりアレか?
 俺がヨコシマなことを考えたのがいけなかったのか?
 てゆーか、盲腸の手術前なのに、走って大丈夫なのか、俺? なんだか、おさまっていた痛みがぶり返してきたんだけど……。
「お兄ちゃーん!」
「うわああっ!」
 萌が後ろに迫る。止まるわけにはいかない!
 俺たちは、病院内を走り回り――それは約五分間、医者や他の看護士にとめられるまで続いたのだった。もちろん、俺たちがたっぷり怒られたのは言うまでもない。
 まあ、あの様子なら、患者にセクハラを受けても大丈夫そう……だな。
 はは……は……。
 はあ……。

 おわり。
 ……すいません。こんなオチでした。


 妹劇場 「わんわん編」

「ねえ、お兄ちゃん。あたし、わんちゃんが飼いたい」
 明日、七歳の誕生日を迎える妹の萌が、そんなことを言い出した。
「ごめん、無理……」
 親が動物嫌いだし。それに俺に頼られても、まだ中学生だからどうにもならない。
「わんちゃん、ほしい……」
 うるうる。
 涙ぐむ萌。何とかしてやりたいが、こればっかりは……。
 あ、そうだ。
「よし。今日一日は、お兄ちゃんが犬になってやろう」
「え、ほんと?」
「ほんとだよ。わんわんっ」
 俺は膝を曲げ、犬のように座り込んだ。
 ……他人が見たら情けない格好だが、これもかわいい妹のためだ。
「じゃあっ、じゃあねぇ」
 萌が、興奮気味に言う。
「お手して、お手っ」
「わんっ」
 俺は差し出された萌の手に、自分の手を乗せた。
「わーい。いい子いい子」
 頭を撫でられる。正直、悪い気はしない。
「じゃあ、お座り」
「わんっ」
 もう座ってるけど、少し身をかがめるようにする。
「いい子いい子〜」
 笑顔で俺の頭を撫でる萌。
 ……ちょっと癖になりそうだ。
「えっとえっと〜、じゃあ次はね〜」
 頬に指をあてて、ひっしに考えている。
「あ、そうだ。ちんちんっ」
「わんっ……って、なぬっ?」
 動きが止まる。
 ちんちんって……あ、あれか? お、俺の股間についているものを……み、見せるのか?
「わんちゃんがしゃべっちゃダメだよぉっ。ほら、早く。ちんちん見せてよぉ」
 無邪気な笑顔の萌。
 ……いや、考えすぎだな。思春期だしな、俺。ついそういう方向に考えちゃうけど、いけないよな。あはは、は、は……。
「わんわんっ」
 俺は少し膝を上げ、おなかを見せるような格好になる。これでちんちんはクリアだ。
「ダメぇっ」
「……え?」
「ちゃんと見せてくれなきゃダメだよっ」
「なぬぅっ?」
 何を言い出すんだ、萌。
「で、できるわけないだろっ」
 思わず立ち上がり、声を荒げてしまう。
 しかし、それがまずかった。
「うわぁ〜んっ、お兄ちゃんのバカぁ〜っ」
 泣いて、走り出してしまう。
「お母さ〜んっ。お兄ちゃんが、ちんちん見せてくれないよぉ〜っ」
「うわぁぁぁぁぁっ」
 な、何で、母さんのところへ行くんだーーーっ。
「け、健二。あんた、萌に何を教えて……」
 台所から、目をつり上げた母さんがやってくる。
「ご、誤解だーーーっ」

 しかし俺の叫びもむなしく、この後母さんにたっぷり叱られたのだった……。
 ……萌のバカ。かわいいけど。 

  妹劇場  「ねこねこ編」その1

 

「これ、なあに?」
 紙袋を受け取った萌が、興味津々といった顔で俺を見る。
「明日、八歳の誕生日だろ? 一日早いけど、プレゼントだ」
「わあっ。ありがとう、お兄ちゃん。開けていい?」
「もちろん」
 俺が頷くと、萌が紙袋を開け、中のものを取り出した。
「え、なんだろ……?」
 最初は、ちょっと首を傾げる。が、すぐに気づいたようだ。
「あっ、ネコさんの耳だぁ〜。わ〜い」
 萌はさっそく頭につける。
「にゃ〜ん。……どう、かわいい?」
 俺のベッドの上で、猫のようにごろごろ転がってみせた。
 ……か、かわいいじゃないか。
 小遣いはたいた甲斐があったなあ、としみじみ思う。
「よーし。それじゃあ、俺も」
 と、隠し持っていたネコミミを、俺もつけた。
「わ、おそろいだね〜」
「ああ。そこで、だ。せっかくだから、二人でネコさんごっこをしないか?」
「するする〜」
 新しい遊びに、萌は期待の目で俺を見つめていた。

  妹劇場 「ねこねこ編」その2

「でも〜ネコさんごっこって、何すればいいの?」
「寝る」
 俺はごろんとベッドに転がった。
「さあ、一緒に寝ようじゃないか」
「やだ、つまんない〜」
「だって、『ネコはこたつで丸くなる〜』っていうだろ?」
 ……実際、俺も何をすればいいのか、よくわからないんだが。
「んー……。あ、じゃあ、ペロペロする〜」
「……ペロペロ?」
「お母さんネコがね〜、よく子供のネコをなめてるよ〜」
「ああ、そういえば……」
 でも、だからって、それはちょっとなあ……。色々まずいし。
 と、そのとき。部屋の下のほうから、叫び声みたいなものが聞こえてきた。
「何だ?」
 窓を開け、二人で覗き込む。
 すると軒下に、二匹のネコがいた。しかも一匹のネコが、もう一匹のネコの上に、乗っかるような格好をしていた。いわゆる……アレの最中だ。
「……何してんのかな?」
 萌が、不思議そうに俺を見る。
「すごい声だしてるけど……ケンカならとめなきゃっ」
「いや、ケンカじゃないんだ」
 出て行こうとする萌の肩を、ポンと叩いてとめる。
「あれは……その、愛し合ってるんだよ。たぶん」
「……あいしあう? でもあんなにすごい声……」
「いや、あれは……気持ちいいんじゃないかな? よく知らないけど……」
「……きもちいいの?」
「そう。交尾ってやつだな」
 ……って、八歳の妹に何を教えてるんだ、俺は。
「ふ〜ん……」
 萌が、もう一度ネコたちを見た。
 それから俺を見上げて――キラキラと輝く瞳で言った。
「あたしもしたい!」
「え?」
「あたしもお兄ちゃんと交尾する!」
「なにいーーーっ!」


  妹劇場 「ねこねこ編」その3


 驚いてのけぞる俺の上に、萌がぴょんと飛び乗ってきた。
 俺は妹に押し倒されてしまう。
「ねえねえ〜。あのネコさんみたいに、あたしたちも交尾しようよぉ〜」
「な、何言ってるんだ、萌っ」
 ふいをつかれて、俺は動揺していた。
 まあ、意味がわかってないから言えるセリフだろうが、かといって八歳の子にそれを教えるわけにもいかないし……。
「む〜っ、お兄ちゃんっ」
 やる気を見せない俺に、萌が不満そうに唇をとがらせる。
「してくれなきゃ、お母さんに言いつけるもんっ。『お兄ちゃんが交尾してくれない』って」
「よ、よせ。それだけはやめるんだ。頼むから」
 萌は自分のお願いを聞いてくれないと、母さんに言いつけることがある。
 単にわがままなことだと逆に萌が怒られるが、『交尾してくれない』なんて言ったら、俺が怒られるに決まっている。去年のような、小遣い停止という事態だけは避けなければっ(『わんわん編』で怒られた後、そうなった)。
「わ、わかったよ。ちょっとだけな?」
「やったー」
 萌がにっこり笑ってバンザイした。
 ……まあ、格好だけでもマネしてやれば、満足するだろう。
「じゃあ、えっと……こうでいいのかな?」
 ベッドの上で萌が手と膝をつき、お尻を突き出すようにする。
 ……自分が下だとわかっているのは、本能だろうか?
「じゃ、次はお兄ちゃんの番だよー」
 首だけ曲げて、こちらを見た。
「あ、ああ……」
 俺は突き出された萌の小さなお尻をつかみ、自分の股間を押し付ける。
 ……なんか……マネだけとはいえ、ちょっとドキドキするな。


  妹劇場  「ねこねこ編」その4
 

 俺は腰を突き出し、妹のお尻に股間をすりつけた。
「ひゃんっ」
 息が漏れたのか、萌が変な声を出す。
「な、何したの、お兄ちゃん。くすぐったいよ?」
「……交尾っていうのはな、こうやって前後に動かすものなんだ」
 俺はさらに腰を動かす。
「そ、そうなんだ? 変なの……ひんっ」
 萌が、また声を漏らす。それはまるで、あえぎ声のようにも聞こえ――俺はいけないことだと思いつつも、次第に興奮を感じ始めていた。
「お、お兄ちゃん。これが、あいしあって、きもちいいってことなの? よく、わからないんだけど……」
 萌が顔をしかめながら、後ろの俺を見た。
「それに、なんか固いものがあたってるけど……」
「えっ?」
 俺はハッとして、慌てて腰を離した。
 刺激を受けて興奮したせいか、モノが大きくなっていたのだ。
「お、終わり終わり。交尾はこれでおしまいっ」
「え〜、つまんないよ〜」
 萌が唇をとがらせる。
「もっと楽しいものだと思ったのに〜」
「楽しくないのっ」
 と、そこへ車のエンジン音が響いてきた。母さんが、買い物から帰ってきたらしい。
「いいか、萌? このことは、秘密だからな?」
「何で?」
「とにかく、秘密なのっ」
「んー……。よくわからないけど、わかった」
 そう言って、萌は母さんを出迎えに行く。
 ……ふう、危ない危ない。
 俺は冷や汗をぬぐう。
 何も知らない妹に欲望をぶつけようとするなんて……罪悪感がわきあがった。
 ……ごめんな、萌。
「おかえりー、お母さん」
 部屋の外から、声が聞こえてくる。
「ただいま。あら、一人で遊んでたの?」
「えっとねー。お兄ちゃんとお部屋で交尾してたのー」
 ――瞬間、家の中が沈黙した。
 そして激しい勢いで、ドアが開かれる。
「け、健二! あんた、萌に何をっ……!」
「ご、誤解だーーーっ!」 

 その後。何とか誤解として納得させることはできたが、変なことを教えたとして、小遣いはしばらく停止させられたのだった……。
 しくしく……。萌のバカ。俺もバカだけど。

 おわり。

 

  妹劇場  「いけない関係編」


「お兄ちゃん、好き。あたしと付き合って」
「だめ」
 告白した途端、速攻で返事がかえってきた。
 あまりに早すぎて、あたしはその場で固まってしまう。
 兄と妹という禁断の関係に、悩みに悩んでから一大決心し、ようやく告白にふみきったのに……。コトに及びやすいように、部屋に呼び出して、ベッドの上に座らせてから言ったのに……。
「どーして?」
 あたしはたずねる。
 お兄ちゃんは大学生で、あたしは高校生。年齢的には、釣り合いはとれてるけど……。
「……やっぱり、兄妹だから?」
「それもあるけど……な」
 お兄ちゃんは、困ったようにボリボリと頭をかく。
「気持ちはすごくうれしいし、お前のことはかわいいと思ってるよ。でも――」
「……でも?」
「俺にはもう……付き合ってる奴がいるんだ」
「えっ? う、うそっ!」
 そんなはずない。なにしろ、お兄ちゃんの交流関係はすべてチェック済みなのだ。親しい女の人なんて、いなかったはず――。
「だ、誰なの、いったい?」
 あたしはお兄ちゃんにつかみかかる。
「こ、こうなったら既成事実をつくるしか――」
 最後の手段。強引に顔を近づけ、キスを迫った。
「お、おいおいっ」
 けれどお兄ちゃんは、あたしを押さえて、なかなかさせてくれない。
 と、そのとき。
「やめて、お姉ちゃんっ」
 声がしたかと思うと、カラダが後ろにひっぱられた。あたしはベッドの下に落ちてしまう。
「いたた。誰なの……って、ゆっくん?」
 そこに立っていたのは、弟のゆーじだった。中学生だけど、まだまだ童顔の美少年だ。
「ごめんね、お姉ちゃん。話は全部聞いてたよ。でも……」
 ゆっくんは、潤んだ瞳でベッドの上へ行くと、お兄ちゃんの胸にとびこんだ。
 ……って、え? なんで?
「お兄ちゃん……」
「ゆーじ……」
 二人は見つめあい……そして、濃厚なキスを交わす。舌が重なり合い、くちゅくちゅという音がもれて、あたしにまで聞こえてきた。
 ……な、な、なんなの、これはぁぁぁっ! キョーダイで! 男同士でぇぇぇっ!
「すまん……こういうわけなんだ」
 唇を離したお兄ちゃんが、あたしを見て言う。
「俺はゆーじと付き合ってる。だからお前とは……付き合えない」
「ごめんね、お姉ちゃん……」
 二人が、あわれむような視線をあたしに向ける。
 ……そんな……そんな、バカなーーーっ!
「うわあああーーーんっ!」
 それ以上ここにいられなくて、あたしは部屋を飛び出したのだった……。

「ひっく……ひっく……。それでね、お兄ちゃんとゆっくんがぁ……」
「ああ、よしよし。元気だしなさいって」
 泣き続けるあたしの頭を、親友のあゆが撫でてくれる。
 部屋を飛び出したあたしは、近所でもある彼女の家へと来ていた。
 ……せっかく勇気をだしてお兄ちゃんに告白したのに、結果がこんなだなんて、あんまりだ。
「まあ、いいじゃないの。男同士なら子供もできないし。安心安心」
「よくなーい! 安心じゃなーい!」
 あゆのなぐさめの言葉は、ぜんぜんうれしくなかった。
「くぅっ……こうなったら」
 あたしは顔をあげる。
「あたしだって、女同士で付き合ってやるっ。あゆーーーっ!」
 彼女に抱きつこうとしたけど――
「やめなさいって」
 げしっ。
 チョップの一撃で、あたしのカラダは床に沈んでしまった……。
「あうう……」
 目からこぼれた水滴が、床を濡らしていく。
「お兄ちゃんのバカ……ゆーじのバカ……。男同士なんて……絶対ヘンだよ……」
「……あんたもじゅーぶん、ヘンだけどね」
 あゆのツッコミが、上のほうから聞こえてきたけど、あたしに反論する元気はなかった。
 ……しくしく。


 おわり。