妹劇場 「お兄ちゃんといっしょ編」その1


「あ、あんですと〜っ!」
 春の陽気に包まれた教室で、あたしたちはのんびりと給食の時間を過ごしていた。
 が、隣の席のあゆあゆ(本名・大月あゆみ)がいきなり大声を上げたので、一瞬、教室中の視線が集まってしまう。
「あ、何でもない何でもない」
 パタパタと手を振り、あゆあゆは視線をこちらに戻した。
「どうしたの、あゆあゆ?」
 と、前の席のゴンザレスまゆみちゃん(ゴンザレスは男子がつけたあだ名)が訊ねてくる。
「だって、この子ったら……」
 と、あゆあゆはあたしを見て、声をひそめて言う。
「中学生にもなって、まだお兄ちゃんと一緒に寝てるっていうのよ?」
「ええ〜っ?」
「うっそ〜?」
 同じ班の子たちが、声を上げた。
 ……そんな改めて言われると、ちょっと恥ずかしいけど。そんなに変かな?
「……もしかして」
 と、ゴンザレスまゆみちゃん(ゴンザレスと言うと怒るので、この呼び方は心の中でだけ)が、あたしを見た。
「萌ちゃんの家って……部屋が少ないとか?」
「ううん」
 あたしは首を振る。
「じゃあ、布団がないとか?」
「ううん」
 また首を振る。
 ……布団が買えないほど貧乏だと思われたのだろーか。だったらやだな。
「あー。違うの違うの」
 あゆあゆが訂正してくれた。
「この子、ブラコンだから。お兄ちゃんラブなのよ。でもまさか、一緒に寝てるとまでは思わなかったなあ」
「えー?」
「お兄ちゃんなんて、どこがいいのー?」
 他の子たちが、一斉に驚いた顔であたしを見る。
 ……何で他の子の反応は、こうなんだろう。
 あたしはお兄ちゃんが大好きなのに。
「とにかく、いつまでもそんなんじゃダメよ、萌!」
 ビシッ、とあゆあゆがあたしを指差す。何だか気合が入っていた。
「今日はあたしが泊まりにいってあげるわ! そして――」
 くいっとあたしの顎を持ち上げ、自分のほうへ向ける。
 ……あ、今ちょっとまずい。
「お兄ちゃんじゃなく、あたしと夜明けのコーヒーを飲みましょう?」
 あやしい目つきにあやしいセリフ。あたしは笑いがこみ上げてきて……耐えられなかった。
「ぶーっ」
 口の中の牛乳が拭き出し、弧を描く。
「きゃーっ」
 悲鳴を上げるあゆあゆ。
 あたしは悪くないけど……ごめん、髪にかかっちゃった。
 ポタポタと、白い液体が垂れてくる。ちょっと臭い。
「と、ともかく!」
 顔をハンカチで拭きながら、あゆあゆは言った。
「今日は泊まりにいくからね! 朝まで寝かさないんだから!」
「そんな〜。寝かせてよ〜……」
 明日は土曜日でお休みの日。お兄ちゃんと遊べると思ったんだけどな……。


  妹劇場 「お兄ちゃんといっしょ編」その2


「ただいま〜」
「おじゃましま〜す」
 放課後になり、あたしはあゆあゆを連れて、家に帰ってきた。二階建てのふつーの一軒家。布団だってちゃんとある。
「う〜ん、誰もいないのかな? ……まあ、あがって」
「は〜い」
 元気よく返事をして、あゆあゆは玄関にあがり――そして、自分の靴をそろえていた。
 えらいぞ、あゆあゆ。こーいう、しつけのできてる子、あたしは大好き。
「じゃ、とりあえず……あたしの部屋にいこっか?」
「うん。荷物、結構重いから大変なのよ」
 そう言って、あゆあゆはカバンを持ち上げてみせるけど……一泊するだけなのに、何を持ってきたんだろう。
 気にはなったけど、まずは部屋へと案内することにした。
 あたしの部屋は二階。ちなみに、隣がお兄ちゃんの部屋になる。
「わっ、かわいー」
 中に入った途端、あゆあゆが声を上げた。
 キャラクターもののカーテンや、ベッドシーツ、ぬいぐるみもたくさんあって、女の子らしい部屋だと、自分でも思う。……ぜんぶお母さんの趣味だけど。
「ふふふ……かわいいベッドね」
 荷物を置いたあゆあゆの目が、あやしく光る。
「でも――」
 くるりん、と振り向き、あたしを見た。あ……まずいかも。
「萌のほうが、もっとかわいいっ」
「わっ、ちょっとっ」
 あゆあゆがいきなり抱きついてきて――あたしはベッドに押し倒されていた。


 妹劇場 「お兄ちゃんといっしょ編」その3


「だ、だめだよ、あゆあゆ」
 あゆあゆが、あたしの胸に顔をすり寄せる。おなかのあたりに、あゆあゆの意外と大きいふくらみが押し付けられて……何だかくすぐったい。
「えっへっへっ〜」
 あゆあゆが顔を上げ、悪戯っぽく笑う。そして自分の長い髪の毛を一束つかんで、あたしの首筋をくすぐり始めた。
「や、やんっ。やめてよぉ〜」
 ぞくぞくと、全身が震える。『くすぐったい』と『気持ちいい』の中間みたいな感覚が続いて……あたしは何も抵抗できずにいた。
「せっかく二人っきりなんだから――」
 ふっ、と耳に息を吹きかけられる。
「ひゃんっ」
「ほらほら、もっと身を任せて」
 ……あ、あゆあゆったら、調子に乗りすぎだよー。
 こ、このままだと、あたしも変な気分になって……冗談で終わらなくなっちゃう〜。
「ねえ、萌……」
 あたしの胸にこぼれた髪の毛をかき上げ――あゆあゆが、あたしの大きくはないふくらみに、手を伸ばす。
「今度はこっち、触るからね……」
 って、もう触ってるよ。
 わわっ、も、揉んじゃだめだってば。
「お兄ちゃんのことなんて……忘れさせてあげるから」
 あゆあゆはそう言って、あやしく微笑んでいた。


 妹劇場「お兄ちゃんといっしょ編」その4


「……楽しそうだな」
 ドアのほうから、ふいに声が聞こえた。この声は、お兄ちゃんだ。
「あっ……」
 気づいたあゆあゆが、慌ててベッドからおりる。
 ……ふう、助かった。あのまま続けられたら……抵抗できたか、ちょっと自信がない。
「いやあ、それにしても……最近の中学生は進んでるんだなあ」
 大学生のお兄ちゃんが、しみじみと言う。
「誤解だよぉ」
「誤解ですっ」
 あたしとあゆあゆが、同時に声をだした。
「そ、その……ちょっと、ふざけあってただけで」
 ポッと顔を赤くするあゆあゆ。……おや?
「あ、あたし、大月あゆみといいます。今日はお泊りにきたので……よろしくお願いします」
 ぺこり、とあゆあゆは頭を下げる。
 ……そういえば、あゆあゆはお兄ちゃんを見るの初めてだっけ。
「ああ、よろしく。じゃあ、萌。またあとでな」
 お兄ちゃんが手を振り、自分の部屋へ入っていった。
「……萌ちゃ〜ん」
 ぽけーっとした顔で、ゆっくりとあたしのほうを見る。
「萌ちゃんのお兄さんって……カッコいいね」
 ……あ、あんですと?


  妹劇場 「お兄ちゃんといっしょ編」その5


「あんなカッコいいお兄さんだったなんて、反則よっ」
 ベッドの上であたしの隣に座るあゆあゆは、さっきから興奮した様子だった。
「あれじゃ、萌ちゃんがブラコンなのもしょーがないわね」
 うんうんと頷くあゆあゆ。
 ……学校ではブラコンはダメだって言ってたくせに。
「はっ……! そーいえば、一緒に寝てるって……まさか、このベッドの上でっ?」
「……ううん、お兄ちゃんの部屋で。こっちのベッドはあんまり使ってないかな」
「ちょ、ちょっと、訊くけど――」
 あゆあゆが、息がかかるくらいに近づいてきた。
「お兄さんとは……一緒に寝てるだけ?」
「……どういう意味?」
「だ、だからぁ」
 と、何故かあゆあゆの顔が赤くなる。
「十八歳未満にはあまりオススメできないような……兄妹ではしてはいけないようなことを、してないのかってこと」
「よ、よくわからないけど……」
 あたしは首をひねる。
「法律に触れるようなことなら……してないと思う」
 ……ホントは法律自体、よく知らないんだけど。
「本当? 本当ね?」
「う、うん」
「ふうっ、安心安心。それじゃー、一緒にお風呂に入りましょう」
 あゆあゆが、あたしの手をとり、立ち上がる。
「な、なんで?」
 ……その急展開は一体? 
「それはね」
 あゆあゆが、にやりと笑った。
「女同士の友情を、深めるためよ」
 ……よくわかりません。


  妹劇場 「お兄ちゃんといっしょ編」その6


「さあ、萌ちゃん――」
 脱衣場で、あたしとあゆあゆは向かい合っていた。
「脱いで」
「…………」
 にっこり笑顔だけど、その目はあたしに否定の言葉を言わせない気だ。
 仕方なく、あたしは制服のリボンに手をかけ、ほどいていく。
「う〜ん、いいわね〜」
 満足そうに頷くあゆあゆ。その視線が足先から頭の上まで移動し――あたしは、裸を見られてるような恥ずかしさを感じた。
「じゃ、次いくよ〜。じゃーんけーん、ぽんっ」
 あたしがグー。あゆあゆがパーだった。
「やった。またあたしの勝ちねっ」
「しくしく……」
「じゃ、また一枚脱いで〜。あ、靴下は最後よ。先に上着から」
「…………」
 何だかマニアックな指定をしてくる。
 そして上着に手をかけながら、あたしは思った。
 ……何やってんだろ、と。


 妹劇場 「お兄ちゃんといっしょ編」その7


「さ、脱いで脱いで〜」
 あゆあゆが、にこにこしながら言う。
「うっ……」
 さすがに、手がとまる。
 あたしは今、ジャンケンに負け続け、下着姿になっていた。ちなみにあゆあゆは――まだ一枚も脱いでいない。
 ……何だか理不尽なものを感じるのは、気のせい……かなあ。
「さあ、萌ちゃん。は・や・く」
 あゆあゆの瞳が、期待でキラキラと輝いている。
 ……女同士なのに、何を期待しているんだか。
 でも見つめられると、ちょっと緊張してしまう。
 あたしは背中に手を伸ばし、ブラのホックに手をかける。まだあんまり慣れてないので、スムーズにはいかない。
 そしてようやくホックがはずれ――肩ひもから、ずりおろしていく。
「萌ちゃん、かわいい」
 あゆあゆが、あたしの胸に顔を近づける。
 ……そ、そんなに見ないでよお〜。
 あたしの胸は、はっきり言って大きくない。まだあんまり揉めないし、ブラだって少し早いと思う。けど中学生になって、周りがみんなつけ始めたものだから、あたしだけつけないわけにもいかない……てなことで、買ってもらったわけだけど。
「萌ちゃ〜んっ」
「きゃっ」
 あゆあゆが、いきなり抱きついてきた。そして――あたしの胸に手を伸ばし、揉み始める!
「ちょ、ちょっと〜っ」
「いいからいいから。揉んだら大きくなるって言うでしょ?」
「し、知らないよ〜っ」
「まあまあ、あたしに任せて。あ、こっちのほうが揉みやすいかな?」
 正面にいたあゆあゆが、後ろに回りこむ。そして脇の下から伸びてきた手が、あたしの胸をすっぽりと覆ってしまった。
「そ〜れ、もみもみ〜」
「やぁんっ」
 振りほどこうとするけど、あゆあゆのほうが背も大きく、がっちりとつかまってしまっている。
 さらにあゆあゆの指が、胸の先のほうへと進み――あたしは身悶える。
「つ、つまんじゃダメぇっ」
 ……あ、あゆあゆったら、やりすぎだよぉっ。
 そ、それに、そんなに揉まれたら……な、何だか変な気分に……。
 だ、ダメだよぉ、うちにはお兄ちゃんだっているんだから。
 もしこんなところ、、見られでもしたら――
 ガチャリ。
 いきなり、ドアが開いた。
「……あ」
 一歩踏み出そうとして、お兄ちゃんが固まる。
 その視線は――あたしの胸に注がれていた。
 ――み、見られたぁぁぁ〜っ!


  妹劇場 「お兄ちゃんといっしょ編」その8


「ちょっと顔でも洗おうかと思ったんだが……」
 お兄ちゃんが、気まずそうに顔をそらす。
「お前たちがそういう関係だったなんて……邪魔して悪かったな」
 そう言って、ドアをしめた。
「お、お兄ちゃん、違うって。誤解だよぉーっ」
 あたしはドア越しのお兄ちゃんに向かって叫ぶ。けれど、あゆあゆに抱きつかれて裸の胸を触られてるという、この状態では……信じてもらえそうにない。
「うわーんっ。あゆあゆのおバカーっ」
「まあまあ、萌ちゃん。気にしちゃだめよ」
「気にするわよっ。って、いつまで揉んでるのっ」
 あたしはあゆあゆの手を引き離し、正面に向き直る。
「お兄ちゃんに誤解されたの、あゆあゆのせいなんだからねっ。責任とって何とかしてよっ」
「いいわよ」
 あゆあゆはあっさりと言った。
「……え?」
「このまま誤解させて……本当にこういう関係になっちゃうとかは?」
 あやしく微笑んで、またあたしに抱きつき――首筋に唇をはわせてくる。
「ひゃうっ。だ、だめ、そんなのっ……」
「じゃあ、もう一つの手段だけど――」
 あゆあゆが、唇を離して言った。
「あたしがお兄さんの恋人になれば、誤解はとけるわよね?」
 ……あ、あんですと?


 妹劇場 「お兄ちゃんといっしょ編」その9


「ダメーっ」
 あたしはあゆあゆに向かって言った。
「いくらあゆあゆでも、お兄ちゃんの恋人になるのはダメっ」
「……どーして?」
 あゆあゆが、にやりと笑う。
「じゃあ、誰ならいいの? まさか、萌ちゃん? ……でもそれはまずいわよねえ。血が繋がった兄妹なんだし」
「ううっ……」
 あたしは、言葉を返せない。
 ……今日のあゆあゆは、いじわるだ。
 そりゃあ、あたしはお兄ちゃんの恋人にはなれないけれど……誰かにとられちゃうのは、イヤだよ……。
「な〜んちゃって、うそうそ」
 あゆあゆが、急にパタパタと手を振った。
「……は?」
「だって、お兄さんもカッコよくていいけど〜。やっぱり、あたしは萌ちゃんのほうがいいなっ」
 そう言って、あたしはまたもや抱きしめられ、ほっぺをスリスリされた。
 ……な、なんなの、一体?
 あゆあゆとは二年くらい付き合いだけど……いまだに、よくわからないところがある。
「そ、それより、お兄ちゃんの誤解を解かないとっ……」
「だいじょーぶ、だいじょーぶ。それはあたしに任せて、早くお風呂に入って洗いっこしようよ」
「あ……っ」
 あゆあゆに抱きつかれたまま、スカートのホックをはずされてしまった……。
 ……も、もしかして、貞操の危機?
 

  妹劇場  「お兄ちゃんといっしょ編」 その10

 

「ほら、萌ちゃん。今度はパンツ脱がすからね〜」
 あゆあゆがしゃがみこみ、あたしのパンツに手をかける。
「や、やだよ、あゆあゆ……」
 いくら女の子同士でも、恥ずかしい。
 けれど、あゆあゆは言うことを聞いてくれず……パンツをずり下ろしてしまった。あたしのアソコが、あゆあゆの目の前にさらされる。
「そ、そんなに見ないでよぉ〜」
「萌ちゃんて、あんまりはえてないんだ……」
 あゆあゆは小さく笑って、あたしの毛を指先でもてあそぶ。
「ひ、ひっぱったら痛いよぉ、あゆあゆ」
「あっ……ごめんね」
 ペロッと舌をだすと、あゆあゆは手を離して立ち上がった。
「じゃ、今度は萌ちゃんの番ね」
 そう言って、両腕を広げてみせる。あたしは首をかしげた。
「……どういうこと?」
「今度は……萌ちゃんが脱がせて?」
「…………」
 しばらく迷ったけど――。
 あたしもさんざん胸を触られたり、脱がされたりしてるんだから、少しは反撃しようと思った。
「わかった。脱がすね……」
 あたしは、あゆあゆの制服へと、手を伸ばしていった……。

 

 妹劇場「お兄ちゃんといっしょ編」その11

 

 まずはあゆあゆの制服のリボンをほどく。そのときに手が胸にあたって、ぷにょん、と弾力がかえってきた。
「やあん、くすぐったい〜」
 あゆあゆが笑いながら言う。
 あたしにはないボリュームだった。
 続いて上着を脱がすと……白いブラが姿を現した。
 ……た、谷間がある。
 あたしは顔をひきつらせながら、訊ねた。
「あ……あゆあゆって、カップいくつだっけ?」
「え? Bだけど。萌ちゃんは……たしかAAよね。ギリギリで」
「う……うん。ギリギリで……ね」
 実際、ブラをつけるか微妙な大きさだし……。
「だいじょーぶ、だいじょーぶ。胸なんてすぐ大きくなるって」
「……そ、そう?」
「うん。もし大きくならなくても、小さいほうが好きな人も多いらしいし。だいじょーぶ」
「…………」
 ……なんか、嬉しくないと思うのは、気のせい?
「と、とにかく。あゆあゆ、足あげて」
 続けて、あたしはスカートを脱がせていった。
「萌ちゃん……」
 突然、あゆあゆが頬に手をあて、ふうと息をつく。
「な、なに?」
「あたしね……脱がされるのって、はじめてなの……」
   

  妹劇場「お兄ちゃんといっしょ」編 その12

「……はい?」
 あたしは首をかしげて、あゆあゆを見る。
 彼女は……頬を赤らめて、自分から最後の一枚――パンツを脱いでしまった。
「はだか、だね」
「そう……だね」
 あたしは頷く。同性とはいえ、何も着ないで向かい合うのは、さすがに恥ずかしい。
「萌ちゃん、かわいい……」
 すっ、とあゆあゆが一歩進み、あたしの肩に腕を回す。二人で抱き合うようなカタチになり、互いの胸と胸が直接触れ合った。
 ドキドキドキ……。
 やわらかいふくらみ越しに、あゆあゆの心臓の音が聞こえる。
 あたしの心臓も……聞こえているのかな。
「あの……ね、誤解しないでね。誰にでもこんなことするわけじゃないから」
「……え?」
 と、返事をするよりも早く――あたしの唇は、あゆあゆの唇でふさがれていた。
「んんっ……」
 勢いがあったためか、歯と歯がぶつかって、ちょっと痛い。でも、すぐにあゆあゆの味が唇から染みてきた。ぬるりとした熱くてやわらかいものが侵入してくる。
 ――うわ、舌はいってきた!
 ディープキス、というやつだろうか。はじめてのキスなのに、相手が女の子で、しかもこんなことされちゃうなんて……。
 でも不思議と、あんまりイヤな感じはしなかった。
 あたしはあゆあゆに抱きしめられたまま、口の中をかき回される。カラダの力が抜けて……頭がボーっとしてきた
「萌ちゃん……」
 あゆあゆが、ようやく唇を離す。
「はふう……」
 途端にカクン、と膝が落ちたけど、あゆあゆが支えてくれた。
「はあはあ、はあ……」
 あたしもあゆあゆも、息が荒かった。口の周りがベタベタする……。
「急にこんなことして、ごめんね……。でもあたし、萌ちゃんのこと好きだから……」
 そう言ってあゆあゆが見下ろしてくる。あたしはいつの間にか、床の上に寝かされていた。
「もうちょっとだけ、続けさせて……」
 ちゅっ。
 あたしの右の乳首が、あゆあゆの口の中に吸い込まれて見えなくなる。
「あんっ」
 自分でも不思議な、ヘンに高い声が出て――あたしはどうしていいかわからず、そのままあゆあゆに身を任せていた。


  妹劇場「お兄ちゃんといっしょ編」その13


「萌ちゃんの声、かわいい」
 小さく笑いをこぼしながら、あゆあゆがあたしの肌に舌をはわせていく。胸からおなかへ。そしてさらに下へ――。
 自然に声が高くなっていくのが、自分でもわかった。
 ……あ、あたし、エッチな声だしてるよぉ。
 あゆあゆにぜんぶ見られて……恥ずかしい声も聞かれて……カラダが熱くなって……。
 もう、よくわかんない……。
「……気持ちいいの、萌ちゃん?」
「んんっ……んーっ」
 訊かれて、咄嗟に首を振ったけど……きっと、あゆあゆにはばれてる。だって……お尻のあたりが濡れているから。たぶん、あたしがだしたもので――。
「んふふ……ここも、なめてあげるね……」
「あっ……そ、そこは……」
 慌てて起き上がろうとしたけど、あゆあゆに足を持ち上げられ、また床に背中をついてしまう。
 ちゅぷっ……。
 ぬめった水音が、脱衣場に響いた。
「ああっ、ダメぇぇっ……!」
 あゆあゆの舌が、侵入してきた。さっき口にされたことを、今度はアソコでされてしまう。
「あっ……んんっ……あああっ……」
 あゆあゆの舌先を起点にして、カラダ全体に熱さが伝わっていく。
 とけちゃいそう……。
 ……もうダメ。抵抗、できない。
 別にあゆあゆのこと、嫌いじゃないし……いいかな。このまま、流されちゃっても……。
 あんなところに口をつけて、一生懸命だし……。それに、ここでやめてほしくないし……。
 そう思うと、カラダの反応も素直に受け入れることができた。
「あゆあゆぅ……」
 あたしは――股間に顔を埋めている、彼女を見る。
「気持ち、いいよぉ……あゆあゆぅ……」
「うれしい、萌ちゃん……」
 微笑んで、あゆあゆは口を離した。そして膝をたてて起き上がり――あたしに向けて、腰を突き出すようにする。
「ほら見て、萌ちゃん……。あたしだって、萌ちゃんのを舐めてただけで、こんなだよ……」
 ぽたぽたと……雫が落ちていた。あたしのとあゆあゆのが混ざり合って……床には大きな水たまりができている。
「あゆあゆ……」
 ……ちょっと、びっくり。
 あゆあゆ……ホントにあたしのこと、好きなんだね。触ってもいないのに、そんなになっちゃうなんて……。
「ね……きて?」
 あたしは彼女を受け入れるように、両手を広げてみせた。
「二人で……気持ちよくなろ?」
「萌ちゃん……」
 あゆあゆが潤んだ目で、あたしを抱きしめる。
「うれしい……。萌ちゃんは、あたしのものだよ……。あたしだけの……」
「ダメだぁぁぁーーーっ!」
 バアアンッ!
 いきなり絶叫と共に、激しくドアが開かれた。
「……え?」
 一瞬、何が起きたのか理解できない。
 興奮しているのか、やや赤い顔であたしたちを見下ろしているのは――……え? お、お兄ちゃんっ?
 ……なんで? さっき出ていったはずなのにっ?
「……あ、おにーさん」
 あゆあゆが、あたしを抱きしめたまま、顔だけ向ける。
「股間が……大きくなってますね」
 それってまさか……。
 入ってきたタイミングといい、やっぱり……聞き耳たててたんだぁぁぁっ!
「きゃあああっ! お兄ちゃんのバカ! エッチーーーっ!」
 とりあえずあたしは胸を隠し、悲鳴を上げたのだった……。


 妹劇場「お兄ちゃんといっしょ編」その14


「萌! 女同士で、そんなエッチなことをするなんて……お兄ちゃんは許さん!」
「股間を大きくして言っても説得力ないわよ!」
 お兄ちゃんったら……もう、バカバカバカ! お兄ちゃんがこんなにエッチな人だなんて、思わなかったよ!
「……じゃあ、男の子だったらいいんですか?」
 にらみ合うあたしたちに割り込み、あゆあゆがぼそっと言った。
「そ、それはもっとダメだ!」
 ……じゃあ、どうすりゃいいのよ。
「つまり……相手がおにーさんだったらいいと?」
「うっ……!」
 お兄ちゃんの顔が、固まる。
「そ、それは……まあ、仕方ないかな」
 ポッと顔を赤くし、なぜか目をそむけた。
 ……仕方ないって、何?
「要するに――」
 あゆあゆが、ポンとあたしの肩を叩く。
「おにーさんは、萌ちゃんとエッチがしたいんだって」
「……は?」
 お兄ちゃんが……あたしと? エッチを?
「えええええっ!」
 あたしは絶叫した。
「お、お兄ちゃん、何考えてるの! あたしたち、兄妹なのよ!」
「萌ちゃん……おにーさんはね、いつも萌ちゃんといっしょに寝て、襲う機会をうかがっていたのよ」
「うわーんっ! お兄ちゃんのへんたーい!」
「こ、こら! そこのキミ! 勝手に話を進めないでくれ!」
 ……なんかもう、めちゃくちゃだ。
 お兄ちゃんがあたしといっしょに寝てたのって……そうだったんだ。あたしにエッチなことしようとしてたんだ……。うう〜、お兄ちゃんのバカ!
「って、うわ! 何してるんだ!」
 お兄ちゃんの悲鳴。
 見ると、あゆあゆがお兄ちゃんの腰にくっついている。……え? なにしてるの?
「んっ……しょっと」
 ジーッ、と、ファスナーを開く音。
 ぴょこん、となにかが飛び出した。
「わー、おにーさんのかたくておっきい」
 裸のあゆあゆが、お兄ちゃんの股間から飛び出した棒みたいものを、笑いながら手でしごいている。
 ……ちょ、ちょっとそれって……ま、まさか。
「んふふ……おにーさん、萌ちゃんにこういうことされたいって、ずっと思ってたんでしょ?」
 しゅっしゅっ、と肌と肌がこすれる音が聞こえる。
 お兄ちゃんは歯を食いしばり、赤い顔で呻いていた。
「こ、こら……やめないかっ……」
 あゆあゆの頭を押さえるけど、力が入らないみたい。
 ……お、お兄ちゃん……あゆあゆにこすられて……気持ち、いいの?
 ドキドキドキ……。
 見てるだけなのに、あたしまでなんだか顔が熱くなってきた。


  妹劇場「お兄ちゃんといっしょ編」その15


「うふふ……ピクピクってしてますよ」
 あゆあゆがあやしく微笑みながら、お兄ちゃんの大きくなったモノを、さらにこすっていく。
「うっ、くっ……」
 気持ちいいのか、お兄ちゃんは歯を食いしばって呻いていた。
 ……あ、なんか先っぽのほうから、透明な汁がでてきた。
 その汁は天井を向いたお兄ちゃんのモノを伝い、あゆあゆの手にたれてくる。
「おにーさん、でそうなんですか?」
 あゆあゆの上目遣い。
 ……でそうって、やっぱりアレ……なのかな。
 お兄ちゃんのモノは、痛いんじゃないかと思うくらいにカタくなってる。そしてあゆあゆにこすられるたびに、ピクピクして……もうどうにかなっちゃいそう。
 ……お兄ちゃん、だしちゃうの? あたしの前で、気持ちよくなってだしちゃうの?
 期待と心配が混ざり合った、ヘンな気分のまま、あたしは固唾をのんで見守った。
 ふと、あゆあゆが手をとめる。
「あっ……」
 お兄ちゃんは、残念そうにあゆあゆを見下ろした。
 そのときのあゆあゆの表情に、あたしも一瞬ゾクッとしてしまう。
「……おにーさん、だしたいですか? 萌ちゃんをくれるなら……あたしが代わりに気持ちよくしてあげますよ?」
「な、何言って……うぐっ」
 あゆあゆがの手に力が入り、お兄ちゃんが呻く。
「うん、って言えばいいだけです。そうしたら……手じゃなくて、舌でしてあげますよ」
 半開きになったあゆあゆの口が、お兄ちゃんの先っぽに近づいた。息がかかる距離だ。
 ……あゆあゆ。そんなに……そこまでして、あたしが欲しいの?
 ……お兄ちゃんも……そんなにあたしを取られたくないの?
 どうしよう。
 あたしは……どうしたらいいか、わかんないよ……。


  妹劇場「お兄ちゃんといっしょ編」その16


「まっ……待って!」
 あたしの声に、二人が動きをとめて、こちらを見た。
「お兄ちゃん……あゆあゆ……。二人とも、あたしの気持ちを無視して話を進めないでよ……」
 そう。決めるのは――中心にいる、わたしなんだ。
「萌ちゃん……」
「萌……」
「あたしは……ね」
 と、笑みを作りながら言う。
「お兄ちゃんも……あゆあゆも……二人とも、好き。だから……みんなで仲良くしよ?」
「萌……やさしいな。さすがは俺の妹だ」
 そう言ってお兄ちゃんは感動しているけど、対称的に、あゆあゆの目は冷たい。
「でもそれって……3Pってことじゃないの?」
 ……3P!
 そ、それってまさか……話には聞いたことあるけど、三人でえっちなことをするってこと?
「まあ、あたしはいいけど。おにーさんも、嫌いってわけじゃないし」
「お、俺もまあ……構わないが」
 って、二人とも! 
 なぜに話がそういう方向にいくのっ?
 あたしはただ、ふつーに仲良く……って、ああ、だめだ。
 二人とも、言葉は渋々だったけど、目だけはキラキラさせてあたしを見ている。
 ……やる気満々?
「はふぅ……」
 あたしはちいさくため息をつく。
 こうなったら、もう仕方がない。
 ここは覚悟を決めて――
 ……やっちゃいますか。


  妹劇場「お兄ちゃんといっしょ編」その17


「ほら、萌ちゃん。こっち来て……」
 あゆあゆがお兄ちゃんのモノをこすりながら、あたしを見る。
「おにーさんの、とっても熱くてカタくなってるよ……」
「う、うん……」
 あたしはあゆあゆの隣にきて、膝をついた。お兄ちゃんの大きくそそり立ったモノが、目の前にくる。
 ……男の人のを触るなんて、ちょっと抵抗あるけど。
 でも、お兄ちゃんのだし。大丈夫だよね。
「さ、さわるよ、お兄ちゃん……?」
 おそるおそる、手を伸ばす。
 顔を上げると、お兄ちゃんは熱いまなざしであたしを見つめていた。
 ……期待の目、なのかなあ?
「えいっ」
 思い切って、にぎってみた。
「うわ……」
 つい、声にだしてしまう。
 あゆあゆの言ったとおり、ホントに熱い。それにカタいし……。ドクンドクンって、鼓動が手に伝わってくる。
 ……男の人って不思議。
「う、うあっ……!」
 突然、お兄ちゃんが呻いた。
「え?」
 あたしが驚いていると、手の中のモノが大きく脈打って……先っぽから白い液体が噴射した。
「きゃんっ」
 避けることもできずに、それはあたしの顔に降りそそぐ。お湯をかけられたような……でもそれとは違う、粘ついた液体。それに、ヘンなにおい。
「こ、これって……もしかして……」
「すっごーい……。萌ちゃんがにぎっただけで、おにーさん、イッちゃったよ」
 あゆあゆが目を丸くしている。
 ……イッちゃったって……やっぱり、これ――精液?
「はあ……はあ……ご、ごめんな、萌。顔にかけちゃって……」
「お兄ちゃん……」
 あたしは顔を上げる。
 ……あのー。謝っているわりに、顔はすごーく嬉しそうなんですけど?
「えへへ……萌ちゃん。顔についたの、あたしが舐めてあげるね……」
 あゆあゆが両手をのばし、あたしの顔をはさんで動けなくする。そして唇をふさがれ……舌で舐められ……顔中を移動していく。
 ……く、くすぐったいよぉ。
「んふふ……萌ちゃんを舐めるのはこれくらいにして……今度はおにーさんを、二人でしてあげよっか?」
「お兄ちゃんを……?」
 その言葉に、ドクンと手の中のモノが鼓動した。
 一度発射したというのに、お兄ちゃんのは少しも小さくなっていない。
「うわあ……」
「おにーさんたら、すごい期待しちゃって」
 くすくす、とあゆあゆが笑いをこぼす。
「さあ、萌ちゃん。舌をだして……二人でおにーさんをイカせちゃお?」
「う、うん。……してあげるね、お兄ちゃん」
 あたしたちは舌を伸ばし、お兄ちゃんに触れていった……。


  妹劇場「お兄ちゃんといっしょ編」その18


 ぺろっ、とあたしは先のほうをなめてみる。さっき出した白いのが少し残っていて、なんだか苦い。それにちょっと粘り気もある。
「これがお兄ちゃんの味なんだあ……」
 正直、ヘンな味。でもあたしが舌を這わせるたびに、お兄ちゃんはビクビクと身体を震わせて……ちょっとかわいいかも。
「そうだよ、萌ちゃん。じっくり味わってあげてね」
 そう言ったあゆあゆは、体勢を低くして、あたしの下に回りこむ。そして――
「あ〜ん……はむっ」
 大きく口を開け、袋の部分を頬張ってしまう。
 ……あ、あゆあゆったら、そんなところまでしちゃうの?
「あっ……う、んんっ……ちゅっ……」
 もごもごと口を動かし、かき回すようにすると、ぴちゃぴちゃと音がもれてきた。つうっ、と唾液も垂れて、のどへと伝っていく。
「ぐ、ううっ……。そ、それっ……すごく、いいっ……」
 お兄ちゃんが、歯を食いしばって呻いていた。
 うわ、気持ちいいんだ……。
「よし、あたしも……」
 根元を手で押さえながら、先っぽのつるつるした部分を舌でなめまわす。そしてあゆあゆのように、口の中に含んでみた。
 ……えっ……と、ここからどうすればいいんだっけ?
「萌……上下に、動かしてくれるか? 歯をあてないように」
「う、うん……やってみる」
 お兄ちゃんがあたしの頭を撫でながら、そう指示する。
 ……歯をあてないように動かすって、むずかしそうだけど。
 でもあゆあゆだけじゃなく、あたしだってお兄ちゃんを気持ちよくさせてあげたい。
 だからがんばることにした。
「んっ……んむっ……」
 少しずつ、ゆっくりと奥まで呑み込んでいく。もう限界ってところまでいくと、今度は引き抜いていった。
 ……こんな感じでいいのかな?
 そう思ってお兄ちゃんを見上げると――
「うん……その調子だよ、萌」
 嬉しそうに、微笑んだ。
「あとは、もっと唾をためて、口の中全体でこするように……」
「う、うん」
 言われるままに、あたしはお兄ちゃんのモノに刺激を与えていく。
「ちゅっ……んくっ……ちゅぷっ……」
 口の隙間からいやらしい音が漏れるのが、ちょっと恥ずかしいけど……。でもそのたびに、お兄ちゃんはかわいく呻いて……もっともっとしてあげたくなった。
「萌ちゃんたら……才能あるかもね」
 あたしの下で、口を離したあゆあゆが笑いをこぼす。
 ……もう、あゆあゆったら。
「んぐっ……!」
 と、急に股間のほうに触れられ、あたしは身をすくめる。
「あ、口はそのままよ」
 何とか目だけ向けると……あゆあゆが、あたしのアソコを手を伸ばしていた。そして二本の指で、入り口のほうをかき回すようにする。
 ……や、やだぁ、感じちゃうよぉっ。
 あゆあゆはまたお兄ちゃんのモノを口に含み……あたしと同時に快感を与えていく。
 くちゅくちゅという水音が、上からも下からも聞こえて……も、もうダメ。
「ふ、二人ともすごすぎ……く、くぅっ!」
 突然お兄ちゃんがあたしの頭を押さえた。そして口の中へと、熱いものを放出する。
「んぐっ……ん、んんーっ!」
 びゅっ、びゅっ、ってのどの奥にあたっていた。からみついて、呑み込めない。
 ……く、苦しい。
 あたしはお兄ちゃんの手をよけて、慌てて口を離した。
「ぶはっ……げほっ、げほっ……」
 白く粘ついた液体が、あたしの口からボタボタと落ちる。
 ……こ、こんなの呑み込めないよぉ。
「大丈夫、萌ちゃん?」
「ごめん、萌。あまりにすごくて、つい……」
 二人とも心配そうに声をかけてくる。
 あたしは何とか笑みを作りながら、顔を上げた。
「う、うん、大丈夫。ちょっと苦しかっただけだから……けほっ」
 何とか呼吸も整い、少し落ち着いてくる。
 そんなあたしを見てあゆあゆは頷くと、
「ね、おにーさんはまだできます?」
 そう言ってお兄ちゃんに微笑み、あたしを押し倒した。
「きゃんっ」
 二人の肌が重なり合う。あたしの小さな胸は、あゆあゆの大きな胸でほとんど見えなくなってしまった。そしてあゆあゆに両足を抱えられて……熱く濡れた部分が触れ合った。
「んくっ……」
 あゆあゆのと少しこすれて、それだけでゾクゾクと身体に震えが走る。
「さあ、おにーさん。今度はあたしたちを……イカせて?」
 あゆあゆの声に、さすがに小さくなりかけていたお兄ちゃんのモノが……再びムクムクと大きくなっていた。


  妹劇場「お兄ちゃんといっしょ編」その19


「よ、よし……いくぞ」
 お兄ちゃんが、あたしとあゆあゆにゆっくりと覆いかぶさり――
「って、ちょっ……ちょっと待って!」
 あたしはあゆあゆのカラダ越しに、お兄ちゃんを見る。
「い、いれるのはダメ! ダメだよっ!」
 はじめてだから怖い――というのも、もちろんあるけど。
 やっぱり兄妹なんだから、そこまではしちゃいけないと思う。それに万が一、赤ちゃんができたら大変なことになる。
「お願い、お兄ちゃん……。それだけは……」
「……安心しろ、萌。それくらい、俺だってわかってる」
 お兄ちゃんは、しっかりと頷いてみせた。
「それに、いれたら三人で気持ちよくなれないだろ? だから――」
 ぐっ、とお兄ちゃんが腰を進めた。
「あっ――」
 下のほうから突き上げてくるような感覚に、あたしとあゆあゆが、同時に息を呑んだ。
 熱くて硬い棒が二人の塗れた間に侵入し、出たり入ったりを繰り返す。
「素股ってやつだけど――これなら、みんなで気持ちよくなれるだろ?」
 そう言いながら、お兄ちゃんはあゆあゆのお尻をつかんで、激しく腰を動かした。
 かきまわすような水音と、肉のぶつかる音。そしてあたしたちの声が更衣室の中で響き、次第に興奮も高まっていく。
「あっ、あんっあっ……ああっ……! き、気持ちいいよぉっ……!」
 あたしをぎゅっと抱きしめながら、あゆあゆが喘いでいる。これまで見たことのない表情に、あたしもゾクゾクしてきた。
「萌ちゃんっ……萌ちゃんっ……!」
 あゆあゆに、唇をふさがれる。
「ふっ、んんっ……んんーっ!」
 舌がからまり、口の隙間から激しく呼吸がもれた。ちょっと苦しい。
「ぷはっ……!」
 あゆあゆが唇を離す。
「ね、気持ちいい? 萌ちゃんは、気持ちいい?」
「う、うん、気持ちいい……あたしも、気持ちいいよっ……」
 恥ずかしくて、我慢してたけど――あゆあゆの恍惚とした表情に、あたしも耐えられなくなってきた。
「だったら、声だして? あたしといっしょに、萌ちゃんも――あっ、んっ……あぁぁっ!」
「う、うんっ……」
 あゆあゆにつられて――あたしの声も、自然に高くなっていく。
「はっ、はぁ、はぁっ……んあぁぁっ!」
 そして、お兄ちゃんも――段々、切羽詰ってきたような、かすれたような声になってきた。
「ううっ……おっ……おおっ……! いっ……イク! イキそうだ!」
「い、いいですよ! イッて! あたしたちに、おにーさんの精液かけて!」
「お、お兄ちゃんっ! お兄ちゃん、早く……!」
 あゆあゆとあたしの声に、お兄ちゃんの動きが小刻みになる。
 あたしは気持ちよすぎて――カラダがふわふわしたみたいになって、もうおかしくなりそうだった。
「くっ……い、イクっ!」
 どくんっ、とお兄ちゃんの鼓動が伝わってくる。お兄ちゃんはそのままの体勢で、あたしたちの間に放出した。
「あっ……ああっ……!」
「萌ちゃん……!」
 あたしとあゆあゆは、お互いをぎゅっ、と抱きしめ合う。けれど瞬間、あゆあゆはわずかに腰を浮かせていた。そのおかげで―― 
 お兄ちゃんが気持ちよくなった『証』が、重なり合ったあたしたちの胸とおなかに、降り注いだのだった。
「あ、熱いっ……」
 三回目なのに、こんなに出しちゃうなんて……お兄ちゃん、そんなに気持ちよかったのかな? だったら、少し嬉しい。
 ……でもやっぱり、いけないことしたような気分。
「うふふ……」
 あゆあゆが、ちゅっ、とあたしに軽くキスをする。
「あたしの下で喘いでいる萌ちゃん、かわいかったよ」
 そう言われて、顔が熱くなった。
 ……は、恥ずかしいなあ、もう。
 でも、あゆあゆだってかわいかったなあ……。
 気持ちいいと、あんな声だしちゃうんだ……。
「二人とも、すごく気持ちよかったよ。さすがにもう、クタクタだ」
 立ち上がるお兄ちゃん。あんなに大きかったモノが、今は小さくなってぶらぶらしていた。……うーん、不思議だ。
「さ、みんな汗だくだし……いっしょにシャワーを浴びよう」
「はーい。いこ、萌ちゃん」
 あゆあゆが、ゆっくりとカラダを離す。二人とも、汗とかエッチな液体とかで、ベタベタしていた。
「うん……」
 あたしも立ち上がった。
 何だかまだボーっとしてるけど……。
 シャワーでも浴びたらすっきりするかも。
 そうして浴室に向かおうとしたあたしに、あゆあゆがそっと囁いた。
「今日はあたしも疲れし、おにーさんもいるからしないけど……今度は、お風呂でえっちしようね」
 ……こ、今度?
 あたしはおそるおそる、彼女を見る。
「……こ、これで終わりじゃ……ないんだよね?」
「何言ってるの、萌ちゃん」
 あゆあゆは一度、先に浴室に入ったお兄ちゃんを確認し――気づかれないよう、あたしに言った。
「だって、萌ちゃんのバージンをもらうのは……あたしなんだから」
「なっ……」
 絶句するあたしに、今度はお兄ちゃんの呼ぶ声が聞こえてきた。
「おーい、早く入ってこいよ、萌。久しぶりにカラダ洗ってやるぞ〜」
 お兄ちゃんは上機嫌。
 ……ああ、この関係って……今日で終わりじゃないのね。
 あたしにふつー恋愛は……ムリなのかなあ……。
 なんだか、あんまり明るくない未来を想像しながら、とりあえずあたしはシャワーを浴びることにしたのだった。


  妹劇場「お兄ちゃんといっしょ編」その20


「おはよう、萌ちゃんっ」
 ざわめく朝の教室で、登校してきたあゆあゆが、いきなりあたしに抱きついてきた。
 身長の違いから、むにゅっ、と彼女の胸が顔に押し付けられる。
「お、おはよう、あゆあゆ……」 
 何とか顔を離し、あたしは挨拶をした。
「昨日は大丈夫だった? おにーさんに迫られなかった?」
「う、うん、大丈夫……。親もいたし……」
 昨日、日曜日にあゆあゆは帰ったため、その後のことを心配しているのだろう。
「よかった〜。……まあ、いわゆる、アレよね。男っていうのは、一度許すとカラダばっかり求めてくるようになるから、気をつけないとね」
「あの……それって誰の言葉?」
 ……まさか、あゆあゆの経験談?
 そんなわけないだろうと思いつつ、訊ねてみる。
「ん? ああ、女性週刊誌に載ってたの」
「……あ、そう」
 妙にえっちな知識が豊富だったは、そのせいですか?
「それより、萌ちゃん――」
 顔を近づけ、あゆあゆがあやしく微笑む。
「今度はいつ、えっちしよっか?」
 ……って、あゆあゆだってカラダ求めてきてるじゃん!
 ああ……あたしとしては、やっぱりステキな王子様に迎えにきてほしいなあ。そんなのいないのはわかってるけど。
 思うに、土曜日のアレは勢いで流されてしまったのだ。
 うん、決めた。ちゃんとした恋人ができるまで、もうえっちなことはしないぞ。
 ……ひとりえっちは、するかもしれないけど。
「ん……?」
 ふと、ざわめきが消えていることに気がついた。
 周囲を見回すと――みんながこちらのほうを見ている。
「え? な……なに?」
 誰にともなく訊ねると、近くにいた一人の男子が言った。
「いや、お前らが……随分、ラブラブだなって思ってさ」
「ら、ラブラブ?」
 それって、あたしとあゆあゆ?
「……って、うわぁぁっ!」
 あゆあゆがっ! あゆあゆがあたしの胸、触ってるし! お尻撫でてるし! 首筋にちゅーしてるし!
 とにかく色々しまくってるっ!
「あ、あゆあゆ、ストップ! や、やりすぎだって!」
 ……うわ、クラスのみんな、顔赤くしてこっち見て……って、そりゃ刺激強すぎだよ。
「いいの。だってあたしたち、ラブラブなんだも〜ん」
 も〜ん……って、そんなお気楽なっ!
「まあ……そういうことなら、頑張ってくれ」
「本人がそれでいいなら……応援するね、萌ちゃん」
「でも人前ではあんまりベタベタしないほうが……」
 クラスメイトたちが、それぞれ励まし(?)の言葉を送ってくれる。
 ……これってまさか、公認カップルの誕生ってこと?
「よかったねー、萌ちゃん。みんな応援してくれて」
 にっこり笑うあゆあゆ。
「よくなーい!」
 みんなの祝福を受ける中、あたしの叫びは、ただむなしく響くのだった……。
 
 ……これって、あゆあゆの作戦勝ち?

 おわり。