夕月美夜は、原因不明の体調不良に悩まされていた。それが一年も続き、いつしかクラスメイトからは孤立する。だがそんな彼女を唯一かばうのが、幼馴染の池田浩一だった。
 彼に迷惑をかけないために、美夜は自分では気づいている体調不良の原因を話す。それは突如始まった、他人の血が飲みたいという衝動のことだった。実行できず我慢しているうちに、体調が悪くなってしまったという。あまりに突拍子もない話のため、真剣に悩みを聞く浩一に嫌われるだろうと美夜は思った。だが、彼は自分の指を傷つけ、強引に美夜に血を飲ませてしまう。
 その瞬間、美夜の衝動は爆発した。浩一の首筋に噛み付き、血を飲む美夜。気を失う浩一だったが、身体だけが動き、異常な力で周囲の人々を殺害していく。やがて限界を超えた彼の身体は崩壊。ショックで彼女は手首を切る。
 入院する美夜。だが、身体が治っても目覚める気配がない。彼女は、夢を見ていた。現実を忘れるために創り出した、浩一と二人きりで過ごす日常の世界。しかし、やがてそれも終わりが来る。
 彼女の夢の世界は、日常と呼ぶには不自然な部分があったが、それは浩一が変化を与えたものだった。夢の中の浩一は、死んだ彼の意識が美夜の意識に入り込んだのだと告げる。浩一は何とか美夜を現実に戻そうとしていたが、段々と力が失われてきていた。そこで最終手段として、意識が消えるのを覚悟で全てを話す。浩一に応えて、美夜は現実へと帰還した。
目覚めた美夜は警察の事情聴取と検査を受けながらも、やがて退院する。そして学校への復帰初日。美夜は浩一の墓へと訪れる。彼にこれからの決意を話しながら、彼女は歩き出した。生きていくために。

戻る