プロジェクト立ち上げの経緯




与謝野晶子訳「源氏物語」は公開作品として途中まで登録されています。

そして同じ入力者によって全作品が公開されています。 「王朝文学の世界」

なぜ校正が途中で中断しているのか疑問に思っていました。

その経緯については青空文庫メーリングリストで明らかになりました。
[aozora:3943]「源氏物語」の校正が進まなかった事情(2003年1月31日,金曜日12:05:29 AM +0900)から

「王朝文学の世界」のサイトを見ると、
「当サイト内で、公開されているすべてのファイルは、個人の私的利用のみ許可しています。あなたの使用が、それ以外の目的に相当する場合は、以下のアドレスまでメールを、お送りになり許可を得てください。 」のクレジットがあります。

一方青空文庫では1999年8月1日から「青空文庫収録ファイルの取り扱い規準」が運用されていて、公開テキストの利用については原則自由となっています。
参考--------------------------------------------------------------
※恐ろしく長いですが、「規準」に向けた論議の跡は、以下でたどれます。
「青空文庫収録ファイルの取り扱い規準作成に向けて その1」
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「王朝文学の世界の」主宰者からは青空文庫での規準によるファイル利用の同意は得られませんでした。

これが校正が進まなかった理由です。


私は、青空文庫の規準にそった利用制限のないテキストを作りたいと思い、適当な底本を捜して入力することは可能か青空文庫世話役の富田さんに確認しました。

富田さんも利用制限のないテキスト作成は異存が無く、また与謝野晶子訳「源氏物語」を公開している別サイトを教えてくれました。
古典総合研究所の現代語訳研究ページの角川文庫版源氏物語
ここの公開テキストを利用出来れば、青空形式での公開に向けての作業負担は軽減されます。

そして富田さんが、同サイトの公開テキストの利用条件を確認し、そのテキストを使用して青空形式公開ファイルを作成し、利用制限をつけずに青空文庫で公開できないかサイトの責任者に打診しました。利用条件としては古典総合研究所による入力を明示するということです。
古典総合研究所の上田さんからは、入力者明示とともに公開に際して青空文庫からリンクを張ることを希望条件として、テキストの自由利用について承諾をいただきました。


与謝野晶子訳の「源氏物語」には2つテキストがあります。

(1)『新譯源氏物語・全四巻』金尾文淵堂(大正三年)

(2)「新新譯源氏物語・全八巻」金尾文淵堂(昭和十三年〜十四年)

(1)については現在(2003年2月)めいこさん、もりみつさんのグループにより旧字旧仮名版の入力が行われています。これは非常に価値のある作業です。
私が目指したのは新字新かなによる読みやすいテキストの作成です。
(2)を新字新かな化したテキストも2つの流れがあります。池田亀鑑校注の角川書店版と池田弥三郎校注の河出書房版です。
「王朝文学の世界」で公開しているテキストが後者、古典総合研究所公開のテキストは前者をもとにしています。
 漢字のかな化、ルビ付与の過程で編集方針の相違から両テキストには異同があります。


青空文庫で公開するには「王朝文学の世界」のテキストとの相違をはっきりさせるため、古典総合研究所の角川文庫版テキストを利用することにしました。

ただこの角川文庫版テキストにはまったくルビがついていません。底本である角川文庫の全訳源氏物語にはルビがついています。そうなるとルビ付与という作業が余分にかかります。

青空文庫メーリングリストで、角川文庫版テキスト(ルビなし)に河出書房版テキストのルビをつけるPerlスクリプトは記述可能か照会すると、大野裕さんがあっというまにスクリプトを書いてくださいました。
そのスクリプトを試してみると使用する価値は十分だということが分かりました。LUNA CATさんが変換作業を行いました。

与謝野晶子の「全訳源氏物語」は文庫本約650頁3巻の大部です、桐壺から夢の浮橋まで54帖、登録作品数でも56作品あります。
そこで呼びかけ人同士で相談し、校正者を募集して各作品を分担校正することにしました。
そのための共同作業場についてはLUNA CATさんが整備してくれました。
Yahooの「eグループ」というグループウェアです。今後この共同作業場で校正中の疑問等プロジェクトに関する情報交換を行います。

通常の校正作業では、入力済みファイルについて点検グループが形式整備点検を行い、校正者に引き渡しています。今回の校正作業ではこの形式整備の点検作業も校正者に経験していただこうということになりました。将来に向けた点検グループの拡充ができればいいなということです。そのため形式整備点検作業に必要な「校正の手引」も作成しました。

プロジェクトをサポートするために、「光の君再興プロジェクト」のページを開設しました。

入力済みテキストが2003年2月13日付けで青空文庫データーベースに登録されました。

いよいよ本日(2003年2月15日)校正者を募集することになりました。


以上がプロジェクト立ち上げの経緯です。


最初は一人でコツコツと作業すればいいかなと思っていたのですが、ここまでのプロジェクトになろうとは予想していませんでした。流れというものはおそろしい。その立ち上げの一部にかかわれたことは幸運でした。富田さん、LUNACATさん、大野裕さん、みなさんありがとうございます。

公開に向けてプロジェクトはこれからが本番です。そして主人公は校正者のみなさんです。


2003年2月15日公開
2003年2月21日最終修正

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