Essay#11 |
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今回の視察旅行で訪ねた土楼は二十棟余。それぞれに集合住宅を考える上で 示唆に富む多様な展開を見せていた。これらの土楼を、その形式により分類する と以下の如くである。 【1】群体住居(五鳳楼) 1.大夫第 (永定県) 2.永隆昌楼 (永定県) 3.福裕楼 (永定県) 【2】方形土楼(方楼) 1.遺経楼 (永定県) 2.和貴楼 (南靖県) 3.歩雲楼 (南靖県) 4.溝尾楼 (南靖県) 【3】環形土楼(円楼) 1.承啓楼 (永定県) 2.順裕楼 (南靖県) 3.懐遠楼 (南靖県) 4.環極楼 (永定県) 5.振成楼 (永定県) 6.振福楼 (永定県) 7.如升楼 (永定県) 8.田螺坑土楼群 (南靖県) <方楼> ・歩雲楼 (前出) <円楼> ・振昌楼、和昌楼、瑞雲楼 <楕円> ・文昌楼 【4】斜面土楼 1.長源楼 (南靖県) 2.振徳楼 (南靖県) 【5】特殊形土楼 1.順源楼 (永定県)<五角形> 【1】の群体住居は、平地型と言われ、高さの異なる五棟の建物が院子(天井 )を囲む形式で、北支の四合院の住居と類似性が見られる。【2】〜【5】は、 山地型と言われ、一般的に「客家土楼」としてよく知られている環形土楼をはじ め、前述の如く、方形、円形、楕円、多角型の他、段状地に造られた斜面土楼な ど、様々なバリエーションを持っている。特に永定県、南靖県に限り多く見られ ると言われている。これらの地域では、二千を越える「客家土楼」があると言わ れ、風水により定められた山間の地に、自然に抱かれ溶け込むように建っている 土楼群を見ていると、客家の人々の自然への深い愛着と、自然と一体化しようと する強い意識を感じざるを得なかった。
「客家の土楼」は、以前から一度訪ねてみたいと思っていた土着集合住宅の一 つである。あの環形土楼の中では、どのようなミクロコスモスが形成されている のかと興味は尽きなかったが、雨の多い時期にも関わらず、全行程快晴に恵まれ た今回の旅では、十分にその魅力を味わい、さらに中国南部の風土、自然の景観、 素朴な人々の生き方との出会いを含めて、五感を通して記憶に留めることが出来 たことは、何よりも幸運なことであった。 今回は、『客家土楼の簡単な分類』 についてお話ししましたが、次回以降は、これら数多くの『客家土楼』の中から、 代表的なものを取り上げ、実践取材を基に 『建築的特質と生活』 を述べていき たいと思います。 *(初出 1998年7月 「JIA NEWS 近畿」 掲載分より筆者抜粋後 一部加筆) TOPへ 前へ |