〜演奏会について〜
私達は、今年2月に、第一生命ホールにて、J.S.バッハ作曲「マタイ受難曲」を大変好評に行うことが出来ました。
この曲は、新約聖書の「マタイによる福音書」の26章、27章を忠実になぞりながら、
壮絶な死を遂げるイエスの最後を見届ける内容が、福音史家の丁寧な語りに導かれて、
関わる多くの人物により、宗教オペラ的に展開されます。
登場人物も多く、場面展開が細かいですから、福音書の内容に通じているか、余程聴き慣れている、
また歌った経験のある方々でなければ、たまたまの演奏会で、ただ聴いているだけでは良く判っていただけない内容です。
字幕も1回16文字の制限があって、短絡にまとめる必要があり、そこで考えまして、
対訳の文字を、客席が少々暗くても読んでいただけるように大きく、濃くして、配布しました。
そのため、プログラムと、対訳を別冊子にして、2冊にして配布しました。
演奏途中、めくる音がざぁ〜と一斉に聴こえ、少々苦笑させられましたが、
それだけ集中して聴いてくださっていると嬉しくなりました。結果は、進行していく話の展開が解かり易く、演奏を楽しめたと大変好評で、多くのお客様の方が興奮気味に、絶賛して下さいました。
全体の進行係りで、素晴らしい語りをしっかりした声で、ほぼ暗譜の水越啓さんのエヴァンゲリストはじめ、
秀逸でしたのが、声が冴え、風格のある小原浄二さんのイエスでした。
ほかに上杉清仁さんのカウンターテナーのソロ、声質と歌唱力が素晴らしく、後で録音を聴いても、
とても内容にあった演奏で大変嬉しかったです。
また、水越さんのテノールソロ、他に、星川美保子さんのソプラノソロ、小笠原美敬さんのバスソロ、
宗佐和子さんの8番の第2ソプラノソロ、いずれも、内容を踏まえた演奏で素晴らしかったです。
なお、ソプラノ イン リピエーノは、ソプラノのソロで演奏していただきました。ソリストの皆様、揃って殆ど暗譜で、大変感心し、嬉しかったです。
又、当然と考えますが、第1と第2それぞれのソロを、曲毎に、楽譜どおりに、左右の第1及び第2オケのところへ移動して歌っていただきました。
又しばしば行われますようなイエスとエヴァンゲリストが会話するかのように並ぶ立ち位置にはせず、
エヴァンゲリストは、福音史家として、受難の進行状況を語り、福音書の内容を多く人々に語り、伝えるという立場を考え、
中央1段と高い位置で語っていただきました。イエスと並ぶ事は避ける必要があります。
イエスは、常に第1グループですから、第1オケの前が定位置です。
合唱も2グループに分かれますので、全体で51名、1パート10〜5人程度とまずまずながら、
少々心細い感じもありましたが、第1と第2に別れ、それぞれ楽譜どおり忠実に、全員大変集中して、
とてもよく演奏してくれました。演奏に対する集中力の素晴らしさです。
古楽器オーケストラもコンサートミストレスの川原千真さん、通奏低音のチェリスト田崎瑞博さん初め、どなたも気持ちの温かい素敵な方々で、心を込めて、大変素晴らしく演奏して下さいました。最後に、短いモテット1曲[Ecce quomodo moritur justus(見なさい、正しい方が死に行かれる様子を)]をア カペッラで、ソリスト
皆様も共に、全員で静かに演奏しました。
バッハの当時、聖金曜日の礼拝の最後に歌われる習慣があったそうで、
私達もそれに倣って、静かに心を込めて歌いました。
お客様は、びっくりの様子だったようですが、大変感動していただき、
私達も胸が一杯になりました。
実際には、これを最後に、この合唱団の活動を停止する心づもりを、団員達と、「マタイ受難曲」練習開始当初の2年前に決定していました。モーツァルトとバッハの主要な
宗教合唱曲をほぼ全て考えられる最もベストな形態で演奏し終えましたので、
私の責任は充分に果たしましたと考えての決定でした。
ところが、何人かの団員が、どうしてももう少し続けたいとの希望が強く、
とうとう自分達で、改めて、文字通り、1から計画を立てました。
今までは、私が全て計画を立て、費用を計算し、出来る限り理想の演奏形態を実行してきた
のですが。
彼らの演奏希望の曲は「ロ短調」ミサ曲と、また古楽器オーケストラと共演したいとのことです。
その熱意に、また選んだ曲が大変多くの点で、最高に面白
く、改めて1から学ぶ価値の高い曲ですので、
私も協力することにしました。強い彼らの気持ちに、
多くの方々のご賛同をいただき、是非、練習を覗いていただけますことを願っています。
・・・・・・・・・・
練習を始めて、1年半(も経っています)。新しい団員も思いの外、多く参加してくださって、
皆様、熱心に練習に励んでいます。練習すればするほど難しさを気付かされますが、曲の深さも感じられ、
大変充実した練習が続いています。
目下、音取りはほぼ上手になり、言葉の乗せ方― 如何に言葉の流れがすっきり聴こえてくるか―、
メロディーライン、各パートの流れ・動きの関係など、和声や対位法の構造も含めて、
ゆっくり学びながらの練習が続いています。
このように、2回目の音取りをしながらの練習が続いていまして、もう少しで最後まで出来ましたら、
3回目の練習に入ります。次は、ソロの部分との言葉・内容・音・構造などとの繫がりも学びながら練習します。
9月頃からは、通し練習を繰り返しながら、仕上げていきます。
いよいよ、本番まで、あと3ヶ月余りになってきています。3回目の丁寧な音取りをしながらの練習も進んで、目下、{Credo]。 ただ、やはり、「ロ短調」ミサ曲は、とても面白いだけに難しい。どなたも、本当に一生懸命に、とても上手に歌っていますが、折角のフーガの素晴らしい構成にまで、なかなか意識が集中しかねるようです。勿論、大体は、良いのですが、各パートに繰り返し繰り返し歌われるテーマやテーマの一部など、よく認識して歌ってほしいと願っています。
2014年11月29日(土)午後4時半開演、府中市 府中の森芸術劇場ウィーンホールでの、「ロ短調」の演奏会を、文字通り、大々好評に、会場全体が一つになって、終えることが出来ました。心から感謝しています。やればやるほど、面白く、深みにはまる素晴らしい曲です。この曲を、団員の皆様と、心を合わせて、文字通り、一体となって、演奏出来ましたことは、素晴らしく、素敵な思い出になります。私、小泉には、最後の大演奏会となります。長い間、折々に、お付き合い下さいました古楽器オーケストラの皆さんにも、心から感謝しています。 |