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はらはらり。
はらはらり。
はらはらり。
七色の淡彩で滲んだ夢の世界。
無数の枯葉が、俺をかすめて舞い落ちる。
決して触れることなく。
積もることもなく。
どこかへと。
『・・・・・・・・・・ま』
心に直接ひびく囁き。
『・・・・・・・・・んさま』
振り返る。
誰もいない。
『ごしゅじんさま・・・・・・・・・』
すとっ。
落ちていく。
黄ばんだ木の葉をかすめながら。
どこまでも。
もうすぐ目が覚めるのだろう。
世界がどんどん暗くなっていく。
すべてが漆黒に呑まれる。
その寸前、聞こえた。
透き通っていて、悲しそうな声。
その言葉を。
『おわかれに・・・・・・・・・・・・ござります』
「ッ!!!」
はっと目が醒めた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
先ず目に入ったのは、いつもの天井。
寝てるのは、いつものベッド。
体に感じる掛け布団の重みも、いつも通り。
俺の部屋だ。
「ごしゅじんさま。お目覚めにござりましょうや?」
枕元で囁かれる優しげな声音(こわね)も、いつも通り。
「おはやうおはします、ごしゅじんさま」
夢か・・・・・
「ン、おはよ・・・・・・・・・・・」
顔をこすりながら身を起こした。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?」
いつもの「本日もごきげんうるはしう」が、ない。
俺は寝惚け眼を傍らに向けた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
そこにいたのは、少しもご機嫌うるわしく見えないメイド服。
綺麗な、けれど人形さながらの情緒に欠けた貌(かお)。
暗く沈んだ瞳。
紅い唇は横一文字に結ばれている。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・さくら・・・・・・まる・・・・・?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
シャツに染みた寝汗が、俺の背筋をすぅっと冷やしていった。
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