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ついんLEAVES

第五回 8





「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」



「すか〜・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・すぴ〜」



「く〜・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」



「この・・・・

 変態イロボケ野郎〜〜〜〜ッ!!」


 どぐっっっ!!!!


「んぐぁぁぁぁ!!!」


「何さくらまるに抱きついてんの!?

 さっさと起きなさーい!!」


 げしっげしっげしっ!


「イテテテテテ! 痛い! いてえって!」


「痛くしてんのよ、ドスケベ日枝!

 さくらまるから離れろーっ!」


「わかった! わかったからヤメ〜ッ!」


「ハァ・・・・・ハァ・・・・・・・・」


「ふぅ・・・・・・ヒィ・・・・・・・」




 言うまでもないけど、未だかつてない最悪の目覚めだった。




 時計を見ると、7時過ぎ。


「勘弁しろよ・・・・・まだ2時間しか寝てねーのに」


「もう一発蹴られたい・・・・?」


「わーっ、わかったわかった! 起きるからっ」


「最初から素直にそうすればいいのよ」


 ちぇっ。 


 全身をむしばむ鈍痛に苛(さいな)まれながら、体を起こす。

 目の前のさくらまるが鼻を鳴らした。


「お?」


 ・・・・・・・・・どうしてさくらまるが横に・・・・・って、ハダカぁ☆ !?



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ−」

 そういや、葉っぱを齧られて服がなくなったとか言ってたっけ。


 さくらまるったら、ただでさえ刺激的な服が寝乱れて、ミルクのように白い肌がほとんどむき出し。

 顔を見ると、紅い唇がほころんで、とろけそうな笑みを浮べている。


 俺はこいつとくっついてたわけで・・・・・・・・・・・



 もしかして、すっげー幸せな寝方してた?



 ビキキッ!


「ヒッ!?」


 殺気が走り抜けた。

 飛ぶ鳥も落としそうな、ハンパじゃなく強烈な殺気が。


 恐る恐る顔を上げると・・・・


 修羅。


 つまり、修羅の形相をしたフー子。


 えーと・・・・・・・天国(さくらまる)と地獄(フー子)ってヤツですか?


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・よ、よう」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


「あのー・・・・・・・・・・・フー子さん・・・・・・・・・?」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


「血管が浮き出るほど拳を固めないで欲しいんですけど・・・・・」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 ムチャクチャ怖い。


 なんか、ダイイングメッセージを残したい雰囲気。


 ちょうどその時、ソファーで寝てたつばさがむくりと起き上がった。


「ふあ〜・・・・☆

 お兄ちゃんと・・・・・・・・・フーちゃん?」


「あ、つばさ起きたか・・・・・・」


「おはよ〜、お兄ちゃん♪」


「・・・・・・おはよ、つばさ」


「オッハヨー。どしたの? フーちゃん」


「いつもより早く起きちゃったから、つばさとガッコ行こうと思ったの」


「そ〜なんだ」


「ええ」


 つばさのおかげか、フー子の殺気が静まっていく。


 た、助かった〜っ。


 つばさが救いの女神に思える。

 そのちんちくりんの女神様、手の甲で顔を擦って、ん〜〜っと伸びをする。

 そこはかとなく猫チック。


「んみぃ〜っ。あやや・・・・・さくらちゃんも居るの?」


「あぁ。もう治ったみたいだぞ」


「ホント!? あ、さくらちゃん笑ってる。

 よかったぁ〜〜〜〜♪」


 寝癖のついた髪をゆらして、つばさがほわ〜んと笑った。


「ちょっと、つばさ」


「なぁに? フーちゃん」


 事情を知らずカヤの外のフー子が、眉をひそめている。


「さくらまるに何かあったの?」


「あったあった! 大変だったんだよ〜っ」


 毛布を押しのけ、つばさが身を乗り出した。


「お兄ちゃんがさくらちゃんをベッドに運んで、夜にさくらちゃんが初めてで困ってすんごく痛そうで、お兄ちゃんがご飯も食べないで頑張って、でも今のさくらちゃん幸せそうだからよかったな〜って?」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・どしたの?」


「どうしたっても・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 ぜんぜん意味わかんねーぞ、つばさ。

 つかお前、実はまだ起きてないだろ。


「とりあえず顔を洗って来い」


「そうね・・・・・」


 フー子も同感らしい。

 詳しい話は後にしたほうが良さそうだ。


「ほわぁ〜・・・・」


 ちょっと怪しい足取りのつばさが、洗面所に消える。


 俺も顔を洗お・・・・って、昨日オレ風呂に入ってないじゃん。

 シャワーで汗くらい流すか・・・・・


 さくらまるから視線をそらしながら立ち上がった(じろじろ見てたら、またフー子にツッコまれそうだ)。


「ちょい待ち」


「あン?」


「ドコ行くの」


 フー子の視線はどことなく冷ややかだった。


「どこって、風呂」


「お風呂? 朝から?」


「体中ベタベタだから、シャワー浴びんだ」


体中ベタベタ!? き、昨日の夜はそんな寝苦しくなかったじゃない・・・・」


「寝苦しいどころか、ほとんど寝てねーんだよ」


寝ないで!? ね、ね、寝ないで、一晩中シテたの!?」


「ああ」


 虫取りをな。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


「なんだよ」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なるほど、ね」


「フー子、どうして睨む・・・・って、ウヒャ!?」


 間一髪! フー子の鉄拳が俺の髪をかすめた。


「なんで避けんの!?」


「なんで殴んだ!」


「自分の胸に聞けっ! この強○魔!!」


 ブンッッッ。


「あぶねっ!」

 

 つか言ってる事はもっと危ねー!


「しかもつばさに見せたわけ!? ナニ考えてんのアンタはっ!」


 ビュン!


「うわっと! そりゃこっちのセリフだっ。何考えてんだアホ!!」


「今さらトボケんなー! ご飯も食べないで、

 一晩中さくらまるにイタしてたんでしょうが!!」


「誰がするかー!」


 どん。


「・・・・・・・・・・・・・・・あ」


 背中が壁にあたった。


「もう・・・・逃げられないわよ・・・・?」


 ポキポキポキ・・・・・


 ひ〜〜〜〜〜〜〜〜っ(泣)


「えっとぉ−、フー子さん・・・・?

 指を鳴らすと手がゴツくなるから、女の子はやんないほうがいいんじゃないかなぁ〜って・・・・・」


「あんたが何もヤんなきゃ、指を鳴らす必要なかったのよ・・・・・・」


 ギロン!(←フー子の目付き)


 怖ッ!!


「だ〜か〜ら〜っ、それはお前の勘違いだって」


「メイドさんを押し倒すド外道色魔の言葉なんか信用できるか!」


「押し倒しとら〜ん!!」


 つんつん。


「あのぉ〜〜・・・・・・涼島様」


「なによ!」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 いつの間に近付いたのか、さくらまるがフー子の肩をつついてる。

 今の騒ぎで目が覚めたのだろう。

 病み上がりのせいか、ちょっと表情が硬い。


「え、あー、さくらまる?

 うるさくしてゴメンね。いま仇を取ってあげるから」


「いえ、そうではございませんで、

 妾(わたくし)のごしゅじんさまに荒ぶる力を振るわるるはご遠慮いただきたく・・・・・」


「・・・・・・・・・へ?」


 フー子がぽかんと口をあけた。


 それみろ。


「さくらまる、平気・・・・なの?」


「はい。妾の力足らずして、多事ござりますれど・・・・

 ご覧の通り、こと無きを得ております」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ、そ」


 フー子の肩から力が抜けた。

 俺の体からも、一気に。


 ふへーっ・・・・・・・・・・・・・

 何とか収まりそうだ。


「ではごしゅじんさま、参りませう♪」


 さくらまるが、フー子と俺を遮るように体を割り込ませた。

 微笑とともに俺の手を取る。


「参るって?」


「湯浴みをされるのでしたら、妾がお背中を流させていただきます♪」


「んなっ!!」


 さくらまるの向こうで、フー子の顔が思いっきり引きつった。


「いや、いいって! 自分でできるからっ」


「ごしゅじんさま、ささ、ご遠慮なさらず」(にっこり)


 さくらまるってば、一片の曇りもない笑顔で俺を引っぱるけど、言ってる意味わかってんのか?


「遠慮じゃなくて命が惜し・・・・・あー、だから、つまり恥ずかしいんだよ!」


 無論いのち惜しさが本音だ。

 見ろ、フー子の顔。

 隈取(くまど)りしたらそのまま歌舞伎に出られそう。


 でもさくらまるの瞳には、俺しか映ってなかった。


「侍女(まかたち)に何さま恥ずかしがられましょうや。

 それにごしゅじんさまとて、妾の身様(体)を隅々までご覧におなりでしょうに」


「す、す、す、すみずみーっ!? 隅々まで見たの!?」


「わー! バカ、何言ってんだ!」


「日枝ッ! アンタやっぱり!!」


「違う! フー子の考えてるよな事ない! ぜんぜん全く誤解だって!」


「うるっさい! 今の言葉のどこに誤解する要素があるの!!」


「最初から間違ってるー!」


 木の股や葉っぱの裏側を見ただけで処刑なんてあんまりだーっ!


「そこまで言うならハッキリさせましょ。さくらまる!」


「はい、涼島様」


「あんた昨日の晩、このドスケベ主人にどんな事されたわけ」


「ですから、妾がごしゅじんさまの寝所(ねどころ)にて痛みを堪ふる間、

 一夜(ひとよ)をかけたまひて、我が身を一分の見逃しなくご検分くださりましたので。

 ことの仕舞ひには、身動きならぬ妾の下(しも)を懇ろにお清めし給はれ・・・・

 をう、なんと情け情けしきごしゅじんさまでせう!」(ぽっ)


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(ぽわ〜ん)」←さくらまる


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(ぽわわ〜ん)」←さくらまる





ひゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ・・・・・・・・・






「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


「あのさ、日枝・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


「あたし思うんだけど・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


「たとえ合意のうえでも・・・・人としてやっていい事と悪い事があるんじゃないかなぁって−」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・で、日枝」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


「辞世の句は、詠んだ?」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


「走馬灯は、見た?」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


「覚悟、いいわね」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」




 















「地獄におちろ!!

このエロ大王〜〜〜〜っっっ!!!」


「みぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」








   ☆おしまい☆





○あとがき


 「いきばた企画」にふさわしい突発サイドストーリー、これにて終了〜っ♪


 今回の話、ネタ自体は第三回進行中からありました。でも続けてさくらまるの話は不自然、という理由で寝かせていたものです。

 寝かせるつもりだったんですが・・・・


 第四回のノリが今イチ悪い。一週間に1ページしか書けない。


 そこで気分転換に書き始めたら、進むこと進むこと!

 三日で第一稿があがっちゃいました。

 分量もそれほどないので、こっちを先に掲載することにしました。


 なお、第四回の終了後、この話は第五回として本編に組み込む予定です。



 第四回の更新再開は、7月中旬〜下旬を予定しています。

 ここまでご覧下さいまして、ありがとうございました!



03/6/29 管理人



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