第1話 妖精再録前編
大阪某所、夜の公園のベンチに佇むいかにも援交カップルという風情のおっさん(仮名:僕)と美少女(仮名:妖精)。
「それにしても、あのキティーちゃんがなければ、出会ってなかったんだよね、なにか運命的なものを感じるね。」という妖精の言葉に僕は「そうだね。」とうなづくと1年以上前の事を思い出していました。
キティーちゃん、それは妙に膨らんだ封筒に入っており、頭の後ろに謎の2文字○○と書いてありました。
僕は、バックナンバーを調べてやっと、それが風俗誌の読者プレゼントであり、なおかつ贈り主が表紙を飾っている美少女で、謎の2文字がその源氏名であることに気付きました。と同時に「これほどの美少女なら欲しかった人多かったろうなあ、ファンでも無いのに悪いことしたなあ、一度ぐらいは行っとかないといけないなあ。」とも思いました。
「おいひいよ、このはこやひ(おいしいよ、このたこ焼き)」妖精の言葉で現実に引き戻されました、しかし笑いながら「それにしても2回目よくきたよね。」と妖精の言葉でまたもや回想シーンへと。
結局、妖精に出会ったのは色々あってキティーちゃんが届いてから1ヶ月後でした。
指定された部屋のベルを鳴らし、入ると誰もいない?振り返るとそこに妖精はいました。そして写真とは違う冷たい睨むような表情の妖精はそのまま部屋の中のイスを指差しました。
向かいあって座ると開口一番「この店、前は本番OKだったこと知っててきたん?」と核心をつく科白を口にした妖精に 「知ってた。」と答えると、「出来ると思ってきたん?」、
矢継ぎ早の質問に「・・・ひょっとして・・・ぐらいは」と再度答えると「せーへんで」と冷たく言い放った妖精。 しばしの沈黙を破るため僕は本当の目的であるキティーちゃんを取り出し「本当はこれのお礼を言いにきたんや」と見せると写真と同じような可愛い表情に豹変した妖精は「何でもってるん?」と尋ねてきたので、「プレゼントに当たったからに決まってるやん」と 答えると「へー、ほんとに送ってるんやあ」と驚くと「ごめん、また本番狙いの客かと思ってた。」と笑顔を初めて見せてくれました。
少し打ち解けた感じがしたので「でも、本番せがんでくる人多いんやろ?どうやって断ってんの?」と尋ねると「適当にはぐらかす、それでしつこかったら・・そこの引出し開けてみて。」 と言うので開けてみるとそこにはナイフが・・・。
「見たあ?それで刺すつもりだよ。」と本気の目つきでニッと笑みを浮かべながら答えた妖精。
「恐ろしい娘やなあ」、それが彼女に対する最初の感想でした。
でも、スキの無い一流どころしか行ったことが無かった当時の僕にはスキだらけの接客態度の妖精はとても新鮮に映りました。
さて、妖精の言葉はそんな目に会いながら2回目も来るとは思わなかった。と言う意味でした。
「ほんと、何で気に入ちゃったんだろう?君みたいなワガママな女の子」そう言うと「さあ、自分(注:僕のこと)物好きなんちゃうん?」と素っ気なく妖精は答えてくれました。
それにしても彼女はほんとにワガママと言うか気まぐれな女の子でした。でも、そのハラハラさせる所が彼女の魅力でした。 機嫌が良い時の彼女は最高で、AFを試させてくれたり、オプションのバイブをサービスで使用させてくれたり、「この後、予約が飛んで食事休憩やねん、そやからこのままいてもいいよ。」と60分の料金で100分ぐらい居させてくれたり、「さっきTEL入れてくれてたから、お湯ためといたよ、今日はお風呂プレイしよう♪」とかサービス満点なのに、気分が乗ってないと、騎乗位スマタで動きが止まったなあと顔を見ると、つけっぱなしのTVを真剣に見ていたり、部屋に入るなり「今日、むっちゃしんどいねん、寝てていいかなあ?」と言ってみたり、スマタを途中で止めるので「どうしたん?」と尋ねると「今日、気が乗らんかったから薬(媚薬らしい)飲んできたんやけど効き過ぎたみたい。スマタしてると入れたくなるから勘弁してくれへん?今も2回ぐらい入れようかなあと思ってしもたし。」というような状態でした。
とにかく、一流相手では絶対に体験できないことばかりでした。それでも彼女とはうまくいっていたはずです。あの約束をするまでは・・・・
第2話 妖精再録後篇
それでも彼女とはうまくいっていたはずです。あの約束をするまでは・・・・
発端はバレンタインデイでした。今年のバレンタインデイは月曜で、しかも前の週がある理由で超多忙だった僕は、店には行きたくなかったのですが、妖精から「今日、絶対来てよ♪」とTELがあったので仕方なく行きました。
妖精が営業TELまでして僕を呼んだ理由、それは手作りのショートケーキでした。
「どお?私が作ったんだよ。売ってるチョコじゃないから、日持たないでしょ、だから来て欲しかったんだあ。」 ほんとなら大喜びするはずなんでしょうけど、来るので精一杯だった僕が素っ気無く「ありがと。」と答えると彼女はとても不満そうに「元気ないね、どうしたん?」と尋ねてきましたが、その理由を説明すると納得してくれたようでした。
で、家に戻って携帯を見ると彼女からの次ぎのようなメッセージが入っていました。「ごめんなあ、そんなことになってるって知らんかったんやあ、これからは何でも話せる仲になろうよ、まずは友達から♪」
このメッセージにつけこんで「友達なんやろ?いっぺんぐらい遊びにいこうやあ」と店外デートの約束を、次ぎに店に行った時にとりつけました。 思えば、そんな卑怯な方法を選択したことが悪循環の始まりだったのかも知れません。
そして、デートの前日、TELが「ごめん、あした仕事出なあかんようになってしもたんよお、また、今度にして。」ドタキャン食らいました。
この時点で諦めかけた僕でしたが、次ぎに店に行くと「今度は絶対約束守る!」と言うので、妖精の言葉を信じ、バレンタインのお返しを兼ねて、彼女の憧れていたフードルさんに会えるイベントに誘いました。
しかし、今度はすっぽかし。そして、2週間後、店で、またもや謝る彼女に「すっぽかしな
んて前にもやられたことあるし、慣れてるから気にしてないよ。」と言うと「私をそんないい加減な娘たちと一緒だと思うの?」と詰め寄る彼女の勢いにおされてした約束もやはり、結果はすっぽかし。
どんどん悪循環のスピードは早まってきていました。
さすがに愛想がつき「嫌なら、嫌って言いなよ、断ったからって店に来ないなんて事はしないよ。」と言う僕に、突然思いついたような表情をした妖精はこう言いました。
「温泉行こうよ、2泊3日で。」
この、天にも登るような幸せな約束。結局、これが仇になってしまいました、どうせ実現するはずなかったのに・・・・・・・・・。
そして約束の日はどんどん近づいてきたのに妖精からの連絡はなく、店にも来ない日が続き、平日の休暇をとらなきゃいけないこともあって確認の電話を掛けまくる自分がストーカーの様に思えてきていたある日、携帯のベルが・・・・・。
妖精からでした。しかしその内容は「久しぶり、自分(あなた)会員番号何番やったっけ?」、
「537番」、「ありがと、じゃ。」、「ちょっと、どういうこと?指名拒否する気か?何でやねん。」、
「今は逢いたくないの、今、逢うと自分(あなた)のこと嫌いになりそうやから。」指名拒否の通告でした。
しかし、店員さんのミスで何故だか予約が取れました。久しぶりに会う妖精はこう言いました。「あんなあ、ストーカーにつけまわされて、客のことが
嫌いになってしもたんやあ、自分も客やと思うと嫌いになりそうやったからふっきれるまで来て欲しくなかったの、だから今日はサービス出来ないよ、それでもいい?」
仕方がないので、サービスを諦め、彼女のストーカーに対する愚痴を聞いていると「お腹減ったよお」と言うので、外のコンビニに買出しに行く事にしたのですが、途中でたこ焼き屋の屋台を彼女が見つけ、最初のシーンに戻るわけです。
僕が、回想から現実に戻ると妖精は「でも、私のこと好きだとか言って、私が困るとか、どう思うとか考えなかったん?」と責めるような口調で尋ねてきました。
僕は「そら、そうやけど好きなもんしょうがないやんか、それに元々、君が『調子よく好きとか言ってるけど、どうせ私は結さんや桜子ちゃんの代用品なんやろ?』て聞くから、それに応えて『あの人たちは違う意味で好きなのであって、そう言う意味で好きなんは君だけや』って、ほんとの事言うただけやんか、それにいつ付き合ってくれとか言った?言うてへんやろ?」
「そら、そうやけど・・・・」と口篭もった妖精はしばしの沈黙のあと、僕の時計を覗き込むと「そろそろ戻ろうかあ?フロントから電話掛かってきそうやし。」
そして、お別れの時間、マンションの部屋の扉ごしに妖精が「あっ」と僕の後ろを指差すので振り向きましたが何もありません。「なんもないやんかあ」と言おうと顔を戻すと彼女は口づけし、とても可愛い笑顔で「また、電話するね♪」と言ってくれました。
しかし、結局、これが僕が見た彼女の最後の姿になってしまいました。
その後、彼女からの電話が無いのはもちろん、応答もない、店は長期休暇、加えて7月に入ると店まで、潰れたのか電話が掛からなくなり彼女に会う希望は全くなくなりました。
そして、僕の部屋では、本当の持ち主に2度と会う事が無いであろう、小さなキティーちゃんが寂しく佇んでいます。
お・わ・り