レベル1 序の口
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ジイさんの入れ歯を持ったバアさんが、 それをもって私に言いました。 「これ、あなたの?」
買い物に行った私は締め出されてしまいました。 つまり、帰ってくるから開けといてね
と、言っておいたにもかかわらず、鍵を閉めてしまってました。
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レベル2 ある日の日記
(注:同居を始めた当初のもの。この時は母も来ていた)
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生態観察その1
その日家に帰ってきたら、母から報告を受けた。
バアさんが「やかん」でご飯を炊いていたらしい。
炊飯器の使い方はとうぜんわかっていない。
でも、ちゃんとなべもあるのに、やかんで炊くんだな。
しかも、うまく炊けていたらしい。
ま、いっか。
生態観察その2
一ヶ月前に、こっちの偵察にきた時に、
私はペットボトルの、アクエリアス(1.5か2リットル)を買った。
その時は、飲みきれなかったので、
一ヶ月くらいもつだろうと思い、
冷蔵庫に入れた。
バアさんたちが飲むならそれはそれで良いし。
一ヶ月後、つまり、今回、冷蔵庫の中に、アクエリアスは無かった。
飲んだのかと思ったら、仏壇の脇においてあった。
怖かったので、しばらくほっといたが、今日、のどが乾いて、まあためしに、飲んでみた。
変だったらすぐやめればいいんだし。
やっぱり変だった。洗剤の味がする。
いったい何を混ぜたんだ。私のいない間に!
すぐに捨てた。ペットボトルに入っていた分は。
生態観察その3(その2から続く)
しかし、コップに注いだ分を捨てるのを忘れていた。
したらば、バアさんが、しょうゆをなめて、「辛い、薄めよう」と言って、
その、洗剤入り、アクエリアスをしょうゆに混ぜ、なめていた。
…………うっうっうっ(泣) もう勝手にしてくれ。
ちなみに、ジイさんバアさんは、食事をした後の食器をなめてきれいにしています。
しょうゆとか、カレーとか。
行儀が悪いと言っても、もうわからないみたい。
頭にあるのは、もったいないということだけ。
戦時下を生きぬいてきた人たちだからなぁ。
だんだんどうでもよくなって来てます。
生態観察その4(おまけ)
洗剤味のアクエリアスの話を母に訴えた。 したらば、さらに衝撃の事実が明かされた。
冷蔵庫に殺虫剤(粉末タイプで、トイレなどにおいて、虫を退治するやつ)が、入っていたというのだ。
私は、ここで、毒殺されるかも……。 絶対に、自分で作ったもの以外は食べないぞ!
と、心に誓ったのであった。 |
レベル3 ぼけぼけ
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<ポットの使い道>
カップラーメンでも食べようと思ったら、ポットがない。 慌てて調べたら、炊飯器もない。
どっちも、居間に持っていってあった。 炊飯器は、まあいいさ、そこから、ご飯を食べればよろしい。
ポットでそうめんを茹でてるのはどうしたら良いの?
<ジャムの食べ方>
昼御飯はパンにした。 マーガリンを出しといたが、それはつけずに、砂糖をつけて食べていた。
砂糖つけるくらいなら、こっちが良いよ、と、ジャムがあるのを思い出し、出したら、喜んでいたみたい。
それは良いんだけど、コロッケも、あっためて出しといたら、それに、ジャムをつけて食べていた。 げろげろ。
<三角コーナーの使い方>
食事のあと、片付けをしていて、見つけてしまった。
台所の修繕工事をしてる頃、昼間は台所が使えず、三角コーナーやら、スポンジやら、濡れたものは風呂場に避難させていた。その三角コーナーを取りに行ったら、
な、な、なんと! うんこがその中に!
やめてくれよぉ。 風呂が時々いやな臭いがしてたのはそういうわけだったのか?
<節電>
私は風呂に入っていた。
すると、脱衣所の電気が消えたり、またついたりしている。節電ジイさんの仕業だ。
あ、やな予感。
やっぱり。風呂も電気消された。
風呂も、脱衣所も、洗面所も、台所も、玄関も消されたら、 まっくらなんじゃ〜!
「消さないで!」 って叫んでも、ジイさんにゃ聞こえんのだよな。
まったくもう! しかも、電気、風呂から遠いところについてるからつけにくいし。
スイッチの位置間違ってるよ!
<張り紙の意味>
当時、工事のために、台所の地下室(床の扉を上げると地下がある)の扉の蝶番がはずしてあった。
当然、ジイさんにはわからない。言っても忘れる。
掃除魔ジイさんは、地下室にごみが溜まってるからと、開けようとした。
ガッターン
扉が落ちた。 まあ、ジイさん落ちずによかったね。ちょっと手に怪我をしたみたいだけど。
扉が重いし、取っ掛かりがないので、はめなおすのに大苦労。
この時、私は仕事で家に居らず、母がこの顛末を教えてくれた。
ガッターン
またやった。 今度は私も現場を見た。
「あれだけ苦労して、大文句言って、はめなおしたのに何で忘れるかなぁ。何分もたってないのに!」と、母が怒る。
ごもっとも。 でも私はだんだん慣れてきてるみたい。
言ってもわかんないんだから、張り紙しとかんといかんのよ、と、張り紙しました。台所の床。
翌朝
ガッターン
開けるなと、書いてあるにも関わらず、また開けた。
開けたら落ちると書いてあろうが!
学習能力はないのはわかってる。いいかげん覚えろ!とは言わないさ。
でも、字はまだ読めるだろ!わざわざ、張り紙を剥がして開けていた。 いーかげんにしろ!
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レベル4 辛い現実
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仕事から帰ってきたら、すごい勢いでジイさんに怒られた。
「遅くまでどこほっつき歩いてるんだ!」って。 「仕事行ってた」って言っても、「聞いとらん。」
「言ったよ」って言ったら、「おまえが言ったつもりになってるだけだ」
私が、言ったつもりになってるって決めつけるのに、自分が、聞いたのを忘れたとは思わない。
口論しても、無駄なのはわかってるから、(この間は口論して喧嘩したが)
「ごめんね。言い忘れてたんだね。気をつける。」って言って、聞き流したけど。
毎日、帰ってきたら、怒鳴られなくちゃいけないんだろうか。 情けないけど、もうやだ。やってけないよ。
食事の世話して、汚物の世話して。 今、ジイさんが隣の部屋でなんか言ってる。
あまやかすとどうのこうのって。
この間は、「わしらのこと憎んどるんだろ、嫌なら出てけ」って言われてるし。
そんなこと1度も言ったことないのに。
ジイさんが忘れるたんびに、いわれのないことで怒られるのは身が持たない。
言う方はすぐ忘れるからいいけど、言われた方は、忘れない。
忘れちゃうんだから、気にしちゃいけない。おおめに見なきゃと言い聞かせても、許せない。
こっちは傷つくんだ。
みんな、ジジババの面倒見て、良い娘さんね、なんて言うけど、はっきり言っていい気はしない。
誉めてるんだろうけど、私は良い娘じゃないし。 好きで面倒見てんじゃないし。
住まわしてもらってるから、仕方ない。 やらなきゃ、砂糖ばっか食わなきゃいけなくなるからやってるだけ。
情けなくって。やりきれない。 話が通じないし。
どうしよう。本当にここでやってく自信なくしたんだけど。
登校拒否ならぬ、帰宅拒否に陥るよ。 明日も怒られるのかしら?私。やだなぁ。
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レベル5 悟り
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もう、すべてをそのままにして放っておくことにした。
ジジババの世話やくの疲れた。
力を抜かなければ、目を瞑る事を覚えなければ、ここではやっていけない事を悟る。
・・・・・・・そうして、新しいスタンスが出来上がる。 |
シルバーウォーズ 老人の逆襲
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エピソード1 洗い物
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ある夜、バアさんが風呂に入るときに、
長ねぎと、にんじんと、りんごを風呂場に持っていった。
「風呂入るのに、いらないでしょ」と言って、取り上げようとしたら、
「洗って置いとくの!なんでわからんの!」って怒られた。
うーん。
洗うの?風呂場で?台所がちゃんとあるのに?もう食事も済んでるのに?
湯で洗ったら良くないんじゃないかしら?
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エピソード2 年の功
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玄関の鍵が行方不明で、夜間は勝手口を私用していた当時。
その勝手口が閉められてしまった。
鍵を使っても開かない!
勝手口の鍵がかけにくく、コツがいるので、ジジババでは閉められないはずなのだが、
閉められなきゃ閉められないで方法を考えるのね。
『亀の甲より年の功』ってね。
鍵持ってても意味ありませーン。
遅くなって鍵閉められたら、家に入れません。
野宿か?
さて、どのようにしてドアを閉めていたのでしょう?
なんと、つっかえ棒=芯張り棒してたんですね。
しかも、ちょっと買い忘れして、
徒歩1分のスーパーに数分間、買いものに出かけた隙に・・・・。
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エピソード3 安眠妨害
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また、いわれなく怒られる。
まったく嫌んなるね。
朝っぱらからさ、いいかげんにしろっつうの!!!!
朝早くに、バアさんが二階に上がってきた。
何かと思って、聞いても、わけわからんことしか言わない。
そして、すぐに下りてった。
次に、ジイさんが来た。
何かと思ったら、どうやらトイレのドアが開かないらしい。
果たして。
確かに、トイレに鍵がかかってた。
このトイレの鍵は、取っ手にボタンがついてる奴で、
ポタンを押したままドアを閉めると鍵がかかってしまう。
外からは取っ手の溝を使うと、開けられる。
そんなわけで財布持ってって、コインで、開けてやった。
そしたら、まあ、ジイさんが、
「おまえは、鍵持ち歩いとんのか!こんないたずらばぁして、
こんな目には一度もおうたこたない。出て行け!!」
と、来ったもんだ、あ、そっれ、♪
だーれーがー!なーにーがー!
面白くてわざわざトイレに外から鍵かけるっちゅねん!!!!!!!!!!!!!
朝っぱらから、たたき起こされて、わざわざ開けてやったというに、何じゃ、その態度は!
ジイさんが自分で鍵かけたんだろうが。
いーかげんにせーよ、いてこましたるぞ!わりゃ!(激怒!)
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エピソード4 4時間目:実験
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ある夜、帰宅し、食事をどうしようかとジイさんに聞いたら、もう自分たちの食事は済んだという。
それを信じて、私は一人分だけ勝手にすれば良いと思ったら、
バアさんがずっと付きまとう。
何かと思ったら、「ご飯食べてない」ときた。
またか・・・。
ジイさんが食べていないのを忘れているのか、
バアさんが食べたのを忘れているのか・・・
仕方がないので、パンを焼いた。
そして、実験を試みた。
実験方法:
パンと、マーガリン、マーガリンを塗る為のスプーンを目の前に置いておく。
(参考)予想される結果: パンにマーガリンを塗って食べる。
実験結果: パンに栄養ドリンクをつけ、砂糖をまぶして食べる。
なぜ?
必要な物はすべて目の前においてあるのになぜ?
だいたい、栄養ドリンクなんかどこから持ってきた?
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エピソード5 えびドリア トッピングには 防虫剤
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晩飯を作る気がしなかった日。
ジジババは何かしら、勝手に食べているだろうと予測し、
(炊いたご飯はお釜に入ってるはずだし)
私は、冷凍食品、えびドリアでもチンして食べようと思ってた。
しかし、冷凍庫にはえびドリアはなかった。
またどこかへやったな。ジジババには電子レンジは使えないし、解凍の手段はないはずなのだが、
どうやら、冷凍食品をそのままで食ってるみたいだ。
いっつも物がなくなってる。
探索の末、えびドリアはあった。居間の机の上に。
それは、封は開けられ、何か、白い丸い、ハッカ飴か、ミルクキャンディーのようなものが、
5、6個、上に乗っていた。
私の賢い鼻は、タンスに入れる防虫剤の臭いを察知した。
あの、良くある、丸いのが二つづつ袋になってる奴だ。
季節でない洋服を、押入れにしまう時に、入れる奴だ。
私を殺す気かぁ!
食えっか、こんなもん!
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エピソード6 いま何時?
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9月半ばのある夜、PM8:30頃のことである。
ジイさんが聞く「この時間はもうこんなに暗いんかのぅ?時計がくるっとるんじゃろうか?」
そう、この時期PM8:30ともなればもう真っ暗である。
「最近はどんどん日が短くなってるからね」と答えると、これがまた聞こえていない。
大声で言ってるのに。
補聴器つけろ!
すったもんだと、噛み合わないやり取りの末、
どうも、ジイさんは時計を見て朝の8:30だと思ったらしかった。
そうか、御飯を食べたか食べないかを忘れるだけじゃなく、朝か夜かまでわからなくなるのか・・・・。
どっ・・・・。(疲れが出た音)
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エピソード7 風呂
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ジジババが寝た後、私は風呂へ入っていた。
そこへジイさんが起きてきた気配。
やばっ!また電気消されるかしら?
(電気消し魔のジイさんは手当たり次第電気を消して行く。
人が風呂に入っているのに風呂の電気を消してゆく。
耳が遠いので消すなと叫んでも聞こえない。前科数犯)
―――――――しかし、事態はそんなものでは済まなかった。
ジイさん前触れもなく風呂のドアを開ける。
がららら
「何よ、寒いから閉めて!」
「お前はなんじゃ!勝手にこんな事しくさって」
(おいおい、風呂入っちゃいかんのか)
「何って、お風呂入ってるの、寒いから閉めてよ」
「勝手に人の家に上がりこんで」
「勝手にって、ずっと一緒に住んでるでしょ」
「お前はどこの誰さまだ!」
「誰って、あなたの孫でしょうが。いいから早く閉めて、あっち行ってよ」
「勝手にこんなことして、警察呼ぶぞ」
「いいから、あっちへ行け!」
無理矢理、ドアを閉める。
ジジイ!ボケるのもたいがいにせい!
大体、どんな理由があろうと、女性の入浴中に風呂のドアを開けて、そこで長時間ねばっていいと思ってんのか!
おまけに、こっちが何を言おうと、聞こえてないのが始末に負えない。
ただでさえ、耳が遠いのにプラスして、風呂場だから声が反響して、全く私の言ってることが伝わっていない模様。
こっちは裸で無防備だしよぉ。いいかげんにせいや!
P.S.1
その後、風呂には鍵をつけた。
P.S.2
鍵をつけても風呂恐怖症は治らない。
この事件以降、私がこの家の風呂で「ゆっくりお風呂に入る」ということはなくなった。
シャワーのみ。風呂はリラックスの場ではない。時間との戦いだ。早く出るべし!
高校の合宿で、4分で風呂に入らされた経験がこんな所で役立っている。
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エピソード8 オレンジジュース
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飲みかけの紙パックのオレンジジュースを冷蔵庫に入れておいた。よくある牛乳パックと同じ1リットルサイズのやつだ。
ジジババはペットボトルは使用できないが、紙パックからなら液体を注ぐ事が出来る。
のどが乾いたら、勝手に飲めるだろうと思っていた。
数日後、居間でそのジュースのパックを発見。注ぎ口が片側だけでなく、両方開けて全開になっていた。
あれ?ジジババが飲んだのかしら?それで解体途中か、ゴミ箱にでもしたか?
と思って中を見たら・・・・。
ジュースもゴミも入ってる!!!
何てことだ!飲み切らないうちにゴミ箱にするとは!
しかも、ジュースは下の方に少し残っているとかいうのではなく、半分くらい残っていた。
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エピソード9 家事→火事
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この家の台所のコンロはガスコンロだ。電気ではないので炎が出る。
今となってはジジババに触らせるのは危ないので、使わない時はロックをかけている。
このロックは、幸いな事に、まだ、ジジババの手での解除は確認されていない。
ちなみに、ガスコンロの下にはオーブンがついている。
ある日、ガスコンロをロックしておいたら、当然、ジジババの手では火は付けられなかった。
しかし、火がつかないものだから、オーブンの方までいじるいじる。
気がついたら、オーブンに火がついていた。
しかも、普段使わないので、説明書やら何やらを、オーブンの中に入れっぱなしにたままで。
慌てて火を切り、本を出す。
どうやら、火をつけて間もなかったようで、大事には至らなかった。
が、ほっといたら火事になったんじゃないか?
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エピソード10 薬膳
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夕食を作ろうと、炊飯器に米をといでセットする。
炊けてみると、中には錠剤と塗り薬が・・・。
どうやら、ちょっと目を離した隙に、どこから持ってきたか知らないが、ババが炊飯器に入れた模様。
かくして、お手軽薬膳の出来あがり。
・・・・・って、食えっか、こんなもん! |
エピソード11 蒲団争奪戦
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それはもう寒い季節の事。
夜、仕事から帰ってきて、部屋へゆくと、ベッドの上がキレーイになっている。
蒲団がない! ジイさんの仕業に違いない。だが、なぜ?
自分たちの寝る布団をどこへやったかわからなくて探しに来て持っていたのかしら?
そう思って、ジジババの寝ている部屋へ様子をうかがいに行くと、
その部屋には敷布団、かけ布団が山積みに。私のものもその山の中に。本人達は蒲団に入ってで既におやすみ。
何で! 蒲団あるじゃん! 人の蒲団を取っていくな!
彼らに使われて恐ろしいのは蒲団が糞尿まみれになる可能性があるからだ。
私は嫌だ!そんな蒲団は使いたくない!
夏ならいざ知らず、この季節にかけ布団なしで寝たら、風邪引く事請け合い。
しかし、自分の蒲団を奪回しようとすると、ジジババが起きるだろう。
「人の寝てる部屋で何してる」などと、言われるとまた厄介だ。
幸いな事に、別の部屋に使用していない蒲団を発見。代用してなんとか就寝。
翌日。
朝、ジジババが起きたの見計らって、自分の蒲団を回収。
仕事から帰ってきたら、すぐに寝られるように、ベッドにセッティングして出かける。
帰宅。
はっ! またもや、ベッドの上がキレーイになっている。
おのれ、ジジイ!
あんた方の部屋は1階。蒲団もちゃんとある。それなのに、なぜわざわざ2階の私のベッドから蒲団を奪ってゆくのだ!
いいかげんにしろ!
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エピソード12 雑炊
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食事の時にバアさんが入れ歯をしていなかった。
彼女の入れ歯はそこにあったので「入れ歯はめて」と、バアさんの目の前に置いた。
だが「入れ歯を入れる」という言葉の意味を解さない様子。
言葉が分からなければジェスチャーでと思い、入れ歯を指して、口を指して、「はめなくちゃ」と言ってみたがだめ。
まあいいか。雑炊だから入れ歯がなくても食べられるだろう。
バアさんが入れ歯をつかんだ。
お、ちゃんと入れるか?と思ったら。
ずぼ!
雑炊の中に入れ歯を突っ込んだ。
おい!それは食べ物じゃないぞ。もう、勝手にしてくれ。
その後、雑炊を食べ進み、ついにバアさんの持った箸が入れ歯に当たった。
どうするかなと思って見ていたら、入れ歯をつかんで口元へ。噛み切ろうとしているが、もちろん噛み切れるわけがない。
仕方なしに、入れ歯をしゃぶって、ついたご飯をキレーイになめていた。
入れ歯の方向を替えて、あちらもこちらもなめていたが、ついに入れ歯をはめる事はなかった。
そんなに入れ歯がいやですかい?
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エピソード13 エンドレス
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その日の夕飯には煮魚があった。
バアさんがその煮魚をきれいに食べて、背骨まできれいにしゃぶっていた。
(長年の経験(?)でボケてはいても骨をのどに詰まらせたりはしないんだよね。これが。
こういう事はできるんだ。ま、それはいいとして)
そのきれいになった背骨をお茶碗の中へ。茶碗にはまだたっぷりご飯が入っている。つまりご飯の中へぶすっと骨を。
おいおい、そこに骨をいれない方が良いのじゃないか?と思いつつも黙って見ていた。
バアさんはご飯を食べ進む。そして箸が骨にあたると、また骨を食べ出し(?)た。
あのー、それ、身がついてないですよ。あえて言えばご飯粒はついてるけど。
バアさんはまたきれいに骨をしゃぶり、きれいになった骨を茶碗の中へ。だからそこに入れるなって。
そしてまたご飯をたべ、骨をつかむ。きれいにしゃぶって茶碗の中へ。
そしてまたご飯を食べ、骨をつかんで、きれいにしゃぶって・・・・・・。
あなおそろしや。いつまでたっても食べ終わらない。魔の骨ご飯・・・・。 |