ニューヨーク旅日記PartU

10月13日(水)
 またもや盛りだくさんの一日が始まる。8時半に出発して、まず朝食にすぐ近所の「EJ's Luncheonette」へ行った。ガラス張りの明るい店だ。オーダーは、オムレツがプレーンとウェスタン(ハム・オニオン・ピーマン入り)、チキンサラダサンドイッチ(しそ・トマト入り)、マフィンと紅茶。具の入ったオムレツが、なかなかおいしかった。サンドイッチのチキンはかなり大きめで、おなかが膨れた〜。
 朝食でいっぱいになったオナカをかかえて、まずは
セントラルパークに向けて歩きだした。ホテル近くは高級住宅街らしく、閑静で、散歩にちょうどいい。Columbus Ave.を少し下り、73rd St.をセントラルパーク沿いに出ると、ダコタアパートがある。ジョン・レノンが暮らしていて入口で射殺された有名なアパートだ。今でもオノ・ヨーコさんが部屋を持っているらしい。 そこからセントラルパークの中へ入っていくと、すぐにストロベリーフィールズがあった。
地面に「IMAGINE」と刻まれた石碑があって、そこには深紅のバラが一本供えられていた。すぐそばのベンチでは、赤いセーターのおじさんが、ひとり新聞を読んでいて、なかなか絵になる。芝生では、リスが遊んでいる。
 ここで失敗に気が付いた。セントラルパーク内の地図を誰一人持ってなかったのだ。右へ左へと何度も道は分かれている。こっちかな〜と適当に道をとっていたら、案の定、迷ってしまった。途中の噴水まで、こんなにかかるはずはないと思ったが、あとのまつり。ま、仕方がないと、ジョギングをする人々を見ながら、私達も歩く。日本と違って、公園内に
標識が全くない。不便…。公園の外に見えるビル群を見ながら歩いていて、やっと出口を見つけたと思って、通りに出てみると、なぜか59th st.のほうに降りてきてしまっていた。まっすぐ横切るつもりが、右へと進路をとっていたようだ。その道の公園沿いには、観光馬車の馬が並んでいて、ちょっと臭い。前から中学生くらいの一群が歩いてきたが、私達よりデカイ…。
 ここで時計を見ると、もう11時。1時間くらいセントラルパークにいたのかな。ずいぶん長い散歩タイムだったようだ。これから73rd st.のメゾン・ド・ショコラへ行くのは、時間的にも距離的にも、ちと大変。というわけで、急遽、方針変更。いちばん近いバーニーズ・ニューヨークへ行くことにした。プラダ、ミュウミュウ、エルメスなどを回る。メグは、また靴を買っていた。ほんとに靴が好きなのね〜。日本のイメルダ。 そこから、Madison Ave.を下って、55th St.のJCBプラザへ行った。日本で頼んできたミュージカルのチケットを引き取るためだ。チケットと領収書を待っている間に、「ご自由にお取り下さい。」のコーナーで、今井雅之さんの顔を発見!「COLON」という日本語のイベントガイド誌の表紙が、今井雅之さんで、中にはインタビューまで載っている。しっかり手に入れて、他にもWINDSの批評が載っていた日本語タウン紙も、せしめる。JCBプラザを利用してのプレゼントの絵ハガキももらって、ホクホクでJCBプラザを後にした。
 12時も過ぎているので、昼食に「MARS2112」へ向かう。JCBのお姉さんに「タクシーと徒歩、どちらが速いか?」と質問したところ、マンハッタン内は交通渋滞がすごいし狭いから、「歩いてください。」と、あっさり言われたので、テクテク歩いた。50st駅のそばなので、10分余りで着いた。通りの名前に数字が付いているので、わかりやすくて歩きやすい街だ。
 「MARS2112」は、テレビ番組で紹介されたテーマレストラン。「火星に旅して食事する」というテーマらしく、まずはアトラクションに乗って、火星へ行く。このアトラクションで、一緒になった5〜6人の若者が、うるさいのなんのって。揺れるたびに、「きゃ〜〜〜〜!」「ぎゃ〜〜〜〜!」と叫びまくり、それを聞いてるほうが笑えてしまった。
やっと席に着き、髪を後ろで結んだ、やたら愛想のいいウェイターさんにオーダーをした。Sub-Space Sampler(前菜盛り合わせ)と、Crystal Crater Caesar(サラダ)と、Angry Red Penne(鷹の爪の辛いパスタ)。どれも、アメリカンサイズな量。前菜には、春巻き、フライドチキン、肉野菜ソバ、揚げ物、まずいゴハン等。
アメリカのファミレスって感じ。ペンネはAngryというだけあって、辛い〜。メグは、お手上げだったみたい。食事の途中、火星人がテーブルに遊びに来た。私達は、頭をなでられたり、まるっきり子供扱いされていた…。「子供だけで食事に来て、えらいね〜。」って感じ??

 1時半にお店を出て、
Majestic Theatreに向かって歩き出した。ミュージカル「オペラ座の怪人」観劇だ。開演10分前には、劇場に到着した。劇場は、日本とは大違いで、両脇にバルコニーがあり、劇場全体に装飾がほどこされており、いやがおうにも気分が盛り上がる。JCBプラザで取ってもらった席は、右のブロックではあるものの、前から2列目。舞台は目の前。(なぜか後ろの列は、少年がズラリ。子供席なの?)センターの舞台下方には、オーケストラボックスがある。こんな本格的な劇場は初めてだ。
 芝居の幕が上がると、俳優が、すぐ目の前で動いている。表情の隅々まで見える。芝居の前半の象徴となるシャンデリアが天井に上がっていき、華やかなオペラの場面が演じられる。豪華なセット。ヒロインのクリスティーヌを演じる女優さんが、かわいい。オペラ座の人を演じているオジサンは、津川雅彦似。クリスティーヌが、「Angel of music〜」というファントムの歌声に誘われて鏡の中へ入っていくシーンは、近くで見ていても、鏡の中にファントムが写っている仕掛けが不思議だった。ゴンドラが滑るように舞台を動くのも、幻想的。第1幕の最後、シャンデリアが揺れ、落下する場面は、噂に聞くとおり迫力があった。休憩中、多くの人がオーケストラボックスを上から覗きこんでいた。観光客が多いということかな。第2幕、最初の仮面舞踏会(マスカレード)のシーンは、本当に華やか。きれいな衣装の数々は、見ごたえがある。多勢の登場人物と思っていたら、半数ぐらいは人形だということに、途中で気がついた。近くで見ているのに、あっさりだまされていた。
ファントムがクリスティーヌを連れ、地下深くに逃げて行く場面では、舞台奥の吊り橋のようになった部分が右下がりになったり左下がりになったりすることで、どんどん地下深くに下りて行っているように見える。そしてクライマックス。ファントムの悲しみに満ちた心をくちづけで溶かすクリスティーヌ。クリスティーヌとラウルに向かって「Go away!」と叫ぶ、ひとりぼっちのファントムに涙がこぼれた。残された仮面にスポットが当たり、幕が降りる。カーテンコールでは、スタンディング・オベイションが起こっていた。
 舞台が終わって、42nd St.駅から地下鉄で79th st.駅まで戻った。まだ昼食がこなれてなくて、全然お腹がすかない。劇場で座っていただけだもんね。夕食は、夜のショーを見た後、部屋でカップ麺でも食べようということになった。というわけで、カップ麺を探すため、その足で駅前の高級デリのゼイバーズへ寄った。ここも映画「ユーガットメール」で、現金専用レジに間違って並んだメグ・ライアンをトム・ハンクスが助ける…というシーンに使われていた。夕刻のせいか、買い物客が多く、賑わっていた。チーズやパンは豊富なのに、私達のお目当てのカップ麺はない。とりあえず、翌日の朝食用のスコーンやパンを買った。店を出て、ホテルの近所の食料品店へ行き、そこでクノールのチキンヌードルを発見。翌朝からの食材として、卵、ハム、ソーセージ、マスタード、牛乳、りんご、グレープフルーツも買った。
 ホテルで着替えを済ませると、またもや出発。
Astor Place Theatreへ、「ブルーマングループ・チューブス」のチケットを取りに行く。地下鉄を42nd st.で乗り換え、8th St.まで行った。駅から徒歩で劇場を探すが、なんなく見つけることができた。劇場は地下にあり、チケットボックスへ行く。前日の「Winds」の例があったので、インターネットで予約が取れているのか、ちょっとドキドキしたが、今回は簡単に受け取ることができた。あまりに順調に事が進んだため、1時間近く時間が余ってしまった。それで、近くにあった本屋さん「バーンズ&ノーブル」を見ることにした。雑誌売り場などをブラブラし、時間をつぶした。その後、お向かいの「GAP」を少し見てから、劇場に向かった。

 劇場に下りて行くと、結構な人出。「Tubes」という演目だけに、ロビーにもチューブの装飾がほどこされている。奥行きの深い、細長い劇場。開演を待っている間に、観客全員がスタッフから紙テープをちぎって渡される。「何?」と思っていたら、全員が頭に巻きつけているので、私達も、それに習った。なんだか楽しそう。そのうち、舞台の右上に表示される電光文字とスクリーンに気がついた。観客は、その文字の言う通りに声を出している。例えば、観客の一人をスクリーンに写し出し、「この人は今日誕生日です。ハッピーバースデーを言おう。決して歌うな。言うだけだ。READY GO!」という文字に合わせて、観客が一斉に「ハッピーバースデー」と言う…てな感じ。そういうのが、しばらく続いてから、やっとこさ出演者が登場する。題名通り、全身を青く塗った3人の男が、打楽器を演奏する。楽器の上に色のついた水(?)があり、叩くと、色のしぶきが上がる。セリフが全くないのは、英語のヒアリングをしなく
ていいから楽なんだけど、そのぶん、どんどん眠くなってくる。瞼が重くなってきた頃、ブルーマンが客席を回って、引っ張り出す観客を物色し始めた。みんな「ヤバイ…。」と目をそらす中、ひとりブルーマンと目を合わしているのが、私の隣にいた。カホだ。絶対狙われる…という予想どおり、ブルーマンは2度目に回ってきた時、カホに向かって手を差し出した。そうなりゃ、もう行くしかない。カホ、オフ・ブロードウェイ・デビュー!舞台に上がったカホは、台本を事前に読んでいたかのように、ブルーマンに合わせて演技(?)している。客席では、外人のオバチャンが「ヒャア〜ッヒャッヒャッ。」と大笑いしていた。あんたの声のほうが、おもろいわ。カホが着せられていたエプロンの胸の穴からバナナ・ピューレが飛び出したところで、カホの出演(?)は終わった。記念に紙箱に入ったプレゼントを贈られていた。その後も、2階席から青年が連れて行かれたかと思うと、逆さ吊りにされてペンキを塗られ、白い紙にぶつけられて魚拓(人拓か?)にされたり、また、客席の女の子に舞台のチューブから流れ出てくるものを手で止めさせておいて、ブルーマンは出て行ったり…と、観客を次々いじることで笑いをとる。クライマックスは、客席の上にぶら下がっていたトイレットペーパーを、みんなでどんどん引っ張り降ろしていって、客席は紙の渦!その紙をどんどん前に送っていって、後で前方の客席を見たら、白い紙の山しかなかった。「人は、どこ?」って感じ。終わってみれば、紙のはちまきは何だったの?と思ったが、どうやら観客の舞台参加気分
を盛り上げる小道具だったのね。終演後、劇場の外で、カホがもらった紙箱の中身を見て爆笑。バナナ・ピューレだった。

 終わった時間は、10時前。
エンパイアステートビルに夜景を見に行くことにする。しかし、タクシーをつかまえるのに一苦労。観客が一斉にタクシーに乗るし、通るタクシーの上部のライトは消えている。(“賃走”ってこと)。なんとか交差点でタクシーをつかまえ、エンパイアに向かった。タクシーを降りると辺りに人がいなくて、ちょっとヤな感じ。ところが、ビルに入ると、観光客がウジャウジャいてホッ…。チケットを買ってエレベーターで上がる。外に出ると、寒いっ!風が強い!でも、夜景はきれい!きれいだから、ゆっくり見たいのに、グォォォ〜と風にあおられて、立っていられないくらいだ。寒い、寒い…と言っていて、気がついた。私達ってば、夕食をまだとってなくて、お腹がすいてるから、よけい寒いのよね。写真を撮って満足して、帰路につくことにした。
 ホテルに帰って、食事班の部屋でカップ麺にありついた。あったかいし、お腹もふくれて、ホッとした。そして、またもや予習に精を出し、部屋に戻り、お風呂に入り、なぜかまたお茶を飲み、そしてベッドに入るのは、2時を過ぎていた…。