ニューヨーク旅日記PartT

10月11日(月)
 いよいよNYへの旅が始まる。今井雅之さんの「The Winds Of God」NY公演が観たいっ…という私のエルカンパニー熱がきっかけに、3人の友がのってくれてパタパタっと決まった旅行。ツアーはHISの「アパートメントホテルに泊まるNY」。一流ホテルに泊まるよりは安く、交通の至便もよく、キッチンもついてるので、なかなかよさそう。
そして「あれも観たい!」「これも観たい!」と、私がひとりで行くつもりだった舞台の数々を、みんな観たいと言うので、1ヶ月も前からチケット手配にインターネットやJCBトラベルデスクを大活用。えりさんは、現地発着ツアーの手配をしてくれた。欲張りで大忙しの密度の濃い旅行になりそうだ。
 ツアーの集合は、夕方15時55分。私とカホは、ラピートで少し早めに関空に着いたが、すでに伊丹からのバス組、えりさんとメグが待っていた。カウンターでチケットを受け取り荷物を預け、保険にも入り、外貨も換金。準備は万全でゲートへ向かう。免税店で、ちょこっと化粧品などを買うと、もう後は飛行機に乗り込むだけ。
 17時55分発アメリカン航空158便で、ダラスに向かって飛び立った。夕食のメニューは、お寿司、グリーンサラダ、鮭のディルソース、デザート。お寿司が少し付いているのが、うれしい。シートの枕部分も自由に折り曲げて首をもたせかけられるし、シートテレビも付いているし、
アメリカン航空はいい。眠ったり起きたりを繰り返しているうちに、気がついたら、もう朝食の時間。やたらと甘いパンが付いていたらしいが、機内食嫌いの私は食べてないので、よくわからない。
 現地時刻15時25分、
乗り継ぎ地ダラスに到着。ここでアメリカ入国を済ませる。入国審査は簡単に終わり、荷物を一旦ピックアップ、乗り継ぎの為、もう1度預けなおす。ダラス空港はとても広く、次のゲートまで、かなり歩かなければならなかった。テキサス州だけあって、途中の売店にはカウボーイグッズのようなものが売られていた。
 17時25分発のアメリカン航空国内線では、座席が離れ離れだった。が、私の前がえりさんなので「えりさんの隣が空いてたら席を替わろう。」と話していると、私の隣のお姉さんがスチュワーデスさんに何やら話している。と、そのお姉さんが私に「ダンナと隣同志に座りたいから、前の空席に行ってもらってもいい?」(訳:適当)と言ってきた。もちろん、こころよくOKして、えりさんの隣に移った。機内食は、メインがパスタかビーフ、サラダ、パン、ブラウニー。パスタを選んだものの、ミートソースが少なくて、単調な味に飽きてしまった。しかし、それにしても機内が寒い。寒すぎる。
寒すぎて寝られない。いつも思うのだけれど、外人さんの体感温度は、どうなってるんだ!皮膚が分厚いのか?えりさんの隣の通路側に座っていたお兄さんは親切で、降りる時にも「荷物をとろうか?」(訳:適当)と聞いてくれる。きっと、私とえりさんをかなり年下だと思っていた気がする。たぶん年上なのにな〜。親切にしてもらえるから、いいけど。
 NYラガーディア空港に到着したのは、21時50分。すっかり夜だ。現地の係員さんに車でホテルまで送ってもらう途中、アウトレットやミュージカルなどのオプショナルツアーを勧められたが、全て手配済との私たちの返事に、驚く係員さん。そうこうするうちに、私達のこれから6泊の宿、チェスターフィールドに到着した。場所は、セントラルパークの西側、79th st.駅から歩いて5分くらい、まわりはアパートメントが多いようだ。夜遅いので、周りの様子はよくわからない。でも聞いていた通り、入り口にはドアマンがいるので、なんとなく安心である。まずは8Fの管理事務所へ行き、チェックインする。日本の企業が部屋をいくつか買い上げて運営しているらしく、スタッフも日本人なので安心だ。
部屋は3Fと8Fに分かれてしまった。隣同士だったら何かと楽だったけれど、こればっかりは仕方がない。案内された部屋は、キッチン付きなので普通のツインより広く、日本企業が管理しているからか小奇麗で、うれしい。ホテルとは違ってベッドメーキングなどはないが、バスタオルやタオルなどは用意されている。ドライヤーも無料で貸してもらえた。キッチンには、鍋やお皿、冷蔵庫など、ひととおり完備されているし、テーブルと椅子もある。これから気持ちのいい滞在ができそう。とりあえず、持って来たお茶やカップスープ、入浴剤などを部屋ごとにわける。夜も遅く翌朝も早いので、荷物の整理をサッサと済ませ、眠りについた。

10月12日(火)
 いよいよNYでの日々が始まる。今日は、まずウッドベリーコモン・アウトレットツアーに参加する。1Fに8時集合で出発。外は、朝の空気が冷たい。まずはAmsterdam Ave.を歩いて、すぐ近所の「Good Enough to Eat」へ朝食に行った。8時開店なので、私達が朝いちばんのお客さん。カントリー調で、牛がトレードマークなのか牛グッズがいっぱいの、すごくかわいいお店だ。まずは紅茶を頼み、朝食のオーダーは、Good Enough to Eat Waffle(ワッフル)を2つと、アップル・パンケーキとバナナ・ウォルナッツ・パンケーキにした。店員がひとり、またひとりと出勤し始めたところを見ると、私達って来るの早過ぎたのかな?オーダーした料理が出てきてから気がついた。そーだった。ここはアメリカだった。量が多い!料理は、みんなでシェアしたけれど、やっぱり朝食にしては多い。私は残してしまいました…。気をつけねば。
 朝食を楽しんだ後、地下鉄の駅に行く途中の
「H&Hベーグルズ」で夕食用のベーグルを買う。映画「ユーガットメール」に登場したわりには、アッサリした店内だ。プレーン、ブルーベリー、セサミのベーグルを、「お母さん財布」担当のメグに買ってもらう。今回の旅では、みんなが決まった金額を出し合い集めた「お母さん財布」を作り、そこから交通費、食費などなど支払うことにしている。いちいちワリカンをすることもなくラクチン。おまけに、メグは大きなバッグを持ってきていて、みんなのベーグルも入れてくれた。さすが「お母さん財布」(笑)。

 
79th st.の駅から、地下鉄に乗る。トークンを買い、改札に入れてバーを押して通る。遊園地の入口みたい。駅は、日本ほどキレイではないが、朝9時前という通勤時間帯なので、たくさんの人がいる。しかし、話には聞いていたが電車が来ない。ラッシュアワーなのに来ない。みんなホームから身を乗り出して電車を待っている。でも、来ない。人だけは、どんどん改札をくぐって増えてくるので、ホームは黒山の人だかりだ。そして、電車がやっと来た!と思ったら、人がいっぱいで乗れない…。車両の中ほどまで詰めてくれれば乗れるのに〜。集合時間に間に合うかと心配になってきた9時15分、やっと電車に乗ることができた。一安心。ホッ…。電車が動き出す瞬間、ガクンと激しく揺れ、よろける私たち。そういえば立っている人達は、みんなバーにつかまっている。いつも揺れるということか。これからは、がんばってつかまる場所を確保せねば…。
 目的の
50th st.の駅までは、10分。階段を上がり外に出ると、やっとNYらしい気分になった。上を見ると、高いビルがひしめいている。歩いて集合場所のニューヨーク・ヒルトンへ向かった。外は、やはり寒い。ビル風が冷たい。寒そうに身を寄せ合って歩いていたら、そのへんのおじさん達に、大きな声で「寒いんか?」(訳:適当)とニコニコで言われた。寒いよっ!あんたらの体感温度が変なんだよっ!
 ヒルトンは周りが工事中で、中に入るも、集合場所「オカダヤ」は、わからずウロウロ。まだ時間があったので、トイレタイムをと、ベルマンに尋ねると「2かい。どうもぉ。」と、片言の変な日本語で対応してくれた。さすが日本人の多いヒルトン。オカダヤは一旦ホテルの外へ出たところにあった。ツアー集合場所なので、日本人がいるいる。9時45分に、お迎え係員のお姉さんが来て、車に乗って出発。ウッドベリーまでの道のりは、青い空に紅葉が美しく、あざやかな色合い。マンハッタンの近くとは思えないほど自然がある。大都会のNYと思って来たのに、こんなにきれいな紅葉が見られるなんて、得した気分。お姉さんの運転が荒く眠れずに、窓の外の景色をボ〜と眺めているうちに、1時間余りで到着した。少し肌寒い。
 まずはお目当ての
GUCCIへ。アウトレットとは思えないような、立派なショップで、品物も豊富。靴や洋服が安い〜!靴が2万円しない。日本で普通の靴を買うより安いぞ。あまりの安さにうれしくて靴を買ったら、めちゃくちゃ巨大な紙袋に入れられた。「え〜?!」と笑っていたら、店員さんが「わかってんねんけど、これしかないねん。」(訳:適当…関西弁は特に意味なし)と言うので、仕方なく、その紙袋を一日さげることにする。いっぱい入るから、ま、いいか。そこから、PRADA、A/X、J.P.Tod's、Barneys New Yorkなどなど、お店をはしごする。といっても、ほとんどはウィンドショッピング。途中、昼食に、フードコートのチャイナテイストでワンタンメンを食べた。細いにゅうめんのような麺だった。みんな思っていたほどには買わなかった。16時に出口に集合して、帰路についた。
 ヒルトンホテルに到着したのは、17時10分頃。そこのロビーで、メグとカホに荷物番を頼んで、えりさんとAmerican Place theatre へ
「The Winds of God」のチケットピックアップに向かった。6th Ave.を早足で歩いて行き、46th St.を曲がると、いきなりAmerican Place Theatre の赤と青の大きな旗が見えた。もうそれだけで感激した私は、「あった〜!」と、横を歩くえりさんの腕をつかんでいた。あって当たり前なのに。NYまで来て、なかったら、どうすんねんな(笑)。近づくと、劇場のガラスに貼ってあるポスターにまた感激。とりあえず、チケットを取りに中のボックスオフィスへ行った。
そこに座っていた白髪の大きなおじさんに、「I wanna pick up my ticket.」と言うと、笑顔で答えてくれたが、自分の名前や今日の公演であることを言っても、どうも要領を得ない。日本から持参した、インターネットで予約した際のテレチャージからの予約完了メールのコピーを見せると、おじさんは電話でどこかに問い合わせてくれた。なんで?チケットないの?ちょっとドキドキしながらも、記念写真を撮っていたら、おじさんが「OK.Don't worry.」と笑顔で言い、かたわらのパソコンでパチパチとチケットを打ち出してくれた。手にしたチケットには、A列の文字が!ホッとして笑顔がこぼれた。
おじさんにお礼を言って、劇場を出たところで記念写真を撮りながら、ふと入口にもう1度目をやると、矢田さん(出演する俳優さん)が入って行くところ。横を見ると、リスさん(こちらも出演する俳優さん)がダッフルコートを着て誰かと話している。後で舞台で会えるもんねと、劇場を後にした。ヒルトンへ急ぎ戻る道すがら、通りすがりの兄ちゃんに「Beautiful ladies!」と言われ、気をよくするふたりであった。大人に見られたらしい。往復30分程で戻ったので、留守番チームのふたりに驚かれた。足の速さだけは、すでにニューヨーカーさ。夜の外出に向けての着替えと、荷物を置くために、タクシーでホテルへ帰った。サッサと着替えを済ませ、食事班の部屋に集合して、ベーグルを軽い夕食にする。

 19時に再度、出発。79th.st.駅から地下鉄で
タイムズスクエアへ向かった。夜のブロードウェイは結構な人出で、カラフルなネオンの輝く中を46th.st.の劇場まで歩いた。今回の旅で、最初の夜のNY。ディズニーストアやヴァージンメガストアなどがあり明るく、危険な感じは全くしない。
 
American Place theatre の前まで来ると、とうとうこの日が来たと思った。今井さんの夢に触れたくて来てしまったNY。階段を降りた所が、劇場の入り口だった。チケットを渡し、係のお兄さんに席に案内してもらう。客席は、日本の劇場と比べて傾斜が急だ。一番下まで降り、真ん中の4つの椅子を用意してもらい、DRAMA BILLをもらう。
 日本の劇場より舞台の高さが低い。最前列なので舞台の上と、ほんとに近い。目の前の舞台には、いつも通り、木の椅子と机が置かれている。また「The Winds of God」が見れる。しかも、舞台の上の時代では敵国と呼ばれたアメリカで。今井さんの夢であるNYブロードウェイで。こんなに目の前で。
 劇場が真っ暗になり激しい爆撃の音とともに、舞台の幕は上がった。アニキが舞台上に上手から登場した瞬間の気持ちは忘れられない。舞台が始まると、英語を全て理解できているわけではないのに、あっという間に引き込まれていた。アニキとキンタが初めて空を飛ぶシーンでは、ドライアイスが客席の足元にまで広がり、一緒に空を飛んだ気分になった。このシーンは、初めて「Winds」を観た時に鳥肌が立つほど魅せられ、そして今でも最も大好きなシーンだ。はじめて空を飛び、空の美しさに感動し、子供のようにはしゃぐふたりの様子に、つい涙が出てしまう。前世の自分を少し理解し始める、大切なシーン。「Winds」の中のアニキやキンタや特攻隊のみんなに対してか、それとも、その役を演じる役者さん達に対してか、どちらかわからないけれど、焦がれるような気持ちで、夢中で舞台を見つめる自分がいた。自分の夢と、自分に課せられた使命との間で、葛藤しながらも特攻という任務を遂行しに行く特攻隊員達、純粋が故にどんどん変わっていくキンタ、自分の変化に気付きながらも「俺と一緒に逃げよう。」と特攻隊員達を必死に止めようとするアニキ。山本少尉の「あなたがたに会えてよかった。」という言葉が、松島少尉の聖書を踏む苦渋に満ちた姿が、寺川中尉の「I love you.Father!」の叫びが、胸に痛い。涙が止まらない。アニキとキンタが特攻を決め、「生まれ変わったら絶対お笑い名人大賞とろうな。」と誓いあった後、岸田中尉と福元少尉が表面に出てきて互いの名を呼び合うというシーンが新たに入り、アニキとキンタのままではいられないことを強く感じさせられた。そしてラストシーン、キンタの名を呼ぶアニキの泣き顔が、いつまでも目に焼き付いて離れない。私の観た公演の中では最高の表情だったかもしれない。舞台に広がる星空に涙がこぼれた。いつも「Winds」を観ることで、自分が生まれた平和な時代に感謝する。アメリカの人達にも平和への祈りが届くといいな。公演後の挨拶で、今井さんの力強い
「No more war!」の言葉が劇場に響き、主題歌の「青空」が流れると、精一杯の拍手を贈った。「Winds」は、やっぱり私の宝物。NYまで来てよかった。

 公演が終わり、観客の最後からロビーに出ると、もうそこにキャストのみなさんが並んでいる。そして、いちばん奥には、い、今井さんがっ!その姿を見た途端に、
「いやぁ〜、今井さんがいる〜…。」と、私はパニックになってしまった。いて、当たり前だっちゅうの。舞台直後は気持ちが整理できてないから、ほんとにダメなんだもん。しかも今回は特攻服のまま。大好きなアニキ役のまま。今井さんは日本人熟年ご夫婦と歓談されているので、持って来た「梅にんにく」を、まずは吉田敦さんと矢田さん(どちらも出演キャスト)に手渡した。敦さんの笑顔に、ちょっとホッとした。そうこうしているうちに、熟年ご夫婦が帰られ、メグに「早く行き!」と背中を押された私は、気持ちの整理のつかないまま、今井さんに歩み寄った。そして、なぜだか、あせった私はいきなり「今井さん、これ『梅にんにく』。」と言いながら紙袋を手渡し、今井さんに「え?」と聞き返されると、「無臭なんで。」と、わけのわからないことを答えていた。くさいかどうかなんて、誰も聞いてないって。「いちばん前に座ってましたよね。漫才の時、見えてましたよ。」と言われた。サインももらい、写真をお願いすると、背の低い私に合わせて、顔を寄せてくれる。私達の言葉を聞いて「関西の方ですね。学生さんですか?」。今井さん、どこをどう見たら学生なんだよぉ〜。今井さんの目が悪いことが、よ〜くわかったよ。メグが「このためにNY旅行が決まったんです。彼女が、ど〜しても見たいと言うんで。」と説明してくれた。そういうこと、ちゃんと伝えたいのにパニックで頭が真っ白なんだよ〜。いつもダメなんだよ〜。だって、目の前の今井さんは、さっきまで舞台の上でアニキだったんだもん。みんな写真を撮ってもらい、「心残りない?」と、みんなに聞かれ「うん。」と答えつつ、それでも私の目は今井さんに釘付け。今井さんに「ありがとうございました。」と言うと、今井さんは「押忍!」。かっこよすぎる〜。エスカレーターで上に上がり、外に出た。かなり寒い。でも気持ちはポッカポカだい!

 タクシーでホテル前まで戻り、カフェ・ラロに行くことにした。カフェ・ラロは、映画「ユーガットメール」で、トム・ハンクスとメグ・ライアンが対面する場所だ。11時を過ぎているというのに、お店の中は、すごい人だった。狭くて椅子も引けないくらいだけど、なんとか座れて、あったかいお茶を飲むことができた。現地の人ばかりで、ちょっとニューヨーカー気分だった。夜遅くても、アッパーウェストは人通りもあり、危険な感じはしない。本当に気に入ってしまった。解散し部屋に戻って、入浴後、えりさんとお茶を飲みながら翌日のスケジュール予習をしていて、ふと気付くと、時計は2時を過ぎていた…。